「ひとり力」のある暮らし方って? 今のひとり時間を充実させるアイデアとヒント

暮らし

公開日:2020/5/13

『「ひとり力」のある暮らしかた』(阪口ゆうこ/明日香出版社)

 新型コロナウイルスの感染拡大で世界が未曾有の危機にさらされている今、私たちは“孤独”と闘わざるを得なくなっている。他人と適切な距離を保つことを求められる一方で、自宅では家族と始終距離が近づきすぎるストレスから、逆に「ひとりになりたい」と考える人もいるかもしれない。人間関係がうまくいっていても、もし大切な人が病に侵されてしまったら…と不安で怖くなってしまう人もいるだろう。
 
 そうやって「個」や自分の内面に目が向きやすい今だからこそ手元に置いておきたいのが『「ひとり力」のある暮らしかた』(阪口ゆうこ/明日香出版社)。本書は、自分の心の本音に正面から向き合うことで「ひとり力」を高め、これまでとは違った生き方を目指していこうと提案する暮らしのアイデア集だ。
 
 より良い人生を送るためには、家族といようが、ひとりでいようが、自分の心に素直であることが大切だと訴えかける阪口さんは、自身も過去には夫婦喧嘩を通し、誰かと一緒に暮らすことの意味を深く考え、ひとりで生きていけない無力さに泣いたこともあったそう。しかし、自分の直感を信じ、心の声を尊重することで、ひとりでも生きていけるという自信を身につけた。
 
「衣」「食」「仕事」など7つのジャンル別に綴られた「ひとり力」の高め方は、どれも今日からすぐトライできるものばかり。暮らしの中で陥りやすい“好ましくない習慣”や“考え方のクセ”を知り、寂しさに打ちひしがれない人生を手に入れたい。

「ひとりごはん」こそ贅沢に


 離婚をしてからここまでよく頑張ってきた――そう自分のことを認めることはできても、なぜか「ひとり力」が身についたと誇ることが筆者にはずっとできなかった。なぜ自立できていると胸を張れないんだろう。そんな疑問を解決してくれたのが、阪口さんのひとりごはんに対する考え方だった。

 みなさんの中にも、自分ひとりだけで食べるのなら、ふりかけごはんなどの質素な食事でいいやと思う方は多いはず。阪口さんも、かつては節約のためにそうした簡便なごはんを摂っていたが、一方で夫や子どもたちが食べているであろう食事を想像しては心のゆとりをなくしていたそう。

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「勝手に孤独すぎる闘いをしている」――そう気づいた阪口さんは、その後節約ごはんを止めて、好きなものを食べ、ひとりごはんの時間を楽しむようになった。

 阪口さんの変化は、「なぜあえて自分をおざなりにして心を満たさない習慣を続けているの?」と問いかけてくるような気がして、心に刺さった。ひとりであっても家族といても、私は私を大切にする権利がある。「ひとり力」を身につける第一歩は、自分の心を満たして幸せにしてあげるという、些細な脱マンネリから始まっていくのだ。

家族だからこそ必要な「距離感」を

 外出自粛で家にこもる時間が増え、家族との距離感が問われている近ごろでは、夫婦や親子間のトラブルがニュースになることも多い。そんな今こそ意識したいのが、家族だからこそ必要な「距離感」。夫婦や親子といった親しい間には甘えが生じやすいが、人間はもとは「個」。家族であっても他人なのだから、何から何まで違って当たり前。強引にお互いの価値観を合わせる必要はないと阪口さんは語る。

“わが家は4人家族だけど4人とも考え方が違う。みんながみんな「ひとり力」を持った個別の存在。でもそれでいいと思っている。”

 阪口さんの言葉は、心の余裕を失いがちな今の私たちに重く響く。本書は「個」と「個」が尊重し合える関係の築き方を学べる「人間関係修復本」でもあるように思えた。

 人はひとりでは生きてはいけない。その事実を理解したうえで、改めて人との付き合い方を考え直していこう。孤独やその寂しさに脅かされない人生は、そこから切り開かれていくはずだ。

文=古川諭香