6月の映画化に向け描き下ろしがプラスされた『窮鼠はチーズの夢を見る リブートエディション』発売!性別を超えた切ないラブストーリー

マンガ・アニメ

2020/5/18

『窮鼠はチーズの夢を見る リブートエディション』(水城せとな/小学館)

『窮鼠はチーズの夢を見る』(小学館)が2020年に映画化される。新型肺炎の影響で6月の公開が延期されたが、主演が関ジャニ∞の大倉忠義さん、新進気鋭の俳優で既に数々の賞を受賞している成田凌さんとのことでファンからは「いつまでも待てる」という声が出ている。

 豪華な俳優陣を前に見逃してしまいがちだが、この映画の原作は漫画だ。作者は『失恋ショコラティエ』『脳内ポイズンベリー』など映画化作品の常連でもある水城せとなさん。自然と映画への期待も高まるが、『窮鼠はチーズの夢を見る』の原作はどのようなストーリーなのだろうか。

 映画で大倉さんが扮するのは優柔不断で流されやすい性格の大伴恭一(おおともきょういち)、成田さんは大伴に想いを寄せる学生時代の後輩今ヶ瀬渉(いまがせわたる)を演じる。

「男性同士の恋愛を描いたものなの?」

 そう思って敬遠してしまうのはもったいない。

 もともと『窮鼠はチーズの夢を見る』はボーイズラブレーベルではなく、レディースコミックとして発表された。異性愛者である大伴が今ヶ瀬に惹かれつつも性的なことには抵抗を感じてしまう場面や、ゲイである今ヶ瀬が異性愛者の大伴を好きになったことに苦悩している姿が、物語では度々描かれる。

 映画化にあたり内容が少し変わる可能性もあるが、一度疎遠になった二人が再会したきっかけは、大伴の妻が調査会社に大伴の浮気調査を依頼したことだった。調査会社の社員である今ヶ瀬が引き受け、流されやすい大伴の浮気を隠すことを条件にキスを要求する。

 結局大伴と妻は別れるのだが、その後大伴と今ヶ瀬の距離は近いものとなる。

“…あれが女なら
俺って結構幸せな立場じゃないかとも思う
けど”

 大伴の優柔不断さは今ヶ瀬を苦しめる。しかし学生時代からずっと好きだった大伴を、今ヶ瀬はあきらめることができない。

『俎上の鯉は二度跳ねる リブートエディション』(水城せとな/小学館)

 映画化にあたり本書は「リブートエディション」として加筆修正された。また、『窮鼠はチーズの夢を見る』の続編である『俎上の鯉は二度跳ねる』も同様に改編され、映画にはこの内容も含まれているという。

 続編では今ヶ瀬の苦しみがより表面化する。もともと異性愛者であった大伴がいつ離れていくのかという不安は、今ヶ瀬に常につきまとうものであり、非常にリアルだ。

 元カノや部下など、この2冊を通して大伴の前には何人かの女性が現れる。そのたびに今ヶ瀬は情緒不安定になり、『俎上の鯉は二度跳ねる』ではとうとう大伴がこう話す。

“恋愛でじたばたもがくより大切なことが
人生にはいくらでもあるだろ

お互いもうそういう年だろ”

 セクシャル・マイノリティに限らず、数々の人の胸に突き刺さる言葉だ。「ボーイズラブ」というジャンルを超えた物語を、映画化の前に原作で体験してほしい。

文=若林理央

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