爆笑と号泣で忙しい! 小児専門家の情報も満載した人気インスタグラマー“ぐっちゃんママ”の育児絵日記

出産・子育て

公開日:2020/6/24

『ぐっちゃんママ、はじめました 赤ちゃんといっしょ』(chiiko/高橋書店)

 愛息との日々を絵日記マンガにした人気インスタグラマーchiiko。彼女の初となる紙の単行本が『ぐっちゃんママ、はじめました 赤ちゃんといっしょ』(高橋書店)である。

 chiiko氏は、マンガをはじめ、お手軽ごはん「ぐっちゃん飯」、「月齢フォト」などをInstagramに多数アップしている。それらは多くのママ・パパフォロワーたちから共感され、高い支持を受けているのだ。

 本作はそんなchiiko氏が、今までに発表した作品も含めて描きおろしたコミックエッセイだ。長男ぐっちゃんが生まれてからの、約2年間の笑えて泣ける毎日をメインで描き、さらに悩みがつきない出産・育児についての情報ページ、医師・助産師による医療記事をプラス。またchiiko氏のフォロワーに出産・育児に関するアンケートを行い、そのエピソードも収録している。

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 プレママ&パパや、今まさに子育てに奮闘している方々にお役立ちの一冊なのは間違いない。そして子育てを経験した自分としては、お役立ちだけでなく、chiiko氏とぐっちゃんのドタバタな日々を読めば、きっとママ&パパの「気持ちが軽くなる」だろうな…と感じられた。

かわいすぎる愛息ぐっちゃんとの毎日は大変…そして笑える!

 chiiko氏と優しく穏やかなパパのもとにやってきたぐっちゃん。もちろん愛おしくてかわいい…でも現実はそれだけじゃすまない。とにかく元気、超元気。いっしょに体を動かしていなくても、「走り回っているのを座って見ているだけで」親の体力は消耗していく。不思議だが“あるある”だ。忙しくて一瞬で過ぎていく日常に、もうクタクタ…いや失礼、我が子が元気ならいいのだ。我々は子供に寄りそってやるしかない…。では気を取り直して本作の構成を説明する。内容は大きく5章に分かれている。

1章 妊娠・出産

 ぐっちゃんが生まれるまでの時間を丁寧に描いている。つわりや妊娠中の、味覚嗅覚の変化。個人差が多く非常に興味深い。個人的に写経をする描写に笑えた。実は本稿のライターも、妻に頼まれて写経セットを購入した思い出がある。

「産院選びのコツ」「妊娠・出産にかかるお金・もらえるお金」や「出産前に準備するもの」リストのページもあり、大変有用だ。SNSアンケートからの「つわり」や「出産」のエピソードも生々しくてリアルである。

2章 子育ての日々

 新生児はとにかくかわいい、の一言…では終わらない。寝かしつけ。夜泣き。(喜ばしいことだが)発達。病気。怪我。ママのおっぱいトラブルなど、本章ではぐっちゃんの漫画パートはこれでもかとそういった育児生活に紙幅を割いている。実際にこのあたりの思い出深いエピソードは、子育てをした方たちなら枚挙に暇がないだろう。

 これら子育ての日々で生まれる悩みには、医療記事とSNSフォロワーから集まったエピソードがためになる。“手抜きご飯”と謙遜する「ぐっちゃん飯」と「月齢」の写真もほっこりする。そして何といってもインスタでも話題になった「卒乳」マンガ。これは泣ける。

3章 産後のこころとからだ

 この章ではいわゆる出産・育児期の夫との日々を描いている。本章は短いが、多くのママが共感できる内容だろう。夫は、当たり前だが調べられるだけ調べて、やれるだけのことはやらないと! と思う。自分のことは二の次三の次だ。育児期間などたった数年なのだ。かく言う私も新生児期にやりきれなかった部分を、妻から“ずっと”言われ続けている…。「産褥期」(さんじょくき)のトラブルや「産後うつ」へのアドバイス。フォロワーの産後エピソードも収録。

4章 ぐっちゃんの日常

 終章は2本のマンガで構成されている。まずchiiko氏が親としての幸せについて思いを巡らせる話。これはママもパパも強く共感できるのではないだろうか。そして締めくくりは2年前、母子ともに退院して帰宅したエピソードだ。これからいろいろとドタバタするし、てんやわんやの育児が始まるというその前に、親は子が生まれてきたことに感謝し決意を固める。本作は終わっても、ぐっちゃんの時間はここから始まってずっと続くのだ…とじーんとしてしまった。

育児の時間の大切さを振り返るのなら、ハンカチの用意を忘れずに

 本作はおおむね笑える、でも個人的には泣き成分が多めに感じた。といっても出産・育児が辛くて大変で悲しくなる、というわけではない。

 インスタでは「必ずオチのつくギャグと、時に泣けるテイストが特徴」と言われていたが、「ママはぐっちゃんが大好き!」「いま小さいあなたと一緒にいることが幸せ」という微笑ましくも、日々の変化を考えるとせつないエピソードにたたみかけられる。「これは思わず自分の子に目をやって目頭が熱くなる系だ…」と、こらえながら最後まで読んだことを告白させてもらう。

 もしあなたがプレママ&パパならばくすりとまだ笑えるだろう。でも生まれて、育てていくうちにもう一度読み返すと、きっとハンカチが必要になると思うのだ。

文=古林恭