『映画 ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』、東映まんがまつりのオープニングを飾るその魅力とは?

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公開日:2020/8/14

映画 ふしぎ駄菓子屋 銭天堂
©廣嶋玲子/jyajya/偕成社 ©2020東映まんがまつり製作委員会

 昨年、29年ぶりに復活を遂げたオムニバス映画祭「東映まんがまつり」。新型コロナウイルスの影響で今年は延期されていたが、8月14日より全国公開されることが決定した。オープニングを飾るのは、累計110万部を突破した『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』。図書館で借りられないこともあるほど大人気のシリーズで、子どもや孫のために同作を買った大人たちが、一緒になって夢中になるケースが続出しているという。実際、映画も、約10分の短編ながら、ふしぎな懐かしさとともにぐっと引きこまれる作品だった。

映画 ふしぎ駄菓子屋 銭天堂

 願いをなんでも叶えてくれる駄菓子を売る銭天堂。女主人の紅子(べにこ)が毎日、福引用の抽選器から引く“お宝”(といっても「昭和四十二年の十円玉」というようにふつうの小銭だが)を持った人だけが訪れることができるという、不思議な店である。映画で描かれるのは、シリーズ第1巻から「つりたい焼き」のお話。釣り好きの少年・慶司が小銭を握りしめてたどりついた銭天堂で、好きなだけ絶品たい焼きを釣ることができるという夢のようなエピソードだ。

映画 ふしぎ駄菓子屋 銭天堂

 だが、シリーズの常として、きちんと取扱説明書を読まなかったり欲に駆られて使い方を誤ったりした人には、とんでもない悲劇が訪れる。今回は、はてさて……。

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 同作に惚れ込んだというプロデューサーの柳川あかり氏は、作品の魅力についてこう語る。

「色とりどりの駄菓子が所狭しとならぶ店先で、妖しげにほほえむ女主人――。書店の児童書コーナーで、ひときわオーラを放つ表紙に誘われたのが、本作との出会いでした。本を開くと、駄菓子の数だけ人生があり、しょっぱいお話もあれば、甘いお話もあり、いろんな味を楽しむことができます。
わずかな小銭でも人びとを笑顔にできる駄菓子。子どもは大人になることができて、大人は子どもに還れる魅惑の空間は、いつの時代も私たちの心をつかんで離しません。そんな駄菓子や駄菓子屋さんが持つ魅力をアニメーションに詰めこみました。
『この路地裏にも銭天堂があるかも?』と想像をふくらませていただけたら幸いです」

 その言葉どおり、映画で描かれる銭天堂は色鮮やかで、店内に足を踏み入れたとたん、子どもでなくとも「うわあ!」と声をあげてしまうような魅力にあふれていた。銭天堂だけではない。慶司の部屋には、巨大な魚拓やヒトデの置物、クマノミの貯金箱。銭天堂で買った釣り竿の、リール部分はたい焼き型をしていたりと、細部までこだわった描写が世界観を“本物”にしていて、「私も行きたい!」と思わされてしまうのだ。さらに、たい焼きのおいしそうなこと!

 反面、アニメーションとしてのつくりはシンプルで、技術を駆使しているというよりは、どこか紙芝居のような味わいのある作品だが、それがまた、いいのである。古さはまったくなく、新鮮さに満ちているのに、懐かしい。オープニングとエンディングの曲とイラストも凝っていて、とにかく隅々までわくわくさせられる仕上がりだ。10分なんてあっというまで「え!? もう終わり!? もっと観せてよ!!」と大人げなく地団駄を踏んだ。

文=立花もも