70代女性に訪れる思いがけない事態とは? ベストセラー小説『すぐ死ぬんだから』漫画化!

マンガ

公開日:2020/9/16

すぐ死ぬんだから
『すぐ死ぬんだから1』(内館牧子:原作、くさか里樹:漫画/潮出版社)

「終活」という言葉が流行語大賞トップテンにランクインしたのは2012年のことだ。その6年後、2018年に、脚本家・内館牧子さんにより発表された小説『すぐ死ぬんだから』は、それ以降数年間の「終活」のイメージを覆すような作品だった。主人公は努力と根性で若さを保ち続ける、はつらつとした78歳の女性ハナ。夫の死をきっかけに、ハナの平穏な老後は一転する。この小説は累計30万部を突破したベストセラーとなった。

 そして2020年8月、『すぐ死ぬんだから』はNHKの連続ドラマとなってスタートした。主演はハナと同い年の大女優・三田佳子さんで、連続ドラマ主演は23年ぶりだという。その放送に合わせるように、くさか里樹さんによる漫画版の『すぐ死ぬんだから』(潮出版社)1巻も発売された。

“くさかさんの作品は以前からずっと読んでいました”

 原作者で脚本家の内館牧子さんは巻末の対談でそう話す。

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 本作の内容を振り返ってみよう。

 78歳なのに70代に見えないほど若くはつらつとした主人公ハナ。やさしい夫に愛され子どもや孫にも恵まれ、幸せな後半生を生きていたはずのハナは、突然想定外の出来事と対峙することになる。

 1980年にデビューし、2011年、『ヘルプマン!』が日本漫画家協会賞大賞を受賞したくさか里樹さんは原作の雰囲気を損なわないまま、漫画ならではの表現でハナの生き様を魅せる。感情豊かなハナと、ハナから見た他の登場人物は個性豊かに描かれ、表情もくるくると変わり臨場感たっぷりだ。

 例えばハナの夫岩造は、生前はやさしく誠実な人だった。表情も和やかである。ところが1巻の後半、岩造の大きな秘密が明らかになる。その後のハナの想像の中の岩造は、影を帯びてほくそ笑んでいる。序盤の「善良なおじいさん」という読者のイメージはあっという間に崩れ去り、読者は「この人、とんでもない悪人だったのではないか」と恐ろしさまで感じてしまう。

 岩造に秘密があることを知る前、ハナは岩造にこう言っていた。

“あたしたちは生きている限り……
抗わなきゃダメなのよ!
でなきゃ
息をしている意味がないじゃない…‥!”

「息をしている意味」という言葉は、世代を問わず人々の胸に突き刺さるパワーワードだ。

 ハナは落ち込んでも、そのままでは終わらない。決して現実から逃げない。

 ドラマ版の予告では、三田佳子さんが明るい笑顔を浮かべながらこう言った。

「健康に気をつけて最後までスタッフと一緒に頑張っていきたいと思います」

 三田佳子さんとハナの姿が重なる。

 小説とドラマ、そして漫画。ベテランの作家、ドラマ製作陣、漫画家によって紡がれる物語は、それぞれ同じテーマを共有しながらも異なる楽しみ方ができそうだ。

文=若林理央