アメリカ大統領選を揺るがす陰謀論「Qアノン」って何? 気になる内容の信憑性は…

社会

公開日:2020/10/19

『Qアノン 陰謀の存在証明』(高島康司/成甲書房)

「Qアノン(QAnon)って何?」
 都市伝説や陰謀論に興味がある方ならば、既にご存じかもしれない。ここ最近では主要メディアでもこれを取り上げ始めており、一般の間でも耳にする言葉となっている。その理由は、Qアノンが11月頭の米国大統領選にかかわるムーヴメントだと思われるからだ。「思われる」としかここでいえないのは、その実態が謎に包まれているからで、ネットで検索しても「本当に?」というような説もさまざまに飛び交っている。
 
『Qアノン 陰謀の存在証明』(高島康司/成甲書房)は、そんな謎の存在・Qアノンの正体を、世界情勢アナリストが独自に読み解く1冊。Qアノンとは何なのか? 本稿が、Qアノンという言葉は聞いたことがあってもその内容は知らないという方への、一案内になることを願う。

たちの悪いいたずら? 当たったことと外れたこと

 Qアノンは、2017年10月以降、ネットの掲示板である日本の「2ちゃんねる」(現「5ちゃんねる」)に似た米国の掲示板「4Chan」(「8chan」を経て現在は「8kun」)に、書き込みをする人物のハンドルネームだ。最初の書き込みの内容は、「ヒラリー・クリントンが逮捕される」というものだったが、ご承知の通り現実にはならなかった。

「たちの悪いいたずらか」と誰もが思っていたところ、Qアノンはさらに書き込みを続けていく。それは、読む側に疑問を投げかけるスタイルで、注目すべきはその内容だった。それは、いたずらにしては突飛な情報であり、一般人には知り得ない政府内情の暴露(?)も含まれていたのだ。

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 ちなみに、ハンドルネームの由来は、米国最高の国家機密情報を知る権限「Qクリアランス」と「匿名=アノニマス(anonymous)」を合わせた造語のようだ。一体何者なのか? そして内容は真実なのか? この謎解きが多くの人の心を捉えていく。といっても、最初はネット上のオカルト好きの間での人気であり、ある秘密結社や世界的富豪の数人がこの世界を操っているといった、いわゆる陰謀論と同等に扱われていた。つまりは、一般的には「嘘に決まってるでしょ」という存在に過ぎなかったわけだ。

 ところが、2019年、元大手投資銀行家ジェフリー・エプスタインが、ペドフィリア(小児性愛)で逮捕収監されるというニュースにより、Qは一躍一般世間に躍り出ることになった。というのも、Qが以前から、政治エリートがエプスタインを中心にペドフィリアのネットワークを形成している旨の書き込みをしていたからだ。

 一時は、有名人の逮捕がどこまで及ぶかと関心が集まったが、その後の報道を見ると、Qの書き込みは半分当たって半分外れたということなのだろうか。依然、ただのいたずらなのか、よくわからない。

 だが、ひとつ確かなことがある。それは、Qが大統領ドナルド・トランプを現在の特権階級による支配構造を打ち壊す正義の人物として見ていることだ。

 実際、2019年頃からトランプ支持の政治集会には、Qの文字がデザインされたTシャツやキャップを身に付けた人々の姿が見られるようになり、現在もその数は増え続けているという。さらに民主党支持者(反トランプ側)の中にも、Qを信じる者がいる。その中には、失業中であるとか働いてもホームレス状態から抜け出せないなどといった、資本主義体制下の弱者としての孤独感や悲しみ怒りを持つ者たちもいるという。

 著者の高島氏は、こうした動きを受けて、Qの正体について次のように推察する。Qは、米軍関係者、大統領トランプの近くにいる人物ではないかと。つまり、本書は冷静に、Qがトランプ支持を煽る陰謀論だと指摘しているのだ。

 しかし、Qの情報は、これまで隠されてきた宇宙情報、ゲサラ(GESARA)と呼ばれる世界的金融リセットなど、世界規模に及ぶことから、単なる支持集めにしては話が大きい。まあ、多くの人は常識的に考えてフィクションだと捉えているだろうが。

 結局、謎の存在Q――信用していいかわからないままだが、今の行き詰まった社会体制の中で、苦しみを抱く人々がそこに魅せられる気持ちはわかるような気もする。とにもかくにも、11月3日の大統領選。世界の注目が集まるのは間違いない。

文=奥みんす