保護者と塾講師の本音レビュー! 「歴史まんが」の学年別活用術!

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公開日:2020/11/24

日本の歴史

 子供の学年や得意不得意に沿った教材を選ぶべきであるのは言わずもがなだが、歴史まんがに限って言えば、中学受験から大学受験までの約10年間にわたり「現役の教材」として使い倒すことも十分に可能だ。

 コツは「その子供に」「その時期に」フィットする使い方をすること。漫然と置いておくだけでは宝の持ち腐れになるが、うまく使えばわが子の生涯にわたり真価を発揮する、コスパNo.1の副教材と言える。

 今回はさまざまな学年・性格の子供たちが、どのように歴史まんがを活用すべきかを小学生・中学生の子供を持つ3名の保護者レビュアー(マロンさん、戦記さん、99.9さん)と、個別指導塾の講師(小林尚さん)による解説にてご紹介しよう。

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地理・国語にも効く! 小4から歴史まんがを読ませるメリット

レビュアー:マロンさん
ブロガー。「中学受験ドットコム」(https://中学受験.com/)を運営。中学受験の家庭学習、おすすめ問題集、塾選び、最新の中学入試情報を毎日更新。

 近年、詰め込み教育の弊害を訴える声や大学入試改革の影響を受け、中学受験の日本史も大きく変わりつつあります。年号や重要事項の丸暗記だけで解ける問題は減り、与えられた史料を読み取り、歴史的背景・理由を考えて答えさせる出題がここ数年で急激に増えました。

 そのため、時代ごとに細かい知識を詰め込む「点」の学習ではなく、「日本の歴史」という大きな流れを理解する「線」の学習が求められています。歴史まんがは、「歴史の大きな流れをつかむ」ことはもちろん、「人物を中心にした物語」として歴史を捉えられることから、中学受験生にとって格好の教材と言えます。

 また、歴史まんがは中学受験地理にも効果を発揮することをご存じでしょうか。

 地理の学習をしていると、各都道府県にまつわる史跡・遺跡や歴史上の人物が頻繁に登場します。世界遺産に登録されている八幡製鉄所(福岡県)・法隆寺(奈良県)・富岡製糸場(群馬県)・平泉(岩手県)などは、歴史と絡めて覚えることでしっかりと記憶が定着し、忘れづらくなります。

 さらに最近の中学入試の傾向として、「地理」と「歴史」を独立した分野として出題するのではなく、「地理・歴史」の複合問題として出題する中学校が増えてきました。歴史まんがを読むことで「地理・歴史」の複合問題にも対応できる視野が自然と養われ、単に記憶が定着する以上の効果が期待できます。

角川まんが学習シリーズ『日本の歴史』第13巻p.97
(角川まんが学習シリーズ『日本の歴史』第13巻p.97)

 歴史まんがは社会科目だけでなく、国語の学習にも有効です。例えば読解問題として「戦争」をテーマとした物語文が出題されることが多くありますが、低学年の子供にとって「戦争の悲惨さと飢え」はイメージしづらく理解するのも難しい問題です。

 まんがでは自分たちと同じ年頃の都市部に住む子供たちが集団で農村に疎開し、親元を離れ貧しく不自由な生活を送る姿が描かれます。「戦争」をテーマにしたドラマ・映画もありますが、小学生には刺激が強すぎる描写がありますので、まずは歴史まんがを通して「戦争と平和」について親子で考えたいですね。

角川まんが学習シリーズ『日本の歴史』第15巻p.58
(同『日本の歴史』第15巻p.58)

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小5で子供を「真の歴史好きにする」下準備3つ

レビュアー:戦記さん
令和時代の中学受験業界で最も著名なブロガーのひとり。 オウンドメディアである「『桜蔭戦記』 2022年中学受験の反省録」(https://senkiwork.com/)を運営。

 我が家が歴史まんがを購入したのは娘が小2の10月。すでに小学校配当の漢字1026字を十分理解していた娘は、『日本の歴史』をむさぼるように読み進めていきました。

 しかし小4の6月、親子でNHK大河ドラマを見ていて、娘は凄いことを言い放ちます。

娘:「ねえ、パパって、関東大震災の時に産まれていたの?」

 基本的知識及び時間的視野に乏しい小学生が歴史まんがを読む場合、ちょっとした工夫が必要です。もちろん、純粋に歴史まんがを楽しむならば良いのですが、大半の保護者は「我が子に中学受験に対応できるだけの歴史知識を獲得して欲しい」とか、少なくとも「歴史に関心をもって欲しい」という本心をもっているはず。僕が当時の娘の様子を考察したところ、以下段取りを踏んでから歴史まんがを読まないと、保護者の願いを実現することは難しいと考えます。

1 小学校配当の漢字を全て読めるようになること。

2 次に、各歴史区分の名前を暗記すること。具体的には、小2~3ならば、「旧石器・縄文・弥生・古墳・飛鳥・奈良・平安・鎌倉・南北朝・室町・安土桃山・江戸・明治・大正・昭和・平成」を一気に暗唱できる状態にするべきです。

3 最後に、基本的な年号を暗記しておくこと。最初から細かい年号を暗記させると、子供が歴史嫌いになる可能性があるので、500年刻みくらいのメッシュで十分です。すなわち、飛鳥時代は500年、平安時代が1000年、室町時代が1500年。これくらいの時間感覚をもちながら読み進めないと、お子さんが歴史まんがを読み進める中で、いつの時代を読んでいるのか迷子になってしまいます。

 首都圏中学入試市場の大手塾の大半が、小5の9月から歴史を開始しますが、この段階で「歴史が好き!」という状態にしておかないと、「歴史は暗記という苦痛な作業」になってしまいます。大手塾での歴史が開始する前に、歴史まんがで子供の関心を高め、親子で実際に訪問して実体験を得ることが、中学受験での志望校合格という実利のみならず、一生物の宝となる歴史的教養に昇華させるために必要なのです。

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歴史が苦手な小6受験生のピンポイント活用術

レビュアー:99.9さん
ブロガー。中学2年生の娘、小学6年生の息子の中学受験ブログ「ゲーム大好き息子の2021年中学受験と娘2019年」(https://juken2021.hatenablog.jp/)を運営。

 我が家が歴史まんがを購入したのは娘が小学4年生の時です。はじめの2巻を読んだ娘は、「内容が難しい!」と放置。小5になって歴史学習が始まっても、やはり社会の成績は不調続きでした。そこで小6のお盆休み、まとまった時間を利用して、受験対策になる部分をピンポイントで復習するためにまんがを利用しました。

 2019年度はちょうど上皇さまの退位が話題になった時期だったので、飛鳥時代から奈良時代までの天皇の変遷を歴史まんがで読ませたところ、「○○天皇って女の人だったんだ!」と発見があった様子。

 テキストではその人物が男性か女性か、歴史上の出来事が起こった時に何歳だったのかという情報は注釈がなければ分かりませんが、まんがならば一目で分かります。また、歴史上の人物の大多数は肖像画が残っておらず、あってもあまり印象に残らないものがほとんどです。明治維新のあたりで登場してくる人物についてあやふやだった娘にもう一度読ませたところ、特に岩倉具視のちょんまげ姿はインパクトがあり、すぐに覚えられたようです。

角川まんが学習シリーズ『日本の歴史』第12巻 p.87
(角川まんが学習シリーズ『日本の歴史』第12巻 p.87)

 さて、娘は無事中学生になり、学校でも日本史の授業が始まりました。日本史は中学受験の知識である程度対応できるのですが、念のため定期試験前に『日本の歴史』で範囲の部分を読み返す中で、「今までなんとなく感覚で覚えていたことが、繋がっていく!」と話していました。中学受験の暗記科目として点で覚えていたことが、ようやく繋がって線になっていくことを実感したようです。

 やはり、子供によって教材の合う・合わないはあるものですが、歴史まんがに関しては、合わない子でも一通り読むことで大まかな歴史の流れが押さえられるようになります。

 娘は年号をほとんど覚えることができませんでしたが、物語としての歴史に触れることで、歴史上の出来事の順序が掴めるようになりました。また、人物像などをビジュアルで把握するので、文字だけで勉強するよりも記憶に定着します。中学生になってからも補助教材として定期試験の助けになっています。

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大学受験日本史に「歴史まんがを3周で極める」学習法

レビュアー:小林尚さん
教育系YouTuber/個別指導塾CASTDICE経営者
高校・大学受験を支援する個別指導塾CASTDICEの塾長。著書『開成流ロジカル勉強法』。YouTube(https://www.youtube.com/c/castdicetv)では大学受験の勉強法、参考書レビュー、大学選びといった受験生に役立つ情報を発信している。

 大学受験科目としての「日本史」を勉強するのに、私がおすすめするのは歴史まんがの活用です。受験勉強にまんがというと邪道に感じる方もいるかもしれませんが、親しみやすく抵抗感なく触れられる教材として、これ以上のものはないでしょう。

 歴史まんがを用いて日本史を学習する際には、「3つのレベル感」を整理しながら読み進めていくことが重要です。

1 まず、一番大きな視点で時代ごとの流れを捉えます。平安時代は貴族が栄えて、鎌倉時代は武士が台頭した、というような各時代の大枠を捉えていきます。この段階では細かな用語や人物名、出来事を暗記していくよりも「覚えられたらラッキー」くらいの気軽な気持ちでどんどん読み進めていきましょう。

2 次に、時代ごとの流れをおさえていきます。つまり2周目を読みながら中くらいの視点での理解を深めていきます。これは時代別にどのような登場人物がいたか、どのような出来事があったかを把握していきます。意欲的な生徒さんであれば教科書を読みながら、学校の授業の予習復習教材として使うと理解が深まります。あくまで時代ごとの流れをおさえられれば良いので、苦手な時代は繰り返し読んでも良いでしょう。

3 最後に、小さな視点で3周目以降を読み進めていきます。『日本の歴史』では細かな注釈やさりげない用語の説明、まんがならではの史料的描写が非常に有用です。出てきた用語を用語集で調べたり、本格的に教科書と一緒に読み進めたり、必要に応じて史料集を横に置きながら読んでいくのが効果的です。ここまで来るとある程度の流れは頭に入っていると思いますので、逆に普段日本史の学習をする中で忘れてしまったことの復習として歴史まんがを活用するのも効果的だといえます。

角川まんが学習シリーズ『日本の歴史』第6巻p.178~p.179
▲建造物が丁寧に描写されている歴史まんがであれば、史料問題対策にもなります。
(角川まんが学習シリーズ『日本の歴史』第6巻p.178~p.179)

 どのような勉強でもそうですが、重要なことは「繰り返す」ことです。一度で全てを理解し覚えることは不可能である以上、繰り返し丁寧に触れることでだんだんと知識が増え、いつのまにか得意になっていることでしょう。ぜひ歴史まんがを利用して日本史学習を進めてみてください。

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▼角川まんが学習シリーズ『日本の歴史』それぞれの有効活用術まとめ(ヨメルバ)
https://yomeruba.com/serial/essays/howto-nihonshi/

▼書籍情報
角川まんが学習シリーズ 日本の歴史 3大特典つき全15巻+別巻4冊セット

日本の歴史

【特典】
(1)戦国すごろく
(2)近現代史まるわかりすごろく
(3)戦国武将のぼり旗デザインしおり定規5枚セット
【定価】本体1万5200円(税別)
【サイズ】その他
【ISBN】9784041088326
※新学習指導要領対応 すべての内容や用語を見直し最新の情報にアップデート済み
https://mangagakushu.kadokawa.co.jp/nihonnorekishi/