「おれはお前と同じだ」エレンが宿敵のライナーに放ったこの言葉の真意は? 静けさは去り怒涛の展開が始まる/アニメ『進撃の巨人』第5話
公開日:2021/1/17
年が明けて最初のエピソードは、『進撃の巨人』という壮大な物語の転換点にふさわしい内容だった。
場面は訓練兵だった頃のライナー、ベルトルト、アニが密談の後寮に帰るくだりから始まる。4年以上前のことだ。彼らの正体は、パラディ島(ウォール・マリア地区)を襲い多くの人を虐殺した、知性を持つ巨人たちである。
三人が訓練兵になる前、ある男が、巨人襲来の際に自分が家族を見捨てて逃げたことを話した。その後彼は自殺。ベルトルトはそれがずっと気にかかっている。
「あのおじさんは誰かに裁いてほしかったんじゃないかな」
その台詞の後、場面が一転する。時は現在、場所はマーレの地下室、負傷兵に扮装してマーレに潜入していた本作の主人公エレンが、故郷で暮らすライナーと4年ぶりに再会している。ライナーは、エレンにとって自分は裏切り者であると自覚しているためその状況に戦慄する。
エレンの手のひらには傷があり出血している。そして、巨人を所有しているエルディア人が巨人になるためには、目的をもって巨人になりたいと願うことが必要で、準備は整っている状態だ。地上では式典が行われていてたくさんの非戦闘員が集まっている中、エレンが巨人になれば壮絶な戦いは避けられない。戦場にするわけにはいかない。
必然的にライナーと、エレンが敵だと知らずに騙されてライナーを地下室に連れてきた少年ファルコは状況をさとり、移動できなくなる。
エレンの父はマーレの住人だった。父から巨人になる能力と記憶を受け継いだエレンは、ライナー、ベルトルト、アニに日常が破壊され、自分の母親が殺されたことも、すべて彼らが世界を救おうとしたためだと理解した。3人が何も知らない子どもの頃にそのような思想教育を受けていた影響は大きい。エレンは「仕方ない」「ずっと苦しかっただろ」と述べる。しかしライナーは否定する。
パラディ島で壁を破壊し人々を虐殺する前、ライナーたちの仲間マルセルが、ライナーをかばい巨人に食われて死んだ。いったん故郷マーレに引き返そうとするベルトルトとアニを脅して止め、パラディ島襲撃の作戦続行を強いたのはライナーだったからだ。
序盤のベルトルトの「裁いてほしかった」は、今のライナーの気持ちなのかもしれない。
「おれはお前と同じだ」とエレンはライナーに手を差しのべる。
地上では式典が開催されている。「戦鎚(せんつい)の巨人」を管理していて、エルディア人の歴史を語り継いでいるダイバー家の当主が、世界のすべての国にとってエレンが強大な敵であると話している。彼が諸外国に対してパラディ島への宣戦布告を呼び掛けた瞬間、地下で巨人化したエレンがステージを突き破り、がれきが人々の上に降りかかり当主は吹き飛ぶ。
しばらく続いた戦闘のない日々は、ここで終わりだ。来週、エレンの逆襲がどのような形で始まるのか、視聴者の心を昂らせたまま『進撃の巨人 The Final Season』第5話(全体で第64話)は終わる。
文=若林理央
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