「利用者とスタッフの区別がつかない」海外からも見学者が来る介護施設が実現する“すごいケア”とは

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公開日:2021/1/25

世界が注目する日本の介護 あおいけあ で見つけた じいちゃん・ばあちゃんとの向き合い方
『世界が注目する日本の介護 あおいけあ で見つけた じいちゃん・ばあちゃんとの向き合い方』(加藤忠相:編著、ひらまつおさむ:漫画/講談社)

 今年はコロナで帰省は見送った人が多いとはいえ、年末年始というのは多くの人が親族と連絡を取りあうタイミングであるのは間違いない。中には親の元気な様子を確認できて安心しながらも、親の老化に直面して複雑な思いになったという人もいたかもしれない。

 そんなときに漠然と考える「家族のこれから」のこと。「もしも、介護が必要になったら」「もしも認知症になってしまったら」…そんな不安を持つのは当然のことだ。

 いざとなって困らないためにも、そんなときには「介護に関する本」を読むなど少しずつ意識していくといいだろう。介護の「現実」を知るためには初心者向けのマニュアル、誰かの介護体験記などさまざまな本があるが、たとえば最新刊『世界が注目する日本の介護 あおいけあ で見つけた じいちゃん・ばあちゃんとの向き合い方』(加藤忠相:編著、ひらまつおさむ:漫画/講談社)もおすすめの1冊。介護施設の日常を描いたストーリー漫画&文章を通して、わかりやすく「介護の心得」を教えてくれる。

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 著者は、今日本で一番注目されている介護事業所「あおいけあ」(神奈川県藤沢市)の代表・加藤忠相さん。映画『ケアニン〜あなたでよかった〜』のモデルにもなった介護施設の経営者だ(なんとNHK『プロフェッショナル〜仕事の流儀〜』でも取り上げられた)。勤めていた施設の介護に失望して自ら立ち上げた「あおいけあ」には海外からも見学者が訪れ、「認知症があって要介護なのに、普通のお年寄りにしか見えない」「利用者とスタッフの区別が全然つかない」とみな驚くという。

 本書はそうした「あおいけあ」の日常を描いたもので、元はウェブメディア『みんなの介護』での人気連載。コロナ下での最新事情など大幅に加筆修正されていて、介護の「最前線」の前向きな熱気も伝わってくる。

世界が注目する日本の介護 あおいけあ で見つけた じいちゃん・ばあちゃんとの向き合い方 p.28-29

「自分でできることはやってもらう」という基本方針だけでなく、地域と自然に交流が生まれる建物のあり方など「あおいけあ」の仕組みやケアの心得などは興味深い。

 たとえば、お年寄りが大切にしていること(自分の「存在意義」)のなかから、その人の強みを探して活躍してもらおう、という考え方。あるいは、「〇〇してください」と頼むのではなく、「〇〇するには、どうしたらいいかなあ?」とお年寄りに問いかけて活動に引き込む声かけなどは、家庭でも役に立ちそうだ。

世界が注目する日本の介護 あおいけあ で見つけた じいちゃん・ばあちゃんとの向き合い方 p.126-127

 しかし、何より驚かされるのは漫画に登場する数々のエピソードだろう。恒例の夏祭り(入所者も一緒に企画運営、地域の人がたくさん集まってくる)もあれば、なんとお年寄りが準備して施設内で職員の挙式までやってしまう一幕も。そんな前向きな環境では、認知症でぼんやりしていたお年寄りが畑仕事したり、庭木の手入れをしたり…プライバシーに配慮して仮名ではあるものの、いずれも実際にあったことがベースになっているとのこと。とにかくページをめくるたびに「介護」のイメージがポジティブに塗り替えられていくのだ。

世界が注目する日本の介護 あおいけあ で見つけた じいちゃん・ばあちゃんとの向き合い方 p.154-155

 実は私の祖母は、気ままに生きていた簡易老人ホームの個室生活から、自立歩行が難しくなったことで特別養護老人ホームに移動。ベッド中心の生活になった途端に歩けなくなり、肉体的にも精神的にもどんどん弱っていった。もう20年以上も前のことになるが、加藤さんの「あたりまえを普通にやれる環境のなかに長い時間いるだけで元気になっちゃうんだよ」の言葉に祖母を思い出し、少し涙が出た。当時はあれしか答えがなかったが、こうした発想自体が普通の社会だったら、祖母はどう人生のラストを迎えたのか――加藤さんは本書を上梓した理由を「『あおいけあ』の発想や実践が、介護をしている家族や介護職に、何かヒントを提供できるなら、それはそれで悪いことではない」と書いている。

 本書はこれから介護を考える人にとって(もちろん、すでに始めている人にも)、本当に大切にすべきことは何かを教えてくれる貴重な1冊となるだろう。

文=荒井理恵

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