パラディ島の人間を憎むガビと、彼女を心配するファルコ 牢を脱出したふたりが出会ったのは?/アニメ「『進撃の巨人』The Final Season」第11話

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公開日:2021/2/27

進撃の巨人
©諫山創・講談社/「進撃の巨人」The Final Season製作委員会

 マーレ襲撃後、戻ってきたパラディ島壁内の兵士たち。一方、サシャを銃殺して捕らえられたガビと、彼女についてきたファルコはどうしているのだろうか。二人ともまだ子どもだが、マーレの巨人を継ぐために厳しい訓練を受けた戦士候補生だ。

 彼らはパラディ島壁内の人間はすべて悪魔だと思想教育を受けている。かつてパラディ島の壁を壊し、殺戮と破壊によって壁内の人々を絶望に陥れたライナー、ベルトルト、アニもそうだった。

 友だちや仲間の悲惨な死を目の当たりにし、ジークの裏切りも知ってしまったガビは、パラディ島の「悪魔」によりいっそうの憎しみを募らせる。一方、襲撃直前にエレンとライナーの会話を聞いたファルコは、パラディ島壁内にいるのは「悪魔」ではなく自分たちと変わらない「人間」なのではと思い始めている。ガビは牢の看守を騙し脱出をはかる。そのときもファルコはガビの暴走を止めるため彼女の後を追う。

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 脱走は成功しファルコとガビは森の中にたどり着いた。
 そんなとき、ひとりの少女が二人に声をかける。

 ガビは彼女を殺す準備をするが、少女はファルコとガビを家へ連れて行く。そこには夫婦と数人の孤児がいて、食事をくれた。大人たちには南方マーレのなまりがあった。

 二人に声をかけた少女の名前はカヤ。彼女と夫婦を見て、いち早く気づいた視聴者もいるだろう。

 4年前まで、カヤは足の不自由な母親とある村に住んでいた。ところが村に巨人が襲来し、人々はカヤと母親を置いて逃げた。母親は生きたまま巨人に食べられるが、カヤは調査兵団の兵士に救われる。

 その兵士はサシャだった。主人公エレンの同期としてアニメ序盤から登場し、食いしん坊で憎めない性格をしていた彼女。貴重なパラディ島側の戦力であり、周囲を和ませてくれたサシャは、今はこの世にいない。マーレ襲撃の後、銃殺されたからだ。銃を向けたのはガビである。

 ファルコとガビに宿と食事を与えた夫婦は、サシャの両親だ。

 カヤもサシャの両親も、ガビがサシャを殺したことを知らない。ファルコとガビも、ガビが殺した兵士と、親切な3人の民間人が繋がっているなんて想像もしていない。カヤはガビとファルコがマーレから来たと耳にして、二人がマーレに帰る手立てを考える。驚くガビにカヤは言う。

「私は、お姉ちゃん(サシャ)みたいな人になりたいの」

 カヤとサシャの両親は、ガビがサシャを殺したと知ったとき、どう行動するのだろうか。

 一方、マーレでは戦士たちが会議を開いていた。彼らは信頼していた「獣の巨人」ジークが自分たちを裏切った事実を突き付けられショックを受けているが、マーレを守るため次の案を練らなければならない。隊長マガトは、世界に協力を仰ぎ連合軍を作って半年後にパラディ島を襲撃することを提案するが、ファルコの兄コルトは、敵地にいる弟が心配でいてもたってもいられない。優秀なガビとファルコのいない今、次の戦士候補生を育成するのにも時間がかかるし、半年もすれば頭のいいジークが今後の展開を予想して対策を整えてしまうはずだと他の戦士たちも抗議する。

 最後に口を開いたのは、「鎧の巨人」ライナーだ。
「今すぐに、パラディ島を奇襲するべきです!」

 生きる場所がパラディ島壁内でもマーレでも、そこに住んでいるのは悪魔ではないという歴然とした事実が全編を通して横たわる。どちらにも血の通った人間たちがいて、敵を恐れながらも懸命に生きているのだ。

 大切な人たちを守るために、エレンとライナーはまた戦わなければならない。

文=若林理央