2000人の悩みに寄り添った昼スナックママの金言! 居場所がなければ次を探す

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公開日:2021/3/3

昼スナックママが教える45歳からの「やりたくないこと」をやめる勇気
『昼スナックママが教える45歳からの「やりたくないこと」をやめる勇気』(木下紫乃/日経BP)

 東京の麻布十番に、週に一度の昼間だけ開店する「スナックひきだし」がある。切り盛りするのは、キャリア再構築を支援する会社「ヒキダシ」の代表者である木下紫乃さんだ。スナックのママである木下さんのもとには、会社員、社長、子連れの主婦と、あらゆる人たちが相談にやってくる。

 2017年6月の開店から数年。約2000人もの人たちに対して「なじみのスナックママとして無責任に、彼女たちの責任を押してきたの」と綴ってあるのは、木下さんの著書『昼スナックママが教える45歳からの「やりたくないこと」をやめる勇気』(木下紫乃/日経BP)だ。タイトルに「45歳」とあれど、本書で描かれる人生訓はどれも、あらゆる世代のビジネスパーソンの心にも刺さる。

会社に居場所がなければベクトルを横や斜めに向けてみる

 焼酎のソーダ割りを片手に、悩みを打ち明けたのは46歳の女性・Kさん。新卒入社から流通業界で働き続けたKさんは、29歳で結婚、2度の産休育休を経て、子育てがいち段落した40代で部長昇進試験へチャレンジするも、不合格になってしまった。

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 その後、社内で「新しい部署のリーダーに」と請われ新規事業部へ異動したものの、まさかの役職なし。思うような出世コースから外れ、ため息をつくKさんに対して、木下さんは「縦に上っていく成長とはまた違う、横に向かって広がる成長がある」とそっと語りかけた。

 日々働いていると、会社の中に「自分の居場所なんてもうない」とよぎる瞬間もあるはずだ。しかし、会社という箱は変わらずともその中で「次の『居場所』を探したらいいのになぁって思うのよ」と木下さんは述べる。

 そして、行き詰まったら「上に向いていたベクトルを横や斜めに向けて、意識的に目線を変えればいい」という選択肢もある。今いる場所だけではなく、隣の部署や他の組織、もしくは社外と、会社の一員だとしても「自分のネットワークを広げていけばいい。それが絶対にこれからの人生を豊かにする原資になるから」と木下さんは教えてくれる。

振り回されている人へ…自分の時間は大事な財産だと認識する

 45歳の女性・Uさんは、新卒で大手メーカーに就職した。あらゆる部署を経験する中で会計の仕事へ面白さを見出したUさんは、20代で経理や財務の資格を取得。39歳で金融系ベンチャーへ転職した。転職先で、経営企画、経理、財務を経験して、財務のスキルを買われたUさんは、いつしか経営管理室長に。

 しかし、ビールを片手に「スタッフが少ない上、組織がしっかりしていなくて。社員が疲弊しちゃってすぐ辞めてしまう悪循環。上司は社内政治に夢中で、私だけが残業の日々」と愚痴をこぼすUさん。そんなつぶやきに対して、木下さんは「人を動かして、巻き込む力」がマネジメントに必要なスキルだと諭した。

 他人が動いてくれないと、どうしても愚痴を言いたくなる。ただ、すべては「被害妄想」の一言に尽きる。大切なのは周囲へのアピールの仕方であり、自分がフォローしているのを感情的にはならずに周囲へ伝えたり、相手に対してしれっと「貸し」を作るコミュニケーションをしておいたりするのも、後々になって生きてくる。

 木下さんは、一番大事なのは「自分の時間は自分が管理する大事な財産だと認識すること」だと述べる。自分の許容範囲を理解しつつ、生活や仕事の質を上げるのもビジネスパーソンにとっては肝心だ。

 優しくこちらへ語りかけるような木下さんの言葉は、疲れ切った心をそっと包み込んでくれるようでもある。仕事で悩み落ち込んだとき、本書を開いてみれば、きっと光が見えてくるはずだ。

文=カネコシュウヘイ

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