横領したカネを高級ブランドと愛人に散財! “ミッキーハウス事件” 犯人の巧妙な手口とは

社会

公開日:2021/5/4

5億円横領された社長のぶっちゃけ話

著:
出版社:
清談社Publico
発売日:
5億円横領された社長のぶっちゃけ話
『5億円横領された社長のぶっちゃけ話』(神行武彦/清談社Publico)

 2018年10月、兵庫県三木市で発生した、ある横領事件が世間を賑わせた。土木建築会社・神和商事やその関連会社から着服したとして、同社の元役員・北村緑受刑者が逮捕された事件だ。当初、北村が横領した金額は300万円と報道されたが、その後金額が膨れ上がり、判決が出る頃には約1億円の横領が発覚していたという。

 この事件が話題になったのは、その金額だけでなくカネの使いみちだった。彼女は、横領したカネで高級ブランド品や高級腕時計を爆買いし、複数の愛人と豪遊。会社のカネで家まで建ててしまったという。建築費2800万円のその家は、壁や内装、表札など、そこらじゅうにディズニーの人気キャラクター、ミッキーマウスのイラストが施されていたことから“ミッキーハウス事件”と呼ばれている。

 先日、同事件の被害者で神和商事社長の神行武彦氏が『5億円横領された社長のぶっちゃけ話』(神行武彦/清談社Publico)を上梓した。タイトルにある通り、ミッキーハウス事件の真相をぶっちゃけている。

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 ちなみに神戸地検特別刑事部が起訴したのは約1億円だったが、神行氏は「最低でも五億円は横領されたと思っている」ことから、タイトルもそれに準じている。

 彼女はいかにして数億円ものカネを横領したのか。同書には、神行氏の調査によって明らかになった横領の手口が、克明に記されている。

①取引先などから支払われたカネの直接の横領
②会社の預金口座からの直接の横領
③小切手帳を会社に無断で発行し、振り出すことによる横領
④取引先への支払いやボーナスの原資を故意に多めに引き出し、差額を横領
⑤独断で己の気に入らない従業員のボーナスを勝手に減額し、差額を横領
⑥従業員らの従業員旅行などの積立口座からの横領

 そのほかにも、同社で認められていた給与の「前借り」制度を利用し、従業員が返済した前借り分を懐に入れて帳簿上は「返済済み」にしていたとか。会社の制度を悪用した卑劣な手口だ。また、③の方法で発行した小切手の金額は、1000万円を超えるものもあったという。かなりの大金だが神行氏はパソコンに疎く、経理業務を北村に任せっきりだったため、気づくことができなかったと悔やむ。

「この横領事件では、私にも反省すべきことは多い。まず、『経理の仕事など誰にでもできる』と思っていたことである。それは間違いであり、きちんとしたチェック体制を整えておくべきであったが、たいていの中小企業の経営者はこう思っているのではないだろうか。そもそも中小規模の会社にとって、会計の担当者と出納の担当者を分け、定期的に監査法人に金融機関の預金残高を確認させるようなことは、現実的ではない。だが、そんな油断が命取りになってしまった。」

 神行氏は、経営に関する自らの認識の甘さを反省し、自戒を込めてこの本を世に出したという。人生の勉強代としてはかなり高額な気もするが、参考になる読者もいるかもしれない。

 そんな著者だが、2019年に法人税約8000万円を脱税したとして、神行氏本人も逮捕、起訴されてしまう。被害者だったはずの彼が一転、容疑者になってしまった経緯も同書の見どころだ。ミッキーハウス事件というポップな名前からは想像できない、欲望渦巻くぶっちゃけ話。“カネの恐ろしさ”を知るには、最適の一冊だ。

文=フクロウ太郎

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著:
出版社:
清談社Publico
発売日:
ISBN:
9784909979049