ツアーナースの“見守る”看護から学ぶ、子どもの心の育て方。人気コミック第3弾はナース・先生・ママセレクション

マンガ

公開日:2021/6/4

漫画家しながらツアーナースしています。 現役ナース・先生・ママの“推し”セレクション
『漫画家しながらツアーナースしています。 現役ナース・先生・ママの“推し”セレクション』(明/集英社)

 小学校や中学校の思い出といえば、修学旅行や林間学校などの宿泊行事。楽しかったことや恥ずかしかったこと、ウン十年経った今でも鮮やかに頭に浮かんできて、あれは子ども時代の特別な行事だったと実感します。

『漫画家しながらツアーナースしています。』(明/集英社)は、学校や民間団体の宿泊行事に同行するツアーナースの明さんが、旅先で病気やトラブルを持つ子どもたちを支える様子を描いた人気のコミックエッセイ。なかなか覗くことができない旅先での子どもたちの様子が、親しみやすい絵柄で、時に笑いを交えながら紹介されています。

 コミック第3弾となる『漫画家しながらツアーナースしています。 現役ナース・先生・ママの“推し”セレクション』は、『よみタイ』で連載していたエピソードから厳選された、ナース・先生・ママによるセレクション。そこには、さまざまな想いを抱えて宿泊行事に参加する子どもたちと、それを支えるツアーナースの姿がありました。

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誰もが直面する「乗り物酔い」と「トイレ事情」

漫画家しながらツアーナースしています。 現役ナース・先生・ママの“推し”セレクション p10

漫画家しながらツアーナースしています。 現役ナース・先生・ママの“推し”セレクション p11

「楽しい旅にするためには健康でいることがいちばん大事」と語る明さん。特に、バスの中での乗り物酔いやトイレ事情は誰もが直面する問題です。本書には、初めての車酔いでパニックになりリュックの中に吐いてしまった子や、パーキングエリアでトイレに行かず、車内で隠れて用を足した子のエピソードが紹介されています。

 中でも水分・トイレ事情は大変。トイレを心配して水分を控えると熱中症になりやすく、トイレを我慢すると膀胱炎や腎盂腎炎(じんうじんえん)を発症することも。トイレにまつわる“心の問題”もあります。実際、明さん自身も、小学生になったばかりの頃にトイレで失敗し、「もう二度と学校には来られない」と追い詰められた経験があるとか。

 基本の基本ではあるけれど、「家族旅行でもトイレに行く習慣をつけておく」「普段は乗り物酔いしなくても座席のポケットに袋を準備する」などで防げることは多いので、子どもが傷つかないためにも周りの大人ができることをしよう、と思えるエピソードでした。

持病のある子やそれを支える子。みんな強くて逞しい

漫画家しながらツアーナースしています。 現役ナース・先生・ママの“推し”セレクション p116

漫画家しながらツアーナースしています。 現役ナース・先生・ママの“推し”セレクション p117

 持病がありながら宿泊行事に参加する子どもたちは、不安と葛藤でいっぱいです。彼らの病気は、バセドウ病、潰瘍性大腸炎、人前で喋れなくなる場面緘黙症(ばめんかんもくしょう)などさまざま。

 明さんに「病気だからといって同情するな」と言い、誰よりも努力しながら張り切って行事に参加する子がいるかと思えば、極度の貧血なのに周りから「サボっている」と言われて悩んでいる子もいます。

漫画家しながらツアーナースしています。 現役ナース・先生・ママの“推し”セレクション p138

漫画家しながらツアーナースしています。 現役ナース・先生・ママの“推し”セレクション p139

 不安を抱えるのは、持病のある本人だけではありません。周りの子どもたちにもさまざまな葛藤があります。たとえば、貧血の友だちにいつも怒ってばかりいる子は、「自分にも病気のお姉さんがいて、転ぶだけで骨が折れたりする。こわくて優しくなんかできない」と意外な事実を明さんに打ち明けます。

 そこから伝わるのは、持病のある本人はもちろん、周りの友だちや保護者、先生、きょうだいもみんな精一杯生きているということでした。

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