小学校6年生の約8割が近視…スマホ、タブレットの使用過多が子どもの眼球の形を変える

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公開日:2021/7/15

子どもの目が危ない 「超近視時代」に視力をどう守るか (NHK出版新書)

著:
出版社:
NHK出版
発売日:
子どもの目が危ない 「超近視時代」に視力をどう守るか
『子どもの目が危ない 「超近視時代」に視力をどう守るか』(大石寛人、NHKスペシャル取材班/NHK出版)

 コロナ禍でオンライン授業が増え、子どもたちがスマホやタブレット、ノートパソコンなどを使用する機会が増えた。目と近い距離で長時間集中している様子に、子どもの視力低下を心配する親は、少なくないのでは?

『子どもの目が危ない 「超近視時代」に視力をどう守るか』(大石寛人、NHKスペシャル取材班/NHK出版)が、ショッキングな事実を明らかにした。コロナ禍によって増えた近視の子どもたちは、なんと眼球が変形しており、それは二度と元に戻らない、というのだ。

 本書は、NHKスペシャル『わたしたちの“目”が危ない 超近視時代サバイバル』およびクローズアップ現代+『近視の常識が変わる!』などの番組を書籍化したもの。さらに、放送した番組には盛り込めなかった解説や取材結果を大幅に加筆している。また、日本眼科学会、日本近視学会、日本眼科医会、日本視能訓練士協会をはじめとする学会・協会の協力ほか、東京医科歯科大学の大野京子氏、梶田眼科院長の梶田雅義氏などに取材・インタビューを重ね、本書のチェックも受けているという。

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 本書によると、近視の人が増え続けていることはさまざまな研究やレポートからわかる。例えば、世界保健機関(WHO)は2050年に世界人口の約半数にあたる50億人が近視になるとのレポートを公表しており、日本が属する東アジアは「最も近視の多い地域」だという。中でも、日本では子どもの近視が増えており、2020年にNHKが約600人の小学生を対象に行った調査では、全体の半数以上、6年生ではなんと8割近くが近視だった。文部科学省の調査でも視力1.0未満の子どもの数が、2019年度には、調査開始以来最悪の数値を記録。近視研究の世界では、子どものときに起こる「学童近視」が成長期と重なって進行しやすいことがわかってきているそうだ。

子どもの目が危ない 「超近視時代」に視力をどう守るか p.4
『子どもの目が危ない 「超近視時代」に視力をどう守るか』p.4より

 近視になる要因はいくつかあるが、本書は特に「近業(きんぎょう)」を挙げている。30センチ以内の距離を見る作業のことで、これを長時間続けると近視を進めるリスクが高まることがわかっている、と近視進行抑制部門という外来がある東京医科歯科大学の「先端近視センター」教授でもある、先述の大野京子氏が答えている。オンライン授業で活用するスマホやタブレット、ノートパソコンなども、意識を払わなければ30センチ以内の距離で見つめていることが少なくなさそうだ。

子どもの目が危ない 「超近視時代」に視力をどう守るか p.44
『子どもの目が危ない 「超近視時代」に視力をどう守るか』p.44より

「学校での教科書やノートも30センチ以内では?」という声が聞こえてきそうだが、学校では黒板や先生を見るなどしているため、近くだけを長時間見続けていることは案外少ないのではないだろうか。

 また、オンライン授業で習慣になったデジタルデバイスによる学習が定着したことで、皮肉なことに、休校明けも子どもたちは近視のリスクが高いままの状態にさらされていると、2020年8月に米国で行われた「近業」に関するある調査を元に、本書は考察している。

 さて、本書で最もショッキングな事実は、増える「近業」による近視で、子どもの目(眼軸長…目の表面の角膜から網膜までの眼球の奥行き)が伸びている、ということだ。これは、眼球を伸ばすことで近くのモノを像ボケさせず焦点を合わせようとする網膜細胞の働きによる。眼軸長は成人まで1年に0.1ミリずつ伸び、平均24ミリで止まる。しかし、京都教育大学附属京都小中学校1~6年生約600人の目の調査データを専門家も加えて分析したところ、2020年時点で小学6年生の眼軸長平均は24.2ミリであったことがわかった。この長さで伸びが止まれば問題ないが、保証はない。眼軸長が27ミリ以上になると「強度近視」の目安となり、合併症によって失明やうつの可能性を指摘する声もある。

子どもの目が危ない 「超近視時代」に視力をどう守るか p.54
『子どもの目が危ない 「超近視時代」に視力をどう守るか』p.54より

 本書は、「近業」に警鐘を鳴らすだけでなく、世界各国でとられている近視対策や工夫なども紹介している。詳しくは本書にあたってもらいたいが、主な対策として次の4つが挙げられている。

(1)屋外活動の時間を増やす。1000ルクス以上の光を1日2時間浴びる

(2)目とモノとの距離が30センチ以内の「近業」を1日合計2時間以内にする

(3)同じく近業の継続時間を、休憩を挟む(6メートル先を見る)ことで20分以内に抑える

(4)オルソケラトロジーなど効果の確かめられている治療を選択する

 目や近視の分野は、身近で関心が高いからこそ、誤った常識が蔓延しがちだと本書は訴える。近視の研究は進んでいる。ぜひ本書で、目や近視の新常識や対策にふれてもらいたい。

文=ルートつつみ(@root223

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