クロマティが教える最強バッティング理論が大谷翔平の好調の理由を裏付ける!

スポーツ・科学

公開日:2021/8/14

ONE MOVE 最強バッティング教室

著:
出版社:
東洋館出版社
発売日:
ONE MOVE 最強バッティング教室
『ONE MOVE 最強バッティング教室』(ウォーレン・クロマティ/東洋館出版社)

 ウォーレン・クロマティ氏といえば、1980年代後半を中心に、プロ野球・巨人で大活躍した強打者だ。当時の外国人選手は、アメリカのメジャーリーグであまり活躍できず、日本に活躍の場を求めてプレーする選手がほとんど。しかし、クロマティ氏は来日時点でメジャー通算1063安打、直近のシーズンでも100安打を放っていた。つまり、メジャーリーグでもバリバリのレギュラー打者という立場で入団したのだ。

 その打棒で日本でも大活躍。巨人に在籍した7年間で打率3割以上を5度マーク。特に首位打者を獲得した1989年は、史上初の4割打者の誕生なるか、と期待されるほどヒットを量産した。

 そのクロマティ氏が、子ども向けに打撃技術の指導本を出した。それが本書『ONE MOVE 最強バッティング教室』(東洋館出版社)である。タイトルにある「ONE MOVE」はクロマティ氏が理想的とするバッティングスイングを表す言葉。端的に言うと「余分な動きがなく、ボールに向かって直線的な軌道を描くスイング」のことだという。

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 クロマティ氏といえば、父親世代の野球ファンには個性的なフォームという印象があるかもしれない。グッと上半身を前傾させる「クラウチングスタイル」は当時の小学生の多くがマネをしたものだ。故にクロマティ氏が「余分な動きのないスイング?」と意外に感じる人もいるかもしれない。しかし、クロマティ氏が個性的だったのは、その構えだけだ。投手がボールを投げると、スッと「トップ」と呼ばれる、スイングを開始する位置にバットを持つ腕を引き、そこからシャープなスイングでボールを捉えていた。あらためて見返すと、実にムダがなくシンプルなスイングである。

 これは日本人選手に比べ、個性的なフォームが多いように見えるメジャーリーグの打者の多くにも言えることで、一見、ユニークに見えても、それはボールをしっかりと見るための準備やタイミングをとる自分なりの方法、構えであり、トップに入ってからのフォームは多くの選手が共通している。そのスイングは実に余分な動きのないシンプルな軌道だ。

「余分な動きのないスイング」の重要さは、今、メジャーリーグを席巻している大谷翔平選手も教えてくれる。クロマティ氏も本書で触れているが、日本時代の大谷選手は足を上げて打つフォームだったが、メジャーリーグに移籍して以降は足を上げるのをやめ、ノーステップで打つ打法に変えた。理由はいろいろ挙げられるが、ひとつは足を上げると体が大きく動くため、ボールを捉えるための目線がブレやすくなったり、体重移動が大きくなることで、手元で鋭く変化するメジャーリーグの投手のボールにタイミングを合わせにくくなることが考えられる。シンプルな動きの方が、いろいろなタイプの投手に対応しやすいのだ。

 もちろん、一本足打法で知られ、日本球界で最多本塁打を放った王貞治氏のように、足を大きく上げる打法で結果を残す選手もいる。ただ、それは一流の選手が試行錯誤した結果、自分に最も合ったフォームで、目線のブレやタイミングのズレがないよう努力したから。野球を始めたばかりの子どもであれば、まずは「余分な動きのないスイング」で打つことが大切というのがクロマティ氏の考えである。

 では、「余分な動きがなく、ボールに向かって直線的な軌道を描くスイング」とは何か? それは本書にバットの握り方、打席の立ち方から実に丁寧に解説されている。打撃は理論がたくさんあり、突き詰めようとすると迷路に迷い込んでしまうこともあるが、クロマティ氏の解説は、丁寧だが細かすぎず、理想のフォーム同様、実にシンプル。写真も豊富でわかりやすく、解説動画が見られるQRコードも付いている。子ども用ではあるが、打撃に悩んでいる中高生、あるいは大人であっても原点に立ち戻るために役立つ技術指導書ではないだろうか。

文=田澤健一郎

■ONE MOVE 最強バッティング教室

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