BOOK OF THE YEAR 2021投票スタート!2020年小説部門を振り返る――待ちに待った『十二国記』新作が首位に!!

文芸・カルチャー

公開日:2021/9/6

十二国記『白銀の墟 玄の月』
十二国記『白銀の墟 玄の月』(小野不由美/新潮社)

 『ダ・ヴィンチ』の年末恒例大特集「BOOK OF THE YEAR」。今年の投票期間がいよいよスタート! ぜひあなたの「今年、いちばん良かった本」を決めて投票してみてほしい。

 ここで改めて2020年にどんな本がランクインしたのか振り返ってみることにしよう。

小説部門2020年ランキング

1位 十二国記『白銀の墟玄の月』小野不由美

2位『逆ソクラテス』伊坂幸太郎

3位『クスノキの番人』東野圭吾

4位『52ヘルツのクジラたち』町田そのこ

5位『ライオンのおやつ』小川糸

6位『イマジン?』有川ひろ

7位『少年と犬』馳星周

8位『四畳半タイムマシンブルース』森見登美彦

9位『黒武御神火御殿 三島屋変調百物語六之続』宮部みゆき

10位『じんかん』今村翔吾

11位『きたきた捕物帖』宮部みゆき

12位『一人称単数』村上春樹

13位『祝祭と予感』恩田陸

14位『おいしくて泣くとき』森沢明夫

15位『三体Ⅱ黒暗森林』(上・下) 劉慈欣

16位『巴里マカロンの謎』米澤穂信

17位『わたしの美しい庭』凪良ゆう

18位『ツナグ想い人の心得』辻村深月

19位『ドミノin上海』恩田陸

20位『半沢直樹アルルカンと道化師』池井戸潤

21位『楽園の烏』阿倍智里

22位『十字架のカルテ』知念実希人

23位『カケラ』湊かなえ

24位『タイタン』野崎まど

25位『雲を紡ぐ』伊吹有喜

26位『水を縫う』寺地はるな

27位『透明な夜の香り』千早茜

28位『宝石商リチャード氏の謎鑑定久遠の琥珀』辻村七子

29位『カエルの楽園2020』百田尚樹

30位『ミッドナイトスワン』内田英治

31位『AI崩壊』入江悠(脚本)浜口倫太郎(著)

32位『同姓同名』下村敦史

33位『風神雷神』(上・下) 原田マハ

34位『どうしても生きてる』朝井リョウ

35位『濱地健三郎の幽たる事件簿』有栖川有栖

36位『風間教場』長岡弘樹

37位『歩道橋シネマ』恩田陸

38位『ありふれた祈り おいしいコーヒーのいれ方 Second Season IX』村山由佳

39位『薬屋のひとりごと(9)』日向夏

40位『暴虎の牙』柚月裕子

41位『本好きの下剋上~司書になるためには手段を選んでいられません~第五部「女神の化身III」』香月美夜

42位『花嫁は三度ベルを鳴らすユーモアサスペンス』赤川次郎

43位『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』青柳碧人

44位『あの日の交換日記』辻堂ゆめ

45位『わたしの幸せな結婚』顎木あくみ

46位『ひこばえ』重松清

47位『後宮の烏』(4) 白川紺子(著)香魚子(イラスト)

48位『Another2001』綾辻行人

49位『この気持ちもいつか忘れる』住野よる

50位『獣たちのコロシアム 池袋ウエストゲートパーク 16』石田衣良

50位『暗約領域』大沢在昌

 2020年の首位に輝いたのは小野不由美『十二国記録』の新作。〝ずっと読んできたからこそ〞。ベスト3のタイトル、そこに寄せられたコメントからはそんな読者の思いが熱く伝わってくる。「これほど待ち望んだ新刊があっただろうか(42歳・女)」「待っていてよかった。この物語を読むことができて本当にうれしい(22歳・女)」――1位に輝いたのは、18年ぶりの書き下ろし長編刊行に歓声が天を衝いた小野不由美の十二国記『白銀の墟 玄の月』。1991年より始まった壮大なファンタジーは、前作まで11巻を数えるが、そのすべてをリアルタイムで読み続けてきた人のみならず、新作刊行を知り、この機会に読もう!と、既作を読んで準備し、発売を待っていた新たなファン層も形成されていた。

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十二国記『白銀の墟 玄の月』
十二国記『白銀の墟 玄の月』(小野不由美/新潮社)

 2位は〝先入観をひっくり返す〞という、自身の真髄をストレートに著した伊坂幸太郎『逆ソクラテス』。デビュー20年目を飾る作品となった本作は、これまでの伊坂作品を読んできたからこそわかる著者の〝真っ向勝負〞に読者が沸いた。3位は、東野圭吾が作家生活35周年に上梓した『クスノキの番人』。これまで殺人事件や復讐劇など重いテーマを扱った作品群の中でも、著者が示し続けてきた〝光〞を集めたかのような物語。王道の東野ミステリーファンにとっても納得の、記念碑的作品となった。

『逆ソクラテス』
『逆ソクラテス』(伊坂幸太郎/集英社)

『クスノキの番人』
『クスノキの番人』(東野圭吾/ 実業之日本社)

 注目は、初のベスト10入りを果たし、4位をマークした町田そのこ『52ヘルツのクジラたち』。周りに誰かがいても〝その声が届かない〞ことの悲痛さを掬いとった本作は、コロナ禍のなか、多くの人々の心に共鳴し、声が届いてこない、どこかで苦しんでいる誰かへの思いも想起させたことがわかる切実なコメントが寄せられていた。

『52ヘルツのクジラたち』
『52ヘルツのクジラたち』(町田そのこ/中央公論新社)

 〝三密〞自粛を余儀なくされ、誰もがどこか〝孤独〞を感じていた2020年は、5位『ライオンのおやつ』、7位『少年と犬』、14位『おいしくて泣くとき』、17位『わたしの美しい庭』、25位『雲を紡ぐ』など、テーマはそれぞれながら、人と人との関係性を真っ向から見つめ、思考の軸となる小説が多くランクイン。

 さらに既作とシンクロした6位『イマジン?』、8位『四畳半タイムマシンブルース』、『蜜蜂と遠雷』のスピンオフで13位の『祝祭と予感』、9年ぶりの続編となった18位『ツナグ 想い人の心得』、シリーズ最新作である9位『黒武御神火御殿 三島屋変調百物語六之続』、16位『巴里マカロンの謎』など、その1冊から次なる1冊へ、と読書の楽しみが派生していく作品に票が集まった。

前代未聞の社会情勢に振り回された年ではあったが、いつもより本とじっくり向き合えた――。読者にとって、2020年はそんな1年であったことがランキング&コメントからはうかがえた。

文=河村道子

※この記事は『ダ・ヴィンチ』2020年1月号の転載です。