「いい奥さんになりそうだね」「彼氏の影響?」――モヤる言葉を撃退して元気になる方法

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公開日:2021/10/7

モヤる言葉、ヤバイ人~自尊心を削る人から心を守る「言葉の護身術」
『モヤる言葉、ヤバイ人~自尊心を削る人から心を守る「言葉の護身術」』(アルテイシア/大和書房)

「いい奥さんになりそうだよね」「子どもを産めば、仕事の幅が広がるんじゃない?」――相手がよかれと思って発した言葉やアドバイスに、ちょっとした違和感を覚えた経験はないだろうか。その違和感の正体と、自分の心を疲れさせる言葉を撃退する方法を痛快かつ愛に溢れる言葉で伝えるのが、『モヤる言葉、ヤバイ人~自尊心を削る人から心を守る「言葉の護身術」』(アルテイシア/大和書房)だ。

『離婚しそうな私が結婚を続けている29の理由』『40歳を過ぎたら生きるのがラクになった』などの著作を持つ著者のアルテイシア氏が抱える問題意識は、日本社会のジェンダーギャップや少数派の生きづらさだ。氏は自分自身の経験をベースに、パンチと吸引力がある筆致でこの問題について発信、多様な人が生きやすい社会の実現を目指している。本書でも、読者を心地よく共感へと導くその語り口が爆発している。

 本書では主に、女性に向けられがちな言葉を挙げながら、そのモヤモヤの理由を掘り下げる。明らかなハラスメントである言葉から、「女性は男性を陰で支えるべき」「恋愛はみんなが望むもの」といった偏見が含まれるものまで、背景はさまざまだ。著者も以前は、誰かの言葉で心身に不調を来していたが、今は世界を少しでも良くするために、元気いっぱいに怒り続けると宣言。その言葉のとおり、遠慮のない彼女の語り口はとても頼もしい。誰もが知るポップカルチャーだけでなく、わかる世代を制限する小ネタも容赦なく盛り込んでいるため、学生時代の仲間や同期と語り合っているような安心感も得られる(たとえば、著者が怒りを感じたときに空想で用いる主な武器は、あの女性アーティストでおなじみのグレッチだ)。

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 モヤる言葉への対処法も独特だ。その方法は、小声&伏し目で大事なことを言って相手をハッとさせる「明菜返し」や、「なぜなぜ坊や」と呼ばれた幼少期のエジソンさながらに無邪気に質問を繰り返し相手に考えさせる「エジソン返し」など。ネーミングは笑えるが、徹底して行えば効果がありそうだ。それも効かない厄介な相手には、向こうをドン引きさせる「エシディシ返し」「オカルト返し」などを勧める。という具合に、ひとりで抱え込むと深刻になりそうな言葉を笑い飛ばすトーンが痛快だ。同時に、モヤる言葉に対して愛想笑いでごまかすのは絶対にNGなど、本質を突く言葉が心地よいバランスで盛り込まれていてグッとくる。

 本書で取り上げる「モヤる言葉」は、男性から女性にかけられる言葉ばかりではない。女性から女性にかけられる言葉もあれば、性別を問わないものもある。本文でも述べられているとおり、著者の願いは、人が自分の生き方を邪魔されず、多様な選択肢を自由に選べる社会になること。ジェンダーや多様性の問題は難しく、ちょっと近寄りがたいと感じている人もいるだろう。しかし本書を読むと、自分がかけられたあの言葉も、かつてふと口にしてしまった言葉も、日本社会の問題につながっているとわかる。共感し、時に自分の無知を反省し、笑いながらも、いつの間にか多様性の問題を身近に感じている。著者は、こうして我々の心を惹きつける赤裸々でポップな言葉を武器に、世界を変えるため戦っているのだ。

 誰かの言葉に違和感を覚えたら、本書の笑えるノウハウを思い出して返してみる。度が過ぎるときは、笑ってごまかさずにちゃんと怒る。イヤな思いをして困っている誰かに、声をかけてみる。社会を大きく動かすことはできないかもしれないが、自分や大切な人が生きる世界を少し良くするために、できることをやってみようと思わせてくれる1冊だ。

文=川辺美希

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