すごーい! 心が疲れたときこそ見たい、コウペンちゃんと楽しむ世界の名画

暮らし

公開日:2021/10/16

コウペンちゃんとまなぶ世界の名画
『コウペンちゃんとまなぶ世界の名画』(稲庭彩和子:監修・著、鮫島圭代:著、るるてあ:イラスト/KADOKAWA)

 Twitterをはじめ、LINEスタンプや書籍、さまざまなコラボやカフェなどで絶大な人気を誇っている「コウペンちゃん」。作者・るるてあさんのTwitterフォロワー数は37万人を超えており、日々さまざまなイラストが上げられている。コウペンちゃんの何でも肯定して褒めてくれるキャラクター、ゆったりとした世界観に魅了され、ツイートを楽しみにしている人も多い。もちろん、筆者もコウペンちゃんの虜になっている1人だ。

 先日、そんなコウペンちゃんと世界の絵画が学べるというとても平和な本『コウペンちゃんとまなぶ世界の名画』(稲庭彩和子:監修・著、鮫島圭代:著、るるてあ:イラスト/KADOKAWA)が発売された。るるてあさんは以前から「マンセルの色立体の上で途方に暮れるコウペンちゃん」や「パウル・クレーっぽいコウペンちゃん」など、コウペンちゃんと名画を組み合わせたイラストをアップして注目を集めていた。そのるるてあさん(コウペンちゃん)と学べる本ということで、非常に気になった。

コウペンちゃんとまなぶ世界の名画
るるてあさん作「夢の底へ」

コウペンちゃんとまなぶ世界の名画
元絵となっているパウル・クレー作「パルナッソス山へ」 ©Bridgeman Images/amanaimages

 各絵画の紹介ページには、詳細な絵画の解説に加えてコウペンちゃんやその仲間たちのゆるーいコメントも添えられており、その自由さに癒される。「絵画」という言葉につい堅苦さを感じてしまいがちだが、こんなふうに見てもいいんだ!とふっと力が抜けてしまう。そんな、身構えなくても学べる、むしろ心が疲れたときこそ見てほしい絵画(とコウペンちゃん)を、いくつか紹介しよう。

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「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」(P.30~P.31)

コウペンちゃんとまなぶ世界の名画
出典:ColBase(国立文化財機構所蔵品統合検索システム)より

 まずは「今日もがんばるあなたを応援してくれる名画」として紹介されている、「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」(葛飾北斎)。力強く描かれる巨大な波が印象的なこの絵画は、多くの人が一度は目にしたことがある作品。庶民が江戸へと魚や野菜を運んだ帰りの様子を描いているものだが、あまり応援してくれるという観点で見たことはなかった。だが、荒れる海の中必死に進む彼らの様子を見ていると、たしかに「自分もがんばろう」という気持ちになってくる。がんばって進んでえらーい!

「秋、積み藁」(P.112~P.113)

コウペンちゃんとまなぶ世界の名画
©The Metropolitan Museum of Art, New York,Bequest of Lillian S. Timken, 1959

 続いて、「ねむれない夜に夢の中へつれていってくれる名画」として紹介されている「秋、積み藁」(ジャン=フランソワ・ミレー)。豊作の象徴である積み藁を描いたこの作品の季節は秋。つまり冬支度をしているところ。雲の広がる明るすぎない空がまた、これから訪れる静かな季節を感じさせる。羊の群れも相まって、まさに夢の中へといざなってくれそうだ。そしてこの絵を見ながらすんやり眠りにつくコウペンちゃんも可愛い……!

「グランド・ジャット島の日曜日の午後」(P.120~P.121)

コウペンちゃんとまなぶ世界の名画
提供:The Art Institute of Chicago

 最後は、「1日がんばったあなたに心がおだやか~になる名画」として紹介されている「グランド・ジャット島の日曜日の午後」(ジョルジュ・スーラ)。多くの人たちが思い思いに週末をのんびり過ごす様子が描かれた作品だ。そしてこの絵、日の光の明るさを描くため、なんと点々で描かれている。くっきりとしたラインと色合いでありながらもどこか繊細さと温もりを感じるのは、チューブから出したそのままの色を緻密にキャンバスに並べているためだ。すごーい!

 今まで何気なく見ていた絵画も、こうして1点1点説明とともに見ていくことで新たな発見を得ることができる。「そういうシーンだったのか!」「こんなところに鳥がいたのか」などより細かく見ていけば想像も膨らむ。ちなみに筆者は、紹介した絵画のほか「緑響く」(東山魁夷)にとても魅了された。湖畔と森の緑の中に白馬の白色が映えて幻想的な雰囲気を醸し出していて、別世界へと連れて行ってくれそうだ。

 この『コウペンちゃんとまなぶ世界の名画』には、紹介したものを含め全部で53点もの絵画が紹介されている。コウペンちゃんとともにじっくり学ぶもよし、お気に入りを見つけるもよし、描かれた世界の過去や未来を想像してみるもよし。ぜひとも自由に絵を見て癒されるという体験をしてほしい。絵画の世界は、思ったよりも自由だ。

文=月乃雫

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