アイス愛全開!昭和・平成の500以上の商品をマニアックに紹介する究極の「アイス史」本

暮らし

更新日:2021/11/12

家で過ごす時間が増えた昨今。以前からの趣味や外で友人や仲間と集まって何かする、というのもなかなか難しい……なんて人も多いのではないでしょうか。そんなあなたは、1人でも楽しめる、外で密にならない、家の中でもできる! そんな魅力的な趣味やエンタメを本から見つけてみては?
それには何かを楽しんでいるマニアな先達から魅力を聞くのが一番、ということで、編集部おすすめの“マニア本”を特集でお届けします!

日本アイスクロニクル
『日本アイスクロニクル』(アイスマン福留/辰巳出版)

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 あなたにとって「思い出のアイス」は、どんなアイスだろうか。平成元年生まれの私の場合は、小さい頃から、必ず自宅の冷凍庫に入っている「ヨーロピアン・シュガーコーン」。シャリッとした食感でいつの間にか我が家の定番に加わった「爽」。中学時代、友人たちと放課後にこっそり食べた自販機アイス「セブンティーンアイス」。お出かけした時の「サーティワンアイスクリーム」。ここぞという時のごほうび「ハーゲンダッツ」…。きっとふりかえってみれば、あなたの思い出の中にもたくさんの種類のアイスがあふれているに違いない。

日本アイスクロニクル p.6-7

 そんなみんな大好きなアイスの歴史をまとめたのが『日本アイスクロニクル』(辰巳出版)だ。著者は、年間1000種類以上のアイスを食し、すべてのパッケージを保存、収集しているというアイスマニア協会会長・アイスマン福留氏。この本では、懐かしいヒット商品から今なお続くロングセラー、昭和・平成の名作・珍作の数々まで、500以上のアイスが紹介されている。日本のアイス史を年代順に紹介してくれるから、誰だって「あ!これ! 昔よく食べていた!」という懐かしいアイスと再会できるのだ。

日本アイスクロニクル p.26-27

 まず、この本は、ページをめくるだけでワクワクが止まらない。アイスのパッケージはどれもポップで、どこかレトロ。元気が出てくるカラフルで色鮮やかなパッケージが賑々しく紹介されているのだから、ただ眺めているだけでもついつい心躍らされてしまう。

 最初に目についたのは、1978年誕生の「パナップ」(グリコ)。今でも大人気のアイスだが、当時のキャッチフレーズは、「こんなのはじめて!」。これまでにない長細いロングカップ容器で話題になったのだそうだ。すっかり忘れていたが、確かに小さい頃、このブドウの絵柄のパナップをよく食べていた気がする……! パッケージを見ているだけで、アイスとジャムが巧みに絡み合った味わいを思い出してなんだかお腹が空いてきてしまった。

日本アイスクロニクル p.44-45

日本アイスクロニクル p.46-47

 また、1981年のページには誕生当時の「ガリガリ君」の姿が! この商品は、元々、子どもが遊びながらでも片手で食べやすいようにと赤城乳業が自社の看板商品「赤城しぐれ」をバータイプに改良したものなのだという。だから、子ども向けにキャラクターイラストを採用し、当たりくじ付きにして大ヒットとなったのだそうだが、誕生当初のパッケージは違和感満載…。大きな口とイガグリ頭はそのままなのに、目が小さいせいなのか、「これ、本当にガリガリくん?!」という見た目だ。実は、2000年のリニューアルまでは、キャラクターの絵はプロのデザイナーではなく、赤城乳業の社員が描いていたという。だから味わい深い絵なのか…。年代ごとのデザインも掲載されているから、その変遷が追えるのも楽しい。

日本アイスクロニクル p.58-59

日本アイスクロニクル p.82-83

 さらに、本書には、年代別のアイスの紹介のほか、「コラム」や「特集」も収載され、アイスマン福留氏があらゆる切り口でアイス史を教えてくれる。「冬アイスが定着するまでの道のり」や「超高級アイスの華麗なる戦い」、「独自ブランドで展開するコンビニアイス」などの多彩な内容からは、彼のアイス愛がほとばしる。本の末尾に書かれたこんな言葉にもなんだかグッときてしまった。

日本アイスクロニクル p.124-125

私たちにとって身近な存在であるアイスだが、メーカーをはじめ、業界に携わる人たちが長い年月をかけて積み上げてきたものは、とてつもなく大きく、その世界は想像以上に深い。そんな世界に興味本位で、うっかり片足を突っ込んでしまった以上、覚悟を決めて、自分の持つ限られた時間のすべてをここに捧げたいと思う。

 ページをめくるたびに圧巻。「こんなに丁寧にアイス史を網羅できるだなんて」と驚かされ続けてきたが、それは、著者が真摯にアイスを愛し、研究し続けてきた証に他ならないのだろう。

 マニアックな本ほど、面白いものはない。徹底的に調べ尽くされているからこそ、圧倒されるものがある。あなたも、この本を読んで、奥深いアイスの世界に触れてみてほしい。アイスへの情熱みなぎるこの本を読めば、ますますアイスが好きになってしまうこと間違いなしだ。

文=アサトーミナミ

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