三世代100年の歴史を紡ぐ朝ドラ『カムカムエヴリバディ』。世良公則の“On the Sunny Side of the Street”熱唱に涙腺崩壊の第6週を振り返る

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公開日:2021/12/16

NHKラジオ ラジオで!カムカムエヴリバディ 2021年 12 月号
『NHKラジオ ラジオで! カムカムエヴリバディ 2021年12月号』(NHK出版)

 現在放送中の、朝の連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』。朝ドラ史上初めて、祖母・母・娘、三世代の女性たちを主人公にしたファミリーストーリーです。現在は昭和を生きるひとりめの主人公・安子(上白石萌音)の物語が進行中。先週は安子が単身での再婚の話を断り、婚家・雉真家を出て娘・るいとともに大阪へ。貧しくも楽しく暮らしますが、自らの過労で引き起こした自転車事故で、るいの額に消えない傷をつくってしまいます。それをきっかけに、ふたりが雉真家へ戻ってくるところまでが描かれました。今回はその後、第6週のあらすじと見どころを紹介します。

 岡山に、雉真家に帰ってきた安子とるい。美都里(YOU)も「帰ってきてくれて、ありがとう」とふたりを迎え、その暮らしは想像以上に平和にスタートしました。しかし再会した幼馴染のきぬ(小野花梨)に「暮らしに不満はないけど、大阪での生活が恋しい」と漏らす安子。安子は自分の力でるいとふたり、生き抜いてきた大阪での暮らしの充実感が忘れられないのでした。そこで安子は、きぬの豆腐店の片隅におはぎを置かせてもらい、るいとふたりで店に立つことに。しかし千吉から「雉真家のメンツに関わるから」と、るいを連れて行くことは禁止されてしまいます。それでも「るいの頭の傷の治療費は自分で稼ぎたい」と、店を続けることにした安子。「自分も連れて行って」と懇願するるいを「わがままあ言うんじゃねえ!」と𠮟りつけ、複雑な気持ちで家を出ます。

 そんな中、安子は往来で困っている米兵とおばあさんに遭遇。通訳を買って出て、初めて実践した英会話に高揚します。さらに稔と通った喫茶店のマスター・定一(世良公則)にも再会。現在定一はお店の傍ら、米国の進駐軍のクラブ(娯楽施設)で演奏するバンドマンを斡旋していると知りました。出征した息子・健一の生死は、いまだ不明。定一は、かつての敵国の音楽をかけ、その国の娯楽のために仕事をしている自分に、複雑な感情を抱いていました。それを知った安子は、稔との子どもが生まれたこと、その子に「どこの国とも自由に行き来できる。どこの国の音楽でも自由に聴ける。自由に演奏できる。私たちの子どもにゃあそねえな世界を生きてほしい。ひなたの道を歩いてほしい」という稔の思いを込めて、 “るい”と名付けたことを伝えます(ジャズ界の巨匠、ルイ・アームストロングの名前が由来)。マスターは「インテリの稔が考えそうなことじゃの」と言いながらも、静かに微笑むのでした。

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 安子が外の世界を広げる一方、るいはずっと家の中。どうして雉真家に連れてこられたのか、どうして母と一緒におはぎを売ってはいけないのか。自分の置かれている状況が理解できません。その疑問を雉真家の女中・雪衣(岡田結実)にぶつけると、雪衣は「(安子さんは)女手一つでるいちゃんを育てることを諦めて、雉真の家にお返ししようと決めたんじゃと思います」と返答。るいは寂しさを募らせます。

 ある日、安子は先日出会った米兵中尉・ロバートに連れられて進駐軍のオフィスへ。そこで「What prompted you to learn English(どうして英語を勉強しようと思ったのですか)?」と聞かれ、稔について話し始めます。稔との日々を思い出し、次第に感情が高ぶっていく安子。涙ながらに「もう夫はいないのに、どうして私はまだ英語を勉強しているのか」と苦しい感情をロバートにぶつけます。するとロバートは安子をクラブに案内。“Silent Night”を聴きながら涙する人々を前に、アメリカでも多くの人たちが亡くなったことを伝え「ここにいる人たちは、アメリカ人も日本人も関係なく、亡くなった人たちがみな安らかに眠れるようにと祈っている」と話します。

 ちょうど同じ頃、定一もクラブの中にいました。盛り上がる観客を見て、ステージ袖で「ええ気なもんじゃ」とつぶやく定一。その時、いつも店の外で音楽を盗み聞きしている少年が、ここまで付いてきていたことに気づきます。つまみ出そうとする定一ですが、少年のキラキラした瞳とその先に輝くトランペットを見て、安子が語っていた稔の言葉を思い出します。そしてステージに乱入。“On the Sunny Side of the Street”を歌い出しました。定一の歌声に涙する安子。ロバートの「ご主人は娘さんにひなたの道を歩いてほしいと望んでいたそうですが、あなたにも同じことを望んでいたのではないですか」という問いかけに、安子は涙しながらも微笑むのでした。

 今週のハイライトは、何といっても世良公則演じる定一の“On the Sunny Side of the Street”の歌唱シーン。この時定一がなぜステージに乱入し、歌い出したのか。その心情を明確に説明するセリフやナレーションはありませんでした。それはかつてのように純粋にジャズを愛する心なのかもしれないし、稔の言う「どこの国の音楽でも自由に聴ける」未来への希望なのかもしれません。アメリカの音楽を愛する心と、息子を奪った国への憎しみという、アメリカへの相反する感情に苦しんでいた定一。そんな複雑な感情を込め、それでも暗闇から初めてひなたの道へ目を向けることができたように感じられた彼の歌声を、涙なしに聴くことはできませんでした。

 一方今週は、安子とるいがすれ違っていく週でもありました。雉真家に来た当初から「お母さんとずっと一緒にいられる?」と不安を感じていたるい。ふたりが一緒にいる時間が少なくなったこと。そして誰も悪者にしない安子らしいと言えばらしい、現状への説明不足。その結果、安子はるいを愛していても、その愛がるいに届きづらくなっています。そこへ不穏な動きをみせる雪衣の存在も手伝って、すれ違っていくふたり。その溝はこれからも深まってしまうのか。これからの展開に注目です。

文=原智香

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