朗読好きの主人公が誘われたのは「放送部」!?『響け! ユーフォニアム』の武田綾乃氏が原作を手掛ける、新たな「部活」もの

マンガ

公開日:2022/4/26

花は咲く、修羅の如く
『花は咲く、修羅の如く 1』(武田綾乃:原作、むっしゅ:漫画/集英社)

 読者諸氏の多くは、小中高の学生時代、何らかの「部活動」に所属していたのではないだろうか。野球部やサッカー部などスポーツ系はよく漫画などの題材になっているが、最近はより多彩な部活が題材になっている。たとえば高校の吹奏楽部の活動を描き、アニメも人気を博した『響け! ユーフォニアム』の原作者である武田綾乃氏が今度は漫画原作を手がけることに。『花は咲く、修羅の如く 1』(武田綾乃:原作、むっしゅ:漫画/集英社)は、高校の「放送部」にスポットを当てた作品だ。

 人口600人ほどの離島に住む少女「春山花奈」は朗読が大好きで、島の子供たちに物語を読んで聞かせる「朗読会」を行なっていた。ある日、花奈の朗読会が開かれていたときにたまたま島を訪れていた「薄頼瑞希」は花奈の声を聞いて、その天性の魅力に惹きつけられる。その場で瑞希は花奈に声をかけ、彼女をスカウトする。花奈は「すももが丘高校」に進学予定であり、瑞希はそこの放送部で部長を務めているという。しかし離島ゆえにフェリーしか帰宅手段がなく、放課後の時間も限られており、ワガママを言ってはいけないと感じている花奈はこれを固辞。それでも本心では放送部に入ってみたいと思っている花奈の気持ちを感じた瑞希は、フェリーの時間などの問題をクリアして彼女を放送部に引き入れるのだった。

 ところで、なぜ朗読好きの花奈が放送部なのか。それは放送部には年に1回、朗読のある大会が開催されるからだ。それが「NHK杯全国高校放送コンテスト」、通称「Nコン」である。各都道府県から選ばれた生徒たちが頂点を目指して競い合う、いわば放送部の甲子園。Nコンには「アナウンス部門」や「朗読部門」などがあり、それぞれの適性に合わせて出場するのだ。そしてNコンを目指す者や瑞希がスカウトした者など、さまざまな顔ぶれが放送部に集うのである。

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 花奈の所属する「すすもが丘高校放送部」は、実は1年前にできたばかりの新設部。そのため先輩は部長の瑞希と副部長の整井良子、そして人見知り男子の箱山瀬太郎の3人だけ。新入部員も花奈を含めて4人という小所帯である。それでも音作りが好きという冬賀萩大と、アナウンス志望の夏江杏という中学時代に放送部だった経験者ふたりを擁している。なぜ彼らが入ったかというと、昨年、校舎が建て替えられたときに放送室も充実した設備となっていたからだ。各人の関係性はまだぎこちないが、こうしてすももが丘高校放送部の新たな1年がスタートしたのである。そういえば、実力のある同級生や頼りになる先輩、それに指導力の高い顧問など『響け! ユーフォニアム』に通じる部分が見られるのも興味深い。

 私も小学生の頃、学校の放送部に所属していたことがあり、昼休みに校内放送などを行なっていたので本作に描かれている楽しさというのはよく分かる。ただ部活動としてみれば、やはりスポーツ系に比べれば大人しいイメージはあるだろう。本作は放送部の活動がどんなものかを知るうえで、非常に役立つものである。朗読に限らず、学生でちょっと「声」の仕事に興味があるという人は、放送部の扉を叩いてみるのもいいかもしれない。

文=木谷誠

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