『賭博破戒録カイジ』のスピンオフ! “ハンチョウ大槻”に学ぶ! 充実した休日のための悪魔的ライフハック5選

マンガ

更新日:2022/6/15

1日外出録ハンチョウ
1日外出録ハンチョウ』(福本伸行、萩原天晴、上原求、新井和也/講談社)

 なんだか最近タイミングが悪い気がする。ツイてない。疲れる。楽しくない。何もかも放り投げて、南の島に逃げてしまいたい。忙しい毎日を過ごしていると、しばしば、そんな腐れムーブメントに襲われることがありますよね。でもちょっと待って。南の島に行く前に、この本を読んで癒やされてみませんか? 『1日外出録ハンチョウ』(福本伸行、萩原天晴、上原求、新井和也/講談社)です。

 絵柄を見ておわかりの通り、福本伸行先生の『賭博破戒録カイジ』のスピンオフ作品。普段は地下労働施設で働いているハンチョウ(班長)こと大槻が、「1日外出券」を使い、地上でのグルメや旅行を楽しみます。基本一話完結型のお話です。

 地下労働施設とは、地上で莫大な借金を抱えた債務者が送られる強制労働施設のこと。一度入ると、決められた年数が経過するまで外には出られません。大槻も債務者ですが、チンコロ(サイコロを使ったゲーム)で稼いだペリカ※を使って、しばしば、「1日外出券」を購入し、外に出ているのです。本編を知らない方でも、この設定さえ頭に入れておけば、スッと読めます。

(※施設専用通貨のこと。1円=10ペリカ)

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 それでは、想像してみてください。あなたは、地下労働施設で働かされています。必死の思いで1日外出券を手に入れたとして、地上でどのように過ごしますか?

 きっと一秒も無駄にするまいと、マッサージに、美容室、買い物に友達との飲み会など、ぎっちり予定を詰め込むでしょう。しかし、こういう過ごし方って結構疲れるんですよね。ストレス解消のはずが、みるみる消費していく体力とマネー。加えて、頭の片隅には、刻一刻と迫るタイムリミット…。地下労働施設を想像するまでもなく、貴重な休日をこんな感じで過ごしている方も多いのではないでしょうか。

 しかし、大槻は違います。計画を立てなくても、お金をかけなくても、たった一人でも、与えられた24時間を、彼は最大限楽しみ尽くすのです。そんな大槻の、休日を満喫するための悪魔的ライフハックをご紹介しましょう。

ハンチョウが教えてくれる、ささやかな幸せをつくる休日ライフハック

その①限られた時間こそ焦ってはいけない

「1日外出を満喫するにはまず、焦らぬこと」。大槻の言葉です。24時間のカウントダウンが始まっても、大槻はうろたえません。それどころか、おもむろに、ニットの毛玉を取り始めます。こんな生産性のない行為、相当暇なときでない限り、いや、相当暇なときでも避けたいもの。

 一方で私たちは、ニットの毛玉を素手で取る行為に、圧倒的な没入感があることも知っています。「今やらなくていい、でもなぜか夢中になれる…」。そんな時間泥棒な行為を、大槻はあえてやるのです。24時間のうち、数時間を毛玉取りに費やすなんて正気の沙汰じゃありません。でも、そんな休日の始まりもまた、幸せだと思いませんか? 限られたお休みだからこそ、無駄な行為を愛おしむ。それが休日ライフハックです。

その②あえてスーツを着て昼間から居酒屋でビールを飲もう

 日が高いうちから飲むお酒は、夜のそれ以上に多幸感がありますよね。ある日の1日外出で、大槻はスーツを購入し、ビジネスパーソン気取りで庶民的な蕎麦屋に入ります。時間は昼時。周りには立ち食いスタイルで蕎麦をかきこむサラリーマンたちの姿。そんな彼らを横目に、大槻はあえてテーブル席に座り、注文するのです。おつまみと生ビールを。監視の黒服は言います。

「スーツを着た途端大槻は…まるで重役…! 昼間から酒を飲んでも許される権力者…!」

 まったく意味のない一人遊びですが、最高だと思いませんか。平日休みができたら、ぜひチャレンジしたい。締めはもちろん、蕎麦です。

その③デパ地下で贅沢買いしたら、空の下でピクニック

 突如、財布から出てきた1万円分の商品券。大槻はそれを持って、デパートへと向かいます。お目当てはデパ地下。松茸おこわ、フルーツサンド、牛頬煮込み、ラザニア…普段買えないような高級お惣菜をこれでもかと買い込み、屋上のテラス席へGO。デパ地下で買った惣菜を広げたら、気分はピクニック。もちろんビールも忘れずに。いいですよね。想像するだけで、最高な休日です。

 人気のレストランや、アフタヌーンティーも素敵ですが、自分の好きなものを、広い空の下でいただくと、美味しさは倍になります。食べ終わってもお会計がいらないところもポイント。とはいえ、たまたま商品券が見つかる可能性は低いと思うので、そんなときはコンビニとかでもいいと思います。

その④自宅ではない場所で朝を迎えよう

 1日外出の際、大槻が毎回利用するのが格安ビジネスホテル。特にこれといった描写もないのですが、読んでいるとなんとなく、ビジネスホテルに泊まりたくなるのです。いつもと違うベッドで眠る非日常感も、最高の休日をつくるエッセンスです。

 あるいは、休日はあえて眠らないという選択肢もアリ。あるときの大槻は、仲間の沼川と石和とともにファミレスに入り、一晩中、喋り倒します。和洋中なんでもあるメニューに、どうでもいい話と、ドリンクバーで一晩中盛り上がるのです。学生時代は幾度となくそんな夜を過ごしたのに、大人になるにつれて、いつの間にか遠ざかっているんですよね。同じような休日に飽き飽きしているなら、レッツゴーファミレス。

その⑤風邪のひき始めも大槻におまかせ!

 どんなに楽しい休日でも、体調不良になっては元も子もありません。大槻もある日の外出で、突如、体調不良を感じます。もう少しで本格的な風邪をひきそう…。翌日のボードゲームカフェまでに回復すべく、大槻は急ぎ宿へと向かいます。そして作るのです。「長ネギと生姜たっぷりつみれ鍋」を。

 たっぷり入ったネギと、生姜入り肉団子によって、体は温められ多量に発汗。それとともに効率よく吸収されたビタミンやタンパク質などの栄養素が、血中を巡ります。

 さらに、水を入れたバケツに丸めた新聞紙をさしこみ、即席加湿器を作成。ベッドの周りに囲むようにして置いたら、マスクをして布団を巻きつけるようにして就寝。朝目覚めると汗びっしょりで、熱も下がっているという寸法です。回復した大槻は、無事ボードゲームを楽しむのでした。風邪をひいたかもだと感じたときは、この大槻メソッド、ぜひお試しあれ。

 この作品、キャッチコピーは「カイジの飯テロスピンオフ作品」だそうですが、個人的には、「忙しいあなたの心を癒やすヒーリング作品」のほうがしっくり来ます。

 頑張り過ぎなあなた。大槻のように、自由にお金をかけず、心から楽しめる…そんな悪魔的な休日を過ごしてみませんか?

文=中村未来

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