第12回「弱虫ペダル」

マンガ

公開日:2024/5/22

鈴原希実

あなたは今までに何回、失敗を経験してきましたか?

私は人よりも失敗の数が多い方なのではないかと思います。
人から見たら大した失敗ではなくても、自分の中では結構引きずってしまうことも多いのです。

ところで、皆さんは失敗という言葉にどんなイメージを持っているでしょうか?

「失敗が多いよりは少ない方が良い」という気がしますし、何となくネガティブなイメージを持っているという方が多いと思います。
私もそうでした。

今日はそんな失敗に対するネガティブなイメージを変えてくれた1冊をご紹介します。

今日紹介させていただく作品は「弱虫ペダル」。
様々なメディアミックス展開が行われているため、ご存知の方も多いのではないかと思います。

この作品は自転車競技であるロードレースを舞台にしたスポーツ漫画。
主人公の小野田坂道はアニメやゲームを愛するオタクの少年。
そんな坂道が同級生に自転車レースを挑まれたことで、徐々に自転車の楽しさに目覚めていくという作品です。

この作品の凄まじいなと感じる部分は、なんといっても熱量。
自転車競技にあまり関心を持っていない人でも一瞬で引き込まれてしまう、レース中の熱い展開の連続です。
余談ですが、私は自転車に乗ることができません。
そんな私でも、一緒に風を切って走っているような感覚になれるスピード感のある作品。
凄く魅力的だと思いませんか?

そして次にご紹介したいのが、キャラクターの個性が驚くほど強い点。
一度見たら忘れられない強烈なインパクトを持つキャラクターが沢山いるのです。

例えばライバルキャラの御堂筋翔。
初登場からかなり周りに対して攻撃的な発言をし、なかなかの印象を残します。

それから主人公の先輩にあたる巻島祐介。
緑色の長髪と、左右に大きく体を揺らすダンシング走法はインパクトが強いです。

そんな個性豊かなキャラクター達に対して、初めはちょっと驚いてしまうのですが、徐々にそのキャラクターの過去も明らかになり、最終的にみんな応援したくなるというのもこの作品の良さだなと感じます。

そしてこのお話には沢山の熱い友情と、信念が登場します。
私が特に好きなお話は、弱虫ペダル10巻の第83話です。
このお話はスプリンターの田所先輩の過去について描かれているもので、今は3年生でスプリンターの中でも最強格の存在である田所先輩が、昔はレースで最下位を取っていたという場面から始まります。

田所先輩は最下位を取ってしまったことで1度は部活を辞めようと決意。
主将と監督に退部届を出しに行きますが、そこで主将に
「勝ちてーならやれ 負けていいならやめろ」
「勝ちてーのにやめる そんな選択肢はねぇ」と言われます。

そこから田所先輩はスプリンターとして毎日特訓の日々。
バテそうになり限界だと訴える田所に対し、主将は「限界かどうかはおめェが決めろ」
「決めるのは心だ ハートだ」
「どんな相手にも ハートでは絶対に負けるな」と伝えます。

その後また特訓を重ねる田所をみて主将は、

きっと田所はこれから何度も負ける。
けれどその負けを喰ってでも前に出て、初めて勝利した時に見える景色が変わる。
「負けを知らないスプリンターは絶対に強くならない」
と話すのです。

私はこの一連の場面のセリフにすごく胸を打たれました。
上手くいかなかったり悔しい思いをすることが続くと、自分なんてという思いが募ってしまいがちですが、失敗や負けを経験することで更に強くなれる。
そして、成功へ近づく足掛かりになるんだということを知ることができました。

「どんな相手にも ハートでは絶対に負けるな」
この言葉の持つ前向きさや、力強さもすごく好きです。
何事も結局最後の最後には自分の意志の強さが大切になってくると思うのです。
なので、この先も自分だけは絶対に自分自身のことを信じて、前向きに歩んでいきたいなと感じました。

この他にも色々な前向きになれるセリフや、勇気をもらえる言葉が沢山登場する作品です。
ぜひ、手に取ってみていただきたいです。

鈴原希実

<第13回に続く>

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