悪人を見破るのは難しい! 自分では騙されないと思っていても…/新装版 わたしが正義について語るなら⑤

暮らし

公開日:2024/6/16

新装版 わたしが正義について語るなら』(やなせたかし/ポプラ社)第5回【全5回】

正義とは何か、正義の味方とはどのような人なのか――。『アンパンマン』の作者・やなせたかしさんが自身の体験談を交えながら、正義への思いを綴った1冊です。戦争や自然災害、物価高…混迷の時代に生きる人々を勇気づける、やなせ流の人生哲学を『新装版 わたしが正義について語るなら』の中から抜粋してお届けします!

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新装版 わたしが正義について語るなら
『新装版 わたしが正義について語るなら』(やなせたかし/ポプラ社)

悪を見破るのって難しい

 ばいきんまんは悪役だけれど、ある面では愛嬌があるんです。よく変身して登場しますが、みなさんがご覧になると、一見してばいきんまんが変身していると分かるような変身の仕方なんだよね。

 例えばジャムおじさんに変身すると、一目でばいきんまんが変身していると分かるのに、みんなが「あ、ジャムおじさん」と騙されてしまう。なんで分からないのか、作者のぼくが何回見ても不思議なくらいです。

 アンパンマン側の人は人が良いのですね。そういうところが物語としての一種の面白さでもあるけれど、これは実は、現実の世界でも同じことがあるのです。

 現実の世界のばいきんは、生活の中にたくさんいます。ばいきんのせいで病気になることだってよくあります。誰だって病気にはなりたくないから、はじめから病気になると分かっているような、ばいきんがたくさんあるところへは誰も行きません。

 でも、ばいきんは、一目見てすぐには分からない。「しまった、あの時にうっかり」と思うような時に病気になります。

 ばいきんまんを登場させた時にそこまでの意味を考えていたのではないですが、現実もそうだということなのです。

 悪についてもうちょっと考えてみましょうか。悪いものは、いかにも悪い感じで現れるとは限りません。我々の社会は、なんであんなことで騙されるのだろうということで簡単に騙されるものなのです。

 偽の子どもになりすまして電話をして、その親からお金を騙しとる事件があったでしょう。自分は絶対にあんなものでは騙されないと思っていても、あっさり騙されてしまう。自分がその場に立つと理性を失ってしまうのですね。悪を見破るのは簡単なことではありません。

 騙すという行為は確かに良くないけれど、騙される側にも信じやすいとか、人が良すぎるとか、ややまずいところがある。だから詐欺罪は罪としては強盗傷害や殺人に比べると意外と軽いのです。だからあっていいかというと、あっては良くないんだけど。全員まっ正直というわけにもいかないというのが、この世の中なんだよね。

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