オススメの一冊
★読みたガールのオススメポイント
「恥の多い生涯を送って来ました。」衝撃的な一説から始まるこの作品に初めて出会ったのは高校二年生、思春期真っ只中の冬のことでした。世の中の全てのものに対し鋭角に物事を見ていた私にとって、葉蔵はまさに自分自身に思えてなりませんでした。この作品を読んでいるとまるで自分一人だけが太宰治の真の理解者であるような錯覚に陥り、魂が溶け合っているような感覚を覚えてしまうのです。大人になる、ということは狡くなるということ。あまりにも純粋無垢で臆病過ぎた主人公は、大人になることを罪だと感じ、生涯純粋な気持ちを持ち続け、魂の底から人間というものに対し愛を求め続けました。この姿こそ私達の誰もがもっている純粋な部分なのだと思います。目を背けたくなるような生々しい人間の姿をまざまざと見せつけられ、読者自身の生命力を奪ってしまうような強いエネルギーをもつこの作品は、人を惹きつけて離さない麻薬のような中毒性をもっています。