よく聞く「イノベーション」の意味は?【連載】第4回『経済発展の理論』がざっとわかる

ビジネス

2018/9/18

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「イノベーション」といえばシュンペーター!

 シュンペーターといえば「イノベーション理論」でおなじみの人物だ。彼の著書『経済発展の理論』では、その考えが余すところなく伝えられている。

 彼にとっては、外的環境の変化などより、イノベーションがもたらす劇的な変化こそが経済発展の主要因であり、資本主義の本質なのだ。

 シュンペーターにとっての「発展」とは「自発的な変化」、つまり経済が、自分自身の内部から“創造”するものだ。

 たとえば途上国が先進国に植民地支配され、そのせいで天然ゴムの生産量が急増し、その結果GDPが増えたとするならば、それはシュンペーターの言う発展ではない。外部からの衝撃で動かされた受動的な経済成長は、単に「環境の変化に巻き込まれただけ」だ。人口増加や富の増加など、外的要因による経済成長も同じ。発展の「条件」にはなるが、発展そのものではない。

 普通の経済循環を「静態」とするならば、シュンペーターのいう発展は「動態」だ。静態とは生産や消費が常に同じ規模で循環している状態、動態はそれらが変化する状態だ。

 つまりシュンペーターの言う発展・動態とは、通常の経済循環からの“軌道変更”であり、均衡に向かう運動ではなく“均衡状態そのものの推移”であり、国民経済が今までの重心から別の重心へと移る“転換”の理論なのだ。

iPhoneがイノベーションである理由

 その変化は「ある日突然生まれる」。この「非連続的な変化」というのも、シュンペーターのイノベーションの特徴だ。つまりイノベーションは、従来のやり方を続けていても起こらない。従来のやり方は「連続的な変化」であり、連続的な変化はしょせん「均衡的静態」にすぎないからだ。そこでは、資本主義の「動態」( ダイナミズム) はあり得ない。

 結局イノベーションは、従来の発想にはないまったく新しい発想の下にしか起こり得ない。ならばそれは「突発的なもの」ということになる。

 そしてその自発的で非連続的な変化は、「企業者」によってもたらされる。企業者とはイノベーションの遂行者、担い手だ。

 言われてみれば消費者サイドから、従来の静態を崩すほどの画期的な「新しい欲望」が生まれることなどほとんどない。たいがいの場合、生産者サイドから「新しい欲望が教え込まれる」形で生まれてくる。

 たとえば、2007年から販売が開始されたiPhoneが便利なことは、今となっては誰もが知っている。だが、1997年ぐらいに「あーあ、タッチパネル式の携帯情報端末が欲しいな」なんて思っていた消費者は、誰もいない。思いつかないからだ。結局あれはアップル社という企業が、消費者に新たな欲望を教え込んだ結果としてのヒット商品ということになる。

〈プロフィール〉
蔭山克秀●早稲田大学政治経済学部経済学科卒。代々木ゼミナール公民科講師として、「現代社会」「政治・経済」「倫理」を指導。最新時事や重要用語を網羅したビジュアルな板書と、「政治」「経済」の複雑なメカニズムに関する本格的かつ易しい説明により、「先生の授業だけは別次元」という至高の評価を受けている。