『週刊ツリメ』「卓球の福原愛ちゃんが引退して悲しいなう。」/【第35回】

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更新日:2018/10/26

 約10年前、ランドセルを背負っていた頃から卓球の福原愛さんは知っていた。その時はまだ家にブラウン管のテレビが置いてあった。夕飯の時間になると、たまあに「サァー!」って高い声がスピーカーから聞こえる。

 その可愛らしい声が聞こえるのは、おばあちゃんが卓球の試合を観戦している時間だ。卓球ボールがフィールドの外に出ると「あ〜」って残念なため息を出す。一度も卓球はやってこなかった筈なのに、観ているのが不思議でしょうがない。ご飯に向かう手が止まり僕もテレビに釘付けになっていたこともあった。夢中になっていると横から母親が現れて「早く食べなさい!」と叱ってきた事もあった。

 僕も学校の体育の授業でやったくらいで、ルールもよく分かってない。それでもずっと観てた記憶が微かにある。僕は22歳なんだけど、23歳以上の人達の方が知っている人が多そうだ。幼稚園児の頃から強く、日本の卓球界の先頭を走ってきた。そしてあの笑顔と負けて泣く姿は、主人公でしかない。

 彼女は幼い頃からテレビカメラに密着されながら生きてきた。日本だとそんな人は、愛ちゃんくらいしか居ないんじゃないかな?国外だとイギリス王室の人も大変だ。生まれた瞬間に話題になってカメラで撮られるんだから。赤ちゃんの頃からストレスで禿げそうだ。

 まぁ愛ちゃんはそのくらい稀な生き方をしている。そう考えるとアバンティーズも稀と言っていいのか、むしろ馬鹿な生活をしてきた。2011年というまだYouTuberって言葉が無い時代に動画投稿をしてたんだ。

 投稿を始めた頃は中学生だったから幼くはないが、僕達にも知らぬ間にカメラが密着してたんだと気付いた。いや、そう思ったのもこのエッセイを書いている最中だ。

 そんなプライベートな部分を撮ってきた訳ではない。「俺ってこんな感じだったっけ?」とか「昔は痩せてたなぁ」って今までの動画見返すと懐かしんだりもする。さらにある動画の概要欄に記してある投稿日を見ると、その時期の記憶が再生される事もある。ところが途中で停止するんだ。いつも途切れてしまう。どうやら僕の脳味噌は回線が悪いみたいだ。笑

 視聴者にこの感覚が伝わるかは不明だが、例えるならば卒業アルバムだ。写真を見返す事によって学ランを着てた自分が出てくる。また客観的に見えたりして「あの時こっちの選択をしてれば振られなかったのかな」なんて後悔もできる。そこから負の連鎖が起こり、いつもネガテイブなモードに入ってしまう。

 自分自身の物語を遡る事が簡単に出来る世の中になってきた。これは読者にも言える事だ。ツイッター、インスタで写真を投稿するでしょ?もしかするとその右手に持ってる携帯はビデオカメラみたいなもんで、自分のドキュメンタリー映像を自然と作ってるのかも知れない。それが幸せを思い出させてくれるのか、もしくは呼び起こしたくない記憶になってしまうか。

 ただ最近の人ってすぐ投稿した写真を消したがるでしょ?良い思い出だけを残そうとする。しかし悪い写真を消しても無くなるのはデータだけ。いっそ元カレ、元カノの写真は残した方が気分は楽なんじゃないかな。それはそれで側から見たら気持ち悪いか。やっぱ削除するのが正解か。

 そして始まりがあれば終わりがある。福原愛さんが現役を引退するとニュースを観て知ったんだ。別に親戚ではないのに悲しくなった。実家に住んでいるおばあちゃんもたまげてるだろう。凄いハマって読んでいた漫画が終わった様な気分だ。この話をしたくて地元に帰りたくなってきた。

◆執筆者プロフィール
ツリメ(byアバンティーズ)
YouTuberプロダクション・UUUM(ウーム)株式会社所属。埼玉県出身の現役大学生でもあり、年齢は21歳。90万人のチャンネル登録者を抱える人気グループ「アバンティーズ」の一員として活躍しているが、じつはYouTuberを続けるか就職するかで悩んでいる(というかそもそも卒業できるのかアヤシイ)。絵心はないがイラストを描くのが趣味で、メンバーからは「画伯」と呼ばれている。

ツイッター:@turime1996
インスタグラム:turime1996
アバンティーズ:Youtube

執筆者プロフィール
ツリメ(byアバンティーズ)
埼玉県出身、年齢は23歳。チャンネル登録者数160万人超の人気グループ「アバンティーズ」のメンバー。
絵心はないがイラストを描くのが趣味で、メンバーからは「画伯」と呼ばれている。
ツイッター:@turime1996
インスタグラム:turime1996
アバンティーズ:YouTube