藤本さきこの本喰族!!「孕む」をキーワードに選んだ1冊『〈妊婦〉アート論 孕む身体を奪取する』山崎明子、藤木直実 /連載第3回

文芸・カルチャー

2019/5/12

 私にとって本は、食べて吸収し細胞にするもの。

 食べることと同じくらいを作っていく。

 食物が肉体のエネルギーを作るなら、書物は魂のエネルギーをつくる。

 ひとつだけ違うことは、魂には「お腹いっぱい」という感覚がないこと。

 お腹いっぱいにするために読むのではないのだ。

 この連載「本喰族」では、読んだ本の中から頭に残っている「言葉」から次の本をリレー形式で検索し、魂がピンときた本をどんどん喰っていきたいと思います♡

『〈妊婦〉アート論 孕む身体を奪取する』山崎明子、藤木直実

 「孕む」というキーワードで検索していたらこの本が目に留まった。

 以前、他の本でラブドール(ダッチワイフ)のお腹を膨らませ、妊婦に見立てた「ラブドールは胎児の夢を見るか?」という、美術作家・菅実花さんのアート作品を見かけたことがあった。「妊婦」ではなく、「妊婦イメージ」を研究する8名の論集で、様々な角度から「妊婦というイメージ」について考察している。

 【孕む身体表象ーその身体は誰のものなのか?】をテーマに、ラブドールを通じたアンドロイド、 マタニティフォト、妊娠に関する小説の歴史、リカちゃんなどの女児用人形、見世物と医学と美術のはざまにある胎盤人形、日本美術で描かれてきた妊婦、そして胎盤などをモチーフにしたアートなどから、その奥にある「妊婦に求められたイメージ」を探る。

 私自身、こうした一般にある「理想の妊娠・出産イメージ」「理想の妊婦イメージ」を勝手に背負い、悩んだことがある。

 2人目は初めて未婚で産んだので、こうした小説や美術の題材になってきた「祝福されない妊娠」を勝手に当てはめて、悲劇のヒロインになってしまった。とにかく悲壮感でいっぱいだった。3人目を、2人目と同じく未婚で身ごもった時に、当たり前に感じているこの「祝福されないイメージ」を初めて疑った。

堂々と「幸せそう」に出来ない妊娠。
堂々と世間に公表できない妊娠。

 確かにその時、この本と同じテーマの疑問が湧いたことを記憶している。

「この身体は誰のものなのか?」
「このイメージは誰のものなのか?」

 誰が私の「幸せ」「不幸」のイメージを決めるのか? それは自分で選べないものなのか?そもそも、なぜ妊娠とは「喜び・祝福・幸せいっぱい」でなければならないのか?

 4人目からは、「孕む身体を奪取」した。
「誰かの目」から、「世間の目」から、「自分自身の幻の目」から、奪取した。

 この本にあるように、歴史の中で長年語り継がれてきた「聖母」や「理想の母」に囚われている所は大いにあると思う。しかし、やっぱりまず、女が「本当の幸せな妊娠」を得るには自分自身が、自分自身を奪取しなければならない。

「私の幸せ、私次第」だと。

 次回はこの本の中から気になったキーワード『フランケンシュタイン』で、“美味しそうな”本を探します!

文=藤本さきこ

第4回に続く