宮沢賢治がいかがわしい本を見つけられた時の言い訳/『文豪どうかしてる逸話集』②

文芸・カルチャー

公開日:2019/11/10

ベジタリアンになろうとした宮沢賢治、「今日も誘惑に負けてしまいました」報告を友人に送りつける。

 18歳の時に法華経の説話を読んで深い感銘を受けて以来、熱心に法華経を信仰していた宮沢賢治は「動物食べるのつらい。動物食べるのかわいそう」と思うようになった。

 そして、21歳の時に友人に宛てた手紙で「今年の春から動物食べるのやめます!」とベジタリアン宣言。

『ビジテリアン大祭』と題した童話まで書いた賢治は、それから5年間菜食生活を続けたが、ついつい肉食の誘惑に負けてしまい「今日私はマグロを数切れ食べてしまいました」とか「今日は豚肉と茶碗蒸しを食べました」とか、「今日は塩鱈(しおだら)の干物を(以下略)」など、特に送る必要もない「今日も誘惑に負けてしまいました」報告を友人に送り続けた。

(出典) 保阪嘉内への書簡
関徳弥への書簡

宮沢賢治がいかがわしい本を見つけられた…! その時彼は

 宮沢賢治は友人に「性欲はね、人をダメにするよ! 仕事の邪魔!」とか言うくせに、実は春画のコレクターで、積めば高さ30センチメートルになるほど集めていた。

 さらに、その過激な内容ゆえ原書が発行されたイギリスでは発売禁止処分となった『性の心理』という翻訳本をなんとか入手し、伏せ字になっていた部分が気になりすぎて、わざわざ仙台の本屋まで行って原書を読んで確かめる、という熱心ぶり。

 この本を友人に見つかった賢治は、

「いや違うし! 子供たちが間違いを起こさないように教えたいと思って買っただけだし!」
「こんなの大人の童話みたいなもので、全然たいしたことないし!」
「てか、誰かを傷つけるわけでもないし! 別に悪いことしてないし!」

 と、ひたすら中学生みたいな言い訳をした。

<第3回は夏目漱石です!>