カメを人間にすると甲羅はあばら骨だった…/『カメの甲羅はあばら骨』①

スポーツ・科学

公開日:2020/1/25

もし人間の骨格の一部が動物のものだったら…

「えっ! カメの甲羅って人間のあばらなの? 」
「フラミンゴの逆に曲がった膝の部分は人間でいう足首!? 」

図鑑や動物園の解説でなんとなく知ってはいるけど、いまいちピンとこない動物の体のしくみ。そんな動物の体の構造を、私たちヒトのからだを無理やり変形させることで、わかりやすくしてみました。

『カメの甲羅はあばら骨 ~人体で表す動物図鑑~』(川崎悟司/SBクリエイティブ)

カメ 爬虫類・両生類

 私たち人間の胸部には心臓や肺などをカゴのように囲む肋骨(ろっこつ)(あばら骨)がありますが、カメはこれを変形させて、心臓や肺などの重要な臓器だけでなく、緊急時には頭から足まで体全部を包み込めるほど大きく発達させています。

型破りな骨格構造

 カメの甲羅は肋骨(あばら骨)と背骨がくっついて、板のようになったもので、これを「骨甲板(こっこうばん)」といいます。その表面をコーティングするように薄い板状になった鱗が覆っていて、これを「角質甲板(かくしつこうばん)」といいます。カメの甲羅はこの骨甲板と角質甲板の2層構造になっています。甲羅には継ぎ目があるため、継ぎ目に強い衝撃を与えると割れてしまいそうですが、骨甲板と角質甲板はそれぞれの継ぎ目が違うため、割れる心配はなく、甲羅の強度が高くなっています。【図①】

 カメはそのほとんどが骨でつくられた装甲を持ちますが、これは他の動物には見られない構造です。カメと同じく硬い装甲を持つ動物にはワニやアルマジロなどがいます。しかし、ワニやアルマジロなどの装甲は皮膚の中から発生した皮骨(ひこつ)でできてており、骨とは別物でカメの甲羅とは根本的に異なるものです。【図②】

 また、カメの甲羅は肋骨が変形してできたものですが、私たちの体は肋骨の外側に肩甲骨があり、これは他の動物も同じです。しかし、カメは肋骨が甲羅となっているため、肋骨の外側に肩甲骨は見当たりません。

 実はカメは甲羅の中に肩甲骨を持っています。つまり、肋骨の内側に肩甲骨があるという他の動物とは逆の骨格構造をしているのです。【図③】

独特な肋骨と肩甲骨

 なぜ、肋骨(甲羅)の内側に肩甲骨があるという他の動物には見られない骨格構造をしているのでしょうか。理化学研究所でハツカネズミの胎児とニワトリやカメの卵の中の胎児が成長する過程を比較した研究がされました。最初はニワトリ、ハツカネズミとおなじように、カメの胎児は肋骨の外側に肩甲骨がありましたが、後にカメの胎児だけは、肩甲骨が肋骨の内側に移動し、肋骨が甲羅に変化していたことが観測されました。どうやらカメの進化の特徴は独特な肋骨の伸び方にあるようです。普通、肋骨は背中側にある背骨から胸や腹側のほうへ曲がりながら伸びています。しかしカメは、進化の過程で肋骨は横方向へ伸びていき、肩甲骨は肋骨の下側に位置するようになっていったようです。【図①】

 それを裏付けるカメの化石も発見されています。2008年11月に約2億2000万年前に生息していたと見られるオドントケリスという原始的なカメの化石が発表されました。【図②】

 このカメは背甲(はいこう)(背中側の甲羅)が不完全で、腹側のみ甲羅があるという変わった姿をしていましたが、背中側の肋骨は横方向に伸びて、甲羅を形づくる兆候をみせていました。そして肩甲骨は肋骨の前方に位置していました。おそらく、のちに進化したカメはその肋骨が扇状(おうぎじょう)に広がり、前方にあった肩甲骨に覆いかぶさるように甲羅を形成したものと考えられています。

<第2回に続く>