ガスを止めるより身の安全確保を! 覚えておきたい3つの知識/『地震イツモマニュアル』⑥

暮らし

更新日:2020/8/31

特別なことはしなくていい、「イツモの暮らし」が備えになる。ベストセラー『地震イツモノート』の実践版。

『地震イツモマニュアル』(地震イツモプロジェクト:編、 寄藤文平:絵、NPO法人プラス・アーツ:監修/ポプラ社)

ガス、消しに行かなくていいんです。今覚えておきたい三つの知識。

お話をきいた人
東京ガス株式会社 防災・供給部/広報部

 地震のときはまずガスを消す。昔、そう教えられた記憶はないでしょうか。

「今、ガスは自動的に止まります。まずご自身の安全を確保して下さい」

 東京ガスによると、阪神・淡路大震災以降、ガス業界は地震対策を強化してきました。ガス管の耐震化の促進、早い復旧を目指す協カ・支援体制、そしてもっとも大きいのが各家庭への「マイコンメーター(ガスメーター)」の完備です。

「震度5程度以上の揺れを感知すると、自動的にガスを止める安全機能を持っています。異常を感知すると、ガスの供給自体が止まるので安全。全国の都市ガスで義務化されており、計量法による10年に一度の取り替えで、精度の低下も防がれています。東日本大震災では、ガスによる二次被害はゼロでした」

 ガスに関しては、災害発生時に心配すべきなのはもはや「消すこと」ではない。大切なのは、「復旧方法」だと東京ガスは言います。

「ガスの復旧で、覚えておいていただきたいことが二つあります。まず、各ご家庭のマイコンメーターで止まっている場合は、ご家庭で復帰できます。また、ガス導管へ被害を及ぼすような強い揺れを感知すると、地区ガバナ(地区ごとに設置された圧力調整器)が自動停止して、地域でガス供給を停止。東京ガスではIT化された管理システムですみやかに被害を特定、被害がないエリアは遠隔操作で供給を再開します」

 しかしガス管に被害があると、作業員による現地での作業や、全戸の安全確認が必要になるため、首都直下地震の復旧には相応の期間がかかると想定されています。

 復旧の早期化のために、ガス会社は日夜努力を重ねています。しかし話を聞いていくと、それを妨げる要因のひとつが私たちの行動にあることがわかりました。

「災害発生時は、ガス漏れの通報を最優先に対応したい。しかし、地震直後は『ガスが止まったがどうすればいいか』という問い合わせの電話がとても多く、その対応に追われてしまう可能性があります」

 東日本大震災の時に、東京ガスが受け付けたマイコンメーターに関する問い合わせの電話はなんと、約22万本。地道な周知活動により、この件数を減らしていく取り組みをしている、とのことです。

 おさらいすると、地震がきたら、まず身の安全の確保。その後、まず自分で復帰操作。それでだめなら、地区ガバナが停止している可能性があるので、供給・再開状況をテレビ・ラジオ、ホームページで確認しましょう。

<第7回に続く>