「デジタル誘拐」や性的被害まで…SNSに載せた我が子の写真がもたらす悲劇/『あなたのスマホがとにかく危ない』⑥

暮らし

2020/3/22

スマホ・SNSの犯罪はどんどん巧妙になり、デジタルに不慣れな人であっても無知ではいられない時代となりました。ではどうすればよいのか――。元埼玉県警捜査一課 デジタル捜査班班長が、スマホ・SNS、デジタル犯罪から身を守る方法をお伝えします。

『あなたのスマホがとにかく危ない~元捜査一課が教える SNS、デジタル犯罪から身を守る方法~』(佐々木成三/祥伝社)

〇「子どもの写真」のアップで「デジタル誘拐」発生

 数年前、ある野球強豪校の部員たちが最後の夏の大事な試合に負けた後、寮で泣きながらみんなで歌い、上半身裸で抱き合う動画をSNSに投稿したところ、いまだに拡散を続けています。

 運動系の部活経験者にとってはよくある感動の一場面ですが、見る人によっては涙で抱き合う若い青年の肉体美は、大変なお宝動画と映ったようです。

 まさに完全に消すことのできない「デジタルタトゥー」となってしまった例です。

 写真や動画などの情報は、投稿者の思いとはまるで違う受け止め方をされる場合があります。その意味で親世代がSNSを利用する際、より一層の注意を払うべきは幼い子どもの写真を投稿することです。

 

「わが子のかわいい姿を多くの人に見てほしい」
「日々成長する姿を日記代わりに記録しておきたい」

 SNSにはそんな理由から、幼い子どもの写真がたくさん投稿されています。

 しかし、世の中には幼い子どもに特別な感情を抱く人たちがいるのも事実です。

 女子学生へのSNS犯罪がクローズアップされるいま、そちらへの警戒意識を持つ方は増えつつありますが、幼いわが子の写真の無警戒なアップは、いまだにFacebook、Instagramでよく見られます。

 そうした投稿には、

①親や子どもの個人情報が特定されてしまう
②他人が子どもの親になりすます「デジタル誘拐」に遭う
③幼児性愛者の画像コレクションにされる
④幼児ポルノのサイトに無断転載される
⑤ストーカー被害に遭う
⑥誘拐される
⑦親への嫉妬や恨みのはけ口に利用される

 というようなリスクが潜んでいることを意識すべきです。

 

 ①の個人情報については、前にもお伝えした通り、顔にスタンプを入れようが名前を隠そうが、さまざまな情報が写り込んでいる可能性があります。

 完璧と思っていても、思わぬところから親や子どもの名前、通っている幼稚園や保育園、学校などが特定されてしまう恐れがあるのです。

 ②については、赤の他人がネット上にある子どもの写真を、勝手に自分の子どもと偽ってSNSなどに投稿することを「デジタル誘拐」といいます。

「デジタル誘拐犯」の目的は、かわいい子どもの写真を投稿することで「かわいい」のコメントや「いいね!」をたくさんもらうことです。

 しかし、このデジタル誘拐犯がもし何かの罪を犯したり、炎上したりすると、実際には赤の他人であるにもかかわらず、デジタル誘拐された子どもが、その誘拐犯の実の子どもとしてネットで晒される恐れがあります。

 

 また、幼児性愛者は世界中にいます。一度写真を投稿すれば、コレクションにされたり、幼児ポルノのサイトに転載されるなど、③④の被害を受けて世界中に拡散してしまう恐れがあります。

 しかも、そうした性癖の人物に自宅や通園先などを特定されると、⑤のようにつけまわされたり、性的な被害に遭う可能性もあり、親がセレブな印象のSNSをしていれば、⑥のように子どもが身代金目的の誘拐のターゲットにされかねません。

 加えて言えば、人間誰しもいつどこで誰の恨みを買うかわからないものです。

 たとえば有名小学校へのお受験に失敗した親が、投稿写真の子どもがその学校に通っていることを知れば、⑦のように妬みから裏口入学の話をでっちあげて誹謗中傷したり、ポルノサイトに転載したり、卑猥なコラージュ画像を作成してネットにばらまくなどの嫌がらせをしないとも限らないわけです。

 

 では、こうしたSNSへの子どもの写真投稿に潜むリスクを避けるにはどうすればいいのでしょうか。

 一番の対策は、子どもの写真をネットにアップしないことです。SNSに投稿しない。そうすれば、これらのリスクは避けることができます。

 

 どうしても投稿したい場合は二つの点に注意することです。

 一つは、子どもの顔を隠すのはもちろん、サイズや画質を落としたり背景をぼかすなどして、個人の特定につながる可能性のある情報が写り込んでいたとしても見えないようにすること。友人知人の子どもの写真を投稿する際にも同様の配慮が必要です。

 もう一つは、公開範囲を信頼できる友達までに制限すること。この前提として、実際に会ったことのある友人知人以外は、友達の許可をしないことも大事です。それでも流出する可能性はありますが、無制限で投稿するよりはずっとリスクが減ります。

 

 いずれにしろ一度ネットに拡散してしまった写真は、すべて削除するのは不可能です。子どもが大きくなったとき、自分の幼い頃の写真がネットのいかがわしいサイトなどにあるのを知ったら、どれだけ傷つき、悲しい思いをするでしょうか。

 SNSに子どもの写真を投稿する際は、デジタルタトゥーの悲劇を一生わが子に背負わせることのないように、くれぐれも注意してください。

続きは本書でお楽しみください。

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