“デジタルツール”と“アナログな小さいノート”の合わせ技! 組み合わせればもっと便利に/『時間をもっと大切にするための小さいノート活用術 』⑩

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更新日:2020/5/8

ウェブマガジン『毎日、文房具。』編集長・髙橋拓也がおすすめする世界で1番“気楽な”ノート術。スマホのように開く。そうすれば、煩雑な毎日が整理され、新たな可能性が見えてくる。小さいノートを味方につけて、“あなたの時間”を取り戻そう!

『時間をもっと大切にするための小さいノート活用術』(髙橋拓也/玄光社)

10 デジタルツールと組み合わせる

 私はアナログが好きな人間です。

 だからこそ、手書きでその時のテンションや想いを込められる紙のノートが好きなのですが、小さいノートさえあればすべてがうまく回るとは思っていません。むしろ、スマホやパソコンなどのデジタルツールにも大いに助けられています。小さいノート単体もいいけど、デジタルと組み合わせると便利なことがたくさんあります

 スマホやパソコンと、小さいノートの両方の長所を組み合わせてみましょう。例えば、台湾に旅行に行く計画を立てていた時のこと。まず小さいノートを開いて、金土日あるいは土日月、どちらのパターンで有給休暇を取るか考えてみます。そして、ルートの検討。これはスマホで検索します。JALやANAだと、本数も多くてやはり便利。けれどもできるだけ安く行きたいから、LCCも数社比較してみる。その検索した結果を、逐一小さいノートに書き出します。あれ、もしかしたら羽田から台湾まで直接飛ばずに、国内で乗り継ぐというコースもありなのかな。少々時間はロスしても驚くほど安く行けるぞ……。思ってもみなかった選択が見えてきます。

 スマホを使った検索は、ひとつの目的に対して迅速に最適解を導いてくれます。しかしバリエーションを調べようとした時に、検索エンジンが違えばその結果をためておくことができず、並べて比較検討することができません。また、その最適解はプログラミングされた効率性・合理性というフィルターを通して得られたもの。言い換えてみれば、顔の見えない大多数の人にとっての最適解ということです。そうなると、大多数の人は必要としないかもしれないけれども、自分にとっては有益な何かが取り残されているかもしれない。

 だからこそ、紙の上に落としていく必要があるのです。紙の上なら、スケジュールの組み替えも簡単です。スマホで検索した情報を、さらに選りすぐって精度を高めることで、自分にとっての最適解を得ることができるのです。

 同じくスマホが残せないことに、「思考」もあります。フライトの時間をスマホで調べているうちに、フライト前後なら、こんなイベントを挟むことも可能だなど、いろいろアイデアも生まれてきます。検索ついでのネットサーフィンで、行ってみたいお店がふと目につくということもあるでしょう。思いついたアイデアは、ノートに羅列したフライト情報の傍に書き加えておきます。検索を終えた時には、おまけのようなメモの存在で単なる移動手段が、別の目的もプラスできるような有意義なものになります。この「思考」を残すことで新しいチャレンジや遊び心など自分の満足度を上げる選択肢が広がるのです。

 国内での乗換案内と、小さいノートの相性も抜群です。とある目的地に行くまでに、スマホでルートをいくつか検討します。スマホの画面では検索結果を並べて比較検討するには限界があるので、小さいノートに書き留めます。

 そうすると、単なるルート検索でも、いろいろなことが見えてきます。このルートは乗車時間が長いから車内で読む本をあらかじめ1冊を選んでおこうとか、このルートで示されている乗り換え駅は、駅ナカのショップが充実しているから、1~2本早く乗って買い物の時間を作ろうかなど、プラスアルファの楽しみが見えてきます。検索ルートのシステムは、あくまで最短経路を弾き出すことなので、それを小さいノートに落としてアレンジすることで、無味乾燥になりがちな移動時間に、自分の楽しみを加えることができるのです

 移動時間にワクワクが増えれば、移動に半日を費やすような場所でも残念な気持ちになることが防げます。移動経路を見直して乗り換え付近に興味のあるものを探すとか、指定券を買って企画書を1本作ってしまおうなど。半日という大きな時間をやりたかったことに費やせるのは実に効率的ですし、何よりその時間を過ごす気分が違います。


 このように「早い・ラク」だけが移動の優先事項ではないことを、小さいノートは教えてくれます。アナログのよさは、デジタルに比べて手間はかかるかもしれないけれども、本当に自分がやりたいことを映し鏡のように表してくれるところにあると思うのです。デジタルで導かれた効率的な結果だけでは得られないものを、小さいノートで広げて楽しみを見出す。より多様で、より豊かな選択がそこには広がっているのです。

 もちろんデジタルだからこそできるということも、たくさんあります。

 iPhoneのリマインダーなどはその最たるもので、場所と紐づけてタスク通知をしてくれるので、私は大いに重宝しています。例えばスーパーに近づいたら通知機能が作動するので、買い物を忘れることもありません。もし忘れたままで帰宅したあとに思い出したら気分が悪いし、ものによってはまたひとっぱしりスーパーまで戻らなければならないこともあるので、日々助けられています。

 お金の管理もデジタルが得意とするところです。私は「マネーフォワード ME」という管理ツールを使っているのですが、アプリを開いた瞬間に、今、どのくらいお金が貯まっているかが瞬時にわかります。ただし月単位でどのくらいお金が動いているかは見えにくい。私は資産管理にも小さいノートを活用しているので、毎月末に、「マネーフォワード ME」の数字を小さいノートに落として、推移がわかるようにしています。

 現在はスマホでスケジュール管理を一元化している人も多いと思いますが、そこからこぼれ落ちていることって、たくさんあると思うのです。しかしそれが1日だけでなく1週間、1カ月、1年積み重なると、相当な時間になる。その時間を有効に、また楽しいことに使おうというのが、小さいノートを通じて私が提案したいことです。

 小さいノート自体は、強力なツールとは呼べないかもしれません。あくまでスマホやパソコン、システム手帳といった、すでに定着しているツールや、会社・家族・友人など自分を取り巻く人間関係をつなぐデバイスのようなものだともいえます。しかしその小さなデバイスを中心に据えることで、タスクの振り分け、よりよい方向性を考えること、やりたい想いをかたちにすることができるのです。ひとつの目的に対して、瞬時に答えを導いてくれるデジタル。時間はかかるかもしれないけれども、楽しみを膨らませてくれるアナログ。どちらかに依存せず、うまく組み合わせることで、より充実した時間を得ることができるのです。

続きは本書でお楽しみください。