「未来を変えよう」と努力をしても… 不幸な未来が現実になるのはなぜ/『憂うつデトックス』④

暮らし

公開日:2020/5/11

“自粛”続きで心が疲れてしまった。嫌な状況が長く続くと延々と終わらないように思い、最悪の事態を想像してしまう――。そんな人も多いのではないでしょうか。いつも最悪の事態を想像して行動していると「心の準備」をしている気がしますが、実際には心を余計にすり減らしているだけ。こんな状況だからこそ、憂うつな気分から自分を解放して「今を生きる」方法を学びましょう。

『憂うつデトックス ‐ 「未来の不幸な自分」が幸せになる方法 ‐』(大嶋信頼/ワニブックス)

1-4 未来が見えると選択肢がなくなる

対応しようとしても斜め上を行かれる

 未来が見えてしまうと「どんどん選択肢がなくなってしまう」という現象が起きます。普通の人だったら「未来が見えているのなら、選択肢が増えるはずでしょ!」と前向きに考えられます。なぜなら、不幸な未来を見てしまって、それが現実になる、という体験をしたことがないから。

 私は学生の頃、「今度のテストはクラスで一番悪い点数をとって最悪な気分になってしまう」という未来を見ていました。答案用紙が返ってきた時に「がびーん!」とショックを受けて顔面蒼白になっている場面です。

「そうならないように勉強しよう」と思うのですが「勉強をしようとすると必ず邪魔が入る」という未来も見えています。これから一生懸命に勉強しようと思っている時に、母親から「買い物に行ってきて!」と頼まれる。「今、勉強をしようとしていたのに!」と言うと「そんなこと言ったって、あんたなんてこれまでちっとも集中して勉強をしたことがなかったじゃないの!」と怒鳴りつけられて、気分が下がり勉強ができなくなる、という未来。

 実際に起きたことは、見えていた未来とはちょっと違ったのですが、やはり母親からの邪魔が入って「やっぱり邪魔をされて勉強をする気がなくなった!」ということが起きました。

 そうなんです、予測しているから、必ずそれに対して対応できるようにも考えているのですが、必ず相手は想定していたことよりも斜め上を行きます。「勉強している」とは言わないでおこうと思っても、母親からは今度は「何をだらだら勉強をしてるふりをしているんだ! ちっとも集中してないじゃないか!」と言われて、見えていた未来の通りにやる気を失う。そして、そんな未来も予測できるから「何をやっても無駄」という感じで選択肢がなくなっていきます。

 またある時は、クラスの中でいじめられていて「いじめっ子から何かを言われる」ということが未来で見えている。心の中で「おまえはバカで間抜けで誰からも相手にされない!」と囃し立てられたら「無視しよう」と心に決めます。でも、無視をしたら「いじめっ子が後ろから背中を突き飛ばしてきてころばされて泣かされる」という最悪の未来が見えてくる。暴力に訴えられたら、ひ弱な自分には何も対処ができない、となってしまう。自分には選択肢がない。

「だったら体を鍛えればいいじゃない!」と普通の人は言うのですが「すぐに疲れてしまって、何をやっても三日坊主」という未来が見えているから「自分には体を鍛えることなんかできない!」と最初からあきらめているように思われる。いや、すぐに疲れてしまうんだと思いながらも、実際にやってみて「やっぱりダメだ」となる根性なしの自分は、自分が見ていた未来のままの姿。

 未来が見えれば見えるほど、どんどん選択肢がなくなって「見えている未来に抵抗することができない」と憂うつな気分になってしまうんです。

やがて努力することができなくなる

 実家暮らしで「親からちっとも自由になれない」と悩んでいらっしゃった方に対して、周りの人たちは「だったら安いアパートを借りて家から出ちゃえばいいじゃない!」と言うわけです。

 しかしその方には「自分が一人暮らしをしたら、自分が体調を崩すか、両親の健康状態に問題が起きちゃって、自分がまた実家に戻らなければならなくなる」という未来が見えています。周りの人は「そんなの居心地がいい実家から出ないための言い訳だよ!」とか「そんなことを言っていたらいつまでたっても自立できないじゃない!」と勝手なことを言います。そして試しに家から出てみると「母親が転んで骨折をした!」と、家に戻って食事の用意をすることになり、そうしているうちに自分が体調を崩して「やっぱり一人暮らしは無理だ」と実家に戻って「ほら! 見ていた未来の通りになった!」となるんです。

 その方は「両親が体調を崩しても自分は実家には戻りません!」と心に固く決心して出て行ったんです。けれども、親戚からジャンジャン電話がかかってきて「なんて親不幸なんだ」と責められるから「戻らなければならなくなった」という未来を見ており、実際に親戚の電話で見事に決心が打ち砕かれて、「本当にそうなった!」と実家へと引き戻されてしまいます。

 憂うつな気分で一度見てしまった未来は「それに対して対応しよう」と努力しても、相手は斜め上をいき「やっぱり選択肢がない!」と、どんどん望まない未来から自由になることができなくなってしまうんです。

 もちろん憂うつな人も「未来を変えよう」と努力をたくさんしてきているのですが「未来は斜め上を行く」という感じで、努力しても「結果は同じ」を繰り返しているから、やがて努力することすらできなくなり、見ている未来をそのまま受け止めるしかなくなってしまうんです。「もしかしたらそうならないかもしれない」という淡い期待を持ちながら。

<第5回に続く>