副業を始めるなら… 稼げるのは「好きなことをする」「好きなことをしない」どっち?/新・お金が貯まるのは、どっち!?⑧

暮らし

公開日:2020/6/6

「一生お金に困らない生活を送りたい、でも現実的に考えて無理」と諦めている人へ――。お金を貸す側・借りる側、両方の視点を持った著者が教える“一生お金に困らない方法”。こんな時だからこそ、お金のことを勉強して少しでも賢く暮らしてみませんか?

『一生お金に困らない! 新・お金が貯まるのは、どっち!?』(菅井敏之/アスコム)

質問8 副業を始めるなら、「好きなことをする」、「好きなことをしない」、どっち?

 仕事をリタイアしたら、それまで名の知れた大企業にいたとしても、名刺も肩書きもない「ただの人」になってしまいます。あり余る時間を過ごすことになります。

 家にいても、やることがない。外に出ても、とくに行きたいところがない。

 それでも奥さんの手前、家でゴロゴロしているわけにもいかない。外出しなければと美術館や映画館に行き、カラオケやカフェですごす。最初のうちは楽しいが、しだいに飽きてくる。いつも消費者でしかなく、お金が出ていく一方なのもつまらない。

 結局、家に帰って、パソコンかテレビの前で長時間すごす。

 これ、じつは不動産収入を得るようになり、銀行を早期退職した直後の私です。

 もう10年前近くなるでしょうか。50歳くらいでした。

 サラリーマンをリタイアして都会で暮らす男性の多くも、こんな感じかもしれません。「毎日が日曜日」を体験していえることは、ただひとつ。

 たいして、うれしいことではない。

 当時の私は毎日ずっと、自分は何をしているときがいちばん楽しいのだろう、と考えていました。出した答えが「稼いでいるとき」です。

 そこで2012年、いまさら宮仕えは嫌だと思い、東京・田園調布の商店街にカフェを開き、8年間つづけました。

 コーヒー豆を焙煎し、お湯を沸かしながら豆を挽き、ドリップしたコーヒーをカップに入れてお客様にお出しする。講演やメディア出演などで知り合った人から、「人生の作戦会議」と名づけた個別相談を受け、コーヒーを楽しんでいただいたあと、代金をいただき、半地下の店内から階段を上って「ありがとうございました」と挨拶して出口までお見送りする。こんなことを不定休でつづけてきたのです。

 店は赤字でしたが、全国からお呼びがかかる「お金の話」の講演料で穴埋めしていました。コーヒー店主としては失格だったかもしれません。でも、たくさんの出会いがあり、楽しい日々でした。

 カフェを開いていたあいだも今も、元銀行員の不動産賃貸オーナーとして「お金を貸す側」と「お金を借りる側」両方の視点を持ち、不動産経営を実践していることこそ自分の「売れる価値」だ、と自負しています。

 この価値を私は、講演、執筆、企業オーナーなどエグゼクティブの資産形成アドバイス、企業顧問といった活動を通じて、フルに活用させています。

 自分の持っている、または自分のごく身近にある「売れる価値」に気づく能力──つまり、マーケット感覚は、これからますます重要になってくるでしょう。

「人が困っていること」を探せばビジネスになる

 もしあなたが、自分はコーヒー大好きで人と話すのも得意。楽しそうだからカフェを開店しよう! と思っても、ほかに収入がある場合を除いて、おすすめしません。

 私がとても気になるのは、大成功している人がブログなどで「人間、好きなことだけやって生きたらいい。そうすれば、お金なんて、あとからついてくる」というようなことを盛んにいい、これに引きずられてしまう人がたくさんいることです。

 そりゃ、自分が大好きな趣味の工芸を、商売にできれば幸せ。大のそば好きがそば打ちを習得し、そば屋を開ければ幸せ。興味があって猛勉強してとった資格が、ビジネスにつながれば幸せ。でも、みなさん、ことごとく失敗しています。

 実際、自分は「これが大好きだから」、または「この資格をとったから」、「ビジネスにして、人生第2のキャッシュポイントをつくりたいんです。どうすればいいですか?」と相談にくる人が、とても多いのです。

 好きなことや得意なことが即、収入に結びつくはずがない、と私は思います。

 お金とは、誰かが「困っていること」を解決したときに受け取る対価だと思っています。

 これが基本です。自分は何が好きで何が得意かなんて後まわし。まわりの人がどんなことに困っているか、アンテナを立ててリサーチする。御用聞きをするほうが先。

 困っていることがわかったら、さらに深掘りして解決方法を見つける。実際に解決すれば、対価としてお金が入ってきます。このとき、自分が好きなことや得意なことで解決できれば幸せですよね。新しいアイデアもばんばん生まれ、より大きなビジネスになりやすいわけです。

 この順序を間違えてはダメ。好みや得意から出発して、今後の人生を組み立てようとすれば、必ず失敗してしまいます。

自分に自信がある40~50代と、退職金がある60代前半が危ない!

 とくに40~50代で、仕事がうまくいっていて、家庭も順調、というような人は、「いける!」と思い込みやすいので、くれぐれも用心してください。

 もうひとつは、長年立派に勤めあげ、退職金を受け取った直後の60代前半。

 退職金は500万円の人も、2000万円の人も、大企業なら5000万円の人もいるでしょう。いずれにせよ、30~35年も働いたごほうびに、まとまったお金をもらって気が大きくなっています。興奮状態とすら、いえるかもしれません。

 奥さんと豪勢な世界旅行に出かけたり、何百万円もかけて家をリフォームしたり。

 そこに金融機関が「現金を寝かしておくなんて」と「ご案内」攻勢をかける。実際に私が銀行員時代にしていたことです。そして、投資信託や株式といったリスク商品にお金を振り向けてしまう人もいます。

 なかには「このビジネスならやれる!」と、退職金の大半を注ぎ込み、起業してしまう人もいるでしょう。そこで声を大にして申し上げたい。

「ちょっと待った! 退職金は1年間ほったらかしにしなさい」

 熟考のうえ準備に準備を重ねれば、次のような生き方はあるかもしれません。参考として、そう私が思う事例を紹介します。副業ならぬ「複業」の時代ですね。

○営業の人材不足に悩む地方企業に転職。自分の広い人脈を活かして、東京の営業アドバイザーとして顧問契約先を開拓する。

○IT企業にいた人が、アナログな自営業者のためのサポート事業を起こす。

○2018年1月の「改正通訳案内士」制度で、資格がない人でも、有償で通訳案内業務ができるように。そこで外国からの観光客相手にガイドビジネスを始める。

○独立した子どもが使っていた2階の空き部屋で、外国人旅行客の民泊を始める。オプションで着付け・書道などを体験してもらい、客単価を上げる。

○ライティング能力を活かし、お年寄りを対象に、自伝作成サポート業をする。

○空き家を改装して、コスプレファンのための撮影スタジオを開業。

○空き家を利用して、共働き夫婦の子ども専用のアフタースクール塾を始める。

○キャンピングカーを購入。平日はインバウンド(訪日旅行)の外国人、土日はファミリー層を対象にレンタルする。

○妻の田舎に移住し、新規就農助成を受けて農業。副業でWebコンサルも。妻も地縁血縁を総動員し、いい就職先を見つけて稼ぐ。

答え
元気なうちは働いて稼ぐ。自分の好みや得意に従うより、誰かが困っていることを探すほうが先。自信過剰に注意。焦りも禁物。退職金はしばらく寝かせておこう。

続きは本書でお楽しみください。