ポジティブな感情がいつも正解とは限らない。不安を原動力にその先の行動を変えよう/1分自己肯定感⑥

暮らし

公開日:2020/7/5

成功者は日々、自己肯定感のメンテナンスを行い、試行錯誤しながら失敗を成功につなげるサイクルをつくっているもの。毎日1分、自己肯定感を高めるメソッドを実践すれば、あなたもきっと「なりたい自分」に近づけます!

『1分自己肯定感 一瞬でメンタルが強くなる33のメソッド』(中島輝/マガジンハウス)

うまくいく人・いかない人

 ここまでで、何事においても人生をうまく回すための「感情、物事のとらえ方、行動」の特徴が見えてきたと思います。

 そのイメージを持った上で、現在のあなたの「感情、物事のとらえ方、行動のトライアングル」にどんな傾向があるかを探っていきましょう。

 いくつかの状況を想定して、AさんとBさん、自分がどちらの人物像に近いかチェックしてみてください。

advertisement

コップに入っている半分の水、あなたはどう解釈しますか?

 まずは、これまでも多くの本で紹介されてきた「コップの水理論」です。

 コップに半分入った水を見て、どうとらえますか?

【Aさん】うまくいっていない人の法則
・物事のとらえ方/水が残り少ない。かなり追い詰められた状況にいる
・行動/節約しなくては。現状を維持できるように
・感情/不安が不安を呼んでしまう。決断は先延ばしにしながらやっていく

【Bさん】うまくいっている人の法則
・物事のとらえ方/まだこんなに残っている。挑戦していく余地は十分にある
・行動/今のうちに水を増やす行動を。どうすればうまくいくか探ろう
・感情/冷静に自分の感情を把握。焦らず問題を解決しようと考える

 こんなとき、あなたはAさんとBさん、どちらに近いですか?

仕事で新たなプロジェクトに参加。しかし、1カ月経っても成果はゼロ

 新商品の売り込みや新規取引先の開拓など、新たなつながりをつくる業務にたずさわることになったものの、もう1カ月。まったく成果が出ていない……。

【Aさん】うまくいっていない人の法則
・物事のとらえ方/自分はこの業務に向いていないのかも
・行動/仕方なく営業活動を続ける
・感情/自分から希望してこの業務についたわけではないので、つらい

【Bさん】うまくいっている人の法則
・物事のとらえ方/まだ1カ月、ようやく慣れてきたところ
・行動/営業活動を続けながら、うまくいかなかった理由を分析、改善
・感情/1つ目のつながりが開拓できたら、うれしいだろうなと期待

 こんなとき、あなたはAさんとBさん、どちらに近いですか?

困り者と評判の上司の下で働くことになってしまったら?

 社会人の悩みのアンケートで必ず上位に入るのが、人間関係です。部下の手柄を横取りする上司、思いつきで仕事を振ってくる上司、いまだに長時間労働が美徳だと考えている上司。自分とは合わない上司のいる部署に異動してしまったら……。

【Aさん】うまくいっていない人の法則
・物事のとらえ方/誰がどう見ても上司が悪い
・行動/できるだけ接点を持たないよう仕事をする
・感情/いつ難題が降りかかってくるか、不安

【Bさん】うまくいっている人の法則
・物事のとらえ方/困った上司とはいえ、仕事ですから
・行動/やるべきことを中心にテキパキ片づけていく
・感情/イライラや困惑もあるけれど、それはそれとして別のことで気分転換

 こんなとき、あなたはAさんとBさん、どちらに近いですか?

ドラッカーの意外な解釈

 ここで「自分はAさんに近いかもしれない……」となっても、安心してください。大切なのは、自分の現在地を知ることです。

 自分が同じシチュエーションに置かれたら、「感情、物事のとらえ方、行動のトライアングル」はこんなふうになるだろうな……とイメージをふくらませてみましょう。

 それが「自己認知力」のトレーニングになります。

 それに実際、プラスの物事のとらえ方、ポジティブな感情を持つことがいつも正解というわけではありません。

 たとえば、最初に紹介した「コップの水理論」は一般的に「まだ半分残っている」ととらえるポジティブ思考の大切さを伝えるために広く流布しています。

 しかし、「コップの水理論」を世に広めた経営学者のピーター・ドラッカーの解釈は少し違います。

「コップに『半分入っている』と『半分空である』は、量的に同じである。だが、認識の仕方によって意味は異なり、取るべき行動も違ってくる。世の中の認識が『半分入っている』から『半分空である』に変わるとき、イノベーションの機会が生まれる」

 つまり、イノベーションを起こすことができる人は、マイナスの物事のとらえ方をして、「コップは半分空である」といち早く感じ取れる側だといえるのです。

「納期まで2週間」の仕事を前に、「2週間もある」ととらえる人の姿勢は一見いいように見えますが、なかには甘く見積もって「納期は明日」となるまで放置する人もいます。

 逆に「2週間しかない」と考える人は、間に合わないという最悪のシナリオを思い浮かべつつ、そうならないよう綿密なプランを立てていきます。

 こういう人にとって「2週間しかない」というとらえ方は、不安や焦りなどのネガティブな感情につながりますが、むしろその感情をエンジンにして行動を起こしています。

 前述の例に出した「うまくいっていないAさん」のマイナスのスパイラルは、

◆ ネガティブな感情とマイナスの物事のとらえ方が重なった結果、不安になり、適切に行動することができない(ブレーキを踏んでしまう)

 しかし、このスパイラルは次のように変換することができます。

◆ ネガティブな感情とマイナスの物事のとらえ方が重なっても、不安をプラスのエネルギーにして、レバレッジをかけて行動を加速させる(アクセルを踏む)ことができる

 では、アクセルとブレーキ、何がこの2つを分けるのでしょうか。

 その答えが、「感情、物事のとらえ方、行動のトライアングル」と並ぶ、もう1つのキーワード、「自己肯定感」です。

<第7回に続く>