情報は集めるだけでなく分析する力をつけるべき。青学・原監督流リーダーシップ論/改革する思考こそが、日本を変えられる③

ビジネス

公開日:2020/7/31

改革する思考

著:
出版社:
KADOKAWA
発売日:

 大学駅伝3冠、箱根駅伝4連覇など、陸上競技の指導者として、数々の偉業を成し遂げてきた青山学院大学の原晋監督。同氏が異端児と言われながらも貫き通してきたリーダーシップ論を語る。ポストコロナの時代に求められるものとは。

改革する思考
『改革する思考』(原晋/KADOKAWA)

情報を集める力があっても、改革発想には結びつかない

 改革発想を養っていくには、様々な力が必要です。

 特にコロナウイルス禍で分かったのは、情報の扱い方です。不安な情報が先行したことで、大学に限らず、教育現場での学習機会が著しく損なわれました。オンライン授業の定着などによってプラス面もありましたが、情報を正確に評価していたとは思えませんでした。

 つまり、情報を集める力だけでは発想力は磨かれません。情報収集は「諸刃の剣」ということだったのではありませんか? たとえば、学生の中にもSNSでネガティブな情報に晒された結果、元気を失ってしまった人もいました。

 今回分かったのは、集めるだけではなく、「情報を分析する力」がなければ、適切な行動がとれないということだったと私は思います。つまり、情報を集め、加工していく力。ここでも加工という単語は、ポジティブな言葉です。情報、数字などは加工して自分のものとして落とし込んでいかなければ意味がありません。

 たとえば、数字の扱い方ですが、青山学院の選手たちに則して考えると、「月間目標走行距離」という指標があります。なんだか車の走行距離みたいですが、選手たちの足回り、心肺能力を鍛えるためにはある程度の距離を走った方が効果的なのは間違いありません。

 目標管理シートでも、「今月の目標800km」といった数字が上がってきます。そして実際に達成したとする。しかし、私から見れば、800kmという数字には大きな意味はないと思います。重要なのは、自分がどんな内容で走っているのか、そのデータを分析する力なのです。

 ジョグで稼いだ距離なのか。それとも、スピード練習を多めに取り入れた強度の高いものなのか。あるいは昨年同時期と比較して、どのような結果が予想されるのか。そして実際に、1週間、2週間後に自分の身体にどんな変化が起きたのかまで分析できなければ、次のターゲットにつなげられないのです。

 私が求めているのは、単なるデータ集めではないのです。どう情報を加工し、それを強化に結びつけられるのか、自分の成長を促し、その知見を基にして、青山学院の組織の改革に活用できるのかを問いたいのです。

 その意味では、選手たちには高校まで数学はしっかりやってきて欲しい。アカデミズムの場にいると分かりますが、数学、統計が現代ではより重要な意味を持っています。行動経済学の流行なども、心理学と経済学、数学の「加工」です。加工する技術を高校の教室でしっかりと学んできて欲しい。そうすれば、青山学院の選手たちから改革する思考が発信できるようになるはずです。

情報加工、脳内加工。いろいろな加工がある

 現代で求められているのは、「情報加工業」ではないでしょうか。かつての経済は第一次産業品の加工が主流でした。いまは、第三次産業での加工が大きな力となり、コロナウイルス禍を経て、より情報の読み解き方が重要性を増しています。

 改革発想を持つためには、最初はものまねから入るので私は構わないと思っています。たとえば、高校を卒業したばかりの1年生が青学に入学してきたとする。練習の内容が高校とはまったく違う。たとえば、私は「100m×10本」というようなメニューを与えます。高校の練習では絶対に実施されない練習メニューでしょう。

 数字だけを見ると、何やら短距離の強化のようですが(実際、短距離ではこんなメニューはないと思いますが)、選手は100mを全力で走り、回復時間を取りながら、10本こなします。

 おそらく、1年生は、メニューの意図をくみ取れないでしょう。この練習は何を目的としているのかはもちろん説明しますが、理解しきれない。しかし、理解への道筋はあります。先輩たちがどのようにリカバリーをして次の1本を質の高いものにしているのかを見て、観察していけばそこに「学び」が生まれます。

 そこから加工がスタートします。自分の体調などに合わせ、練習の最適解を見つけられるようになります。つまり、練習という情報、先輩たちの練習へのアプローチといった情報をすべて吸収し、「脳内加工」することが大切です。脳内加工に重要なのは、すべて「自分ごと」として捉えることです。そうすれば、最短距離で加工を行うことが可能になり、それは自分の速さ、強さへとつながっていきます。

 ものまねから始まり、情報加工、脳内加工といった作業を経て、成功を収めれば、それは自分の財産となっていきます。

 加工は改革への第一歩なのです。

<第4回に続く>

この記事で紹介した書籍ほか

改革する思考

著:
出版社:
KADOKAWA
発売日:
ISBN:
9784048968072