柳田悠岐は「死ぬまでに1回は見ておくべき打者」そのスゴさをトクサンTVメンバーが語りつくす!/プロ野球が100倍おもしろくなる座談会①
公開日:2020/8/22
YouTubeのチャンネル登録者数56万人(2020年8月現在)の大人気野球YouTubeチャンネル「トクサンTV【A&R】」。野球に対する確かな知識と理論で、現役プロ野球選手や野球大好き有名人も数多く視聴している同チャンネル。本連載では、そんなトクサンTVメンバーが、プロ野球で活躍する選手のスゴさを語りつくします!
第1回は、福岡ソフトバンクホークス・柳田悠岐選手について。
「フライボール革命」の申し子?
ライパチ
トクサンTVが語るプロ野球選手のスゴさ。第1回のお題は福岡ソフトバンクホークス、柳田悠岐選手デ~ス。
トクサン
長距離打者でありながら、足も速いし、肩もいい。「トリプルスリー(シーズン打率3割、30本塁打、盗塁30以上を記録すること)」を達成した選手として知られているね。愛称は「ギータ」。
ライパチ
身体が反りかえるようにして、角度のある打球を打つことから、アメリカで流行しているとされる「フライボール革命」の申し子みたいにも言われますが…。
トクサン
「フライボール革命」というのは、メジャーリーグでフライの角度で打球を放った方が、統計的に長打や本塁打になる確率が高いという理論。日本でも近年話題になっているね。でも、取材でアメリカに行ったときの印象で言えば、「そんなものはアメリカにない!」。
ライパチ
なかったですね~。誰もそんなこと言わない。
アニキ
結局、詳細なデータがあるのはプロだけなんよ。しかも、メジャーリーグにおけるデータの統計の話。メジャーリーガーの身体能力や技術の上で出てくる数字だから、アマチュアなどがマネしても、同じ結果にはならない。
トクサン
「バレルゾーン」という30度前後の角度で打ち出せば、長打になりやすいとされるんだけど、それをやっているのは、言い出しっぺのヒューストン・アストロズくらいじゃないかな。他球団の選手は、そこにこだわっていないと思う。ボールに強くアジャストする、という基本的な意識の方が高い感じだったなあ。
ライパチ
選手ではなく、外部の人やデータを扱う人たちの考え方ですよね。それが、日本に変な入り方をしてしまった気がする。
アニキ
メジャーリーガーのパワーやから、長打になるんよ。アマチュアがやったら、ただのフライになる。俺らの時代の少年野球でやったら、まあ、怒られる。
実はダウンスイングを意識している?
トクサン
ただ、柳田選手の場合は、高めの角度で打ち出そうという意識はあると思う。本人も「カチ上げる」という表現をするし。
アニキ
でも、本人はダウンスイングの意識でバットを入れる(テイクバックの位置から、ミートポイントへバットを出す)と言ってたよ。
ライパチ
そういう意識づけをしてるんでしょうね。
トクサン
バッターって、水平に振っているつもりでも、ヘッドが下がってアッパースイング気味になったり、上から下に叩くダウンスイングになったりするもの。
アニキ
意識と感覚はズレるものやからね。「まっすぐ歩け」と言われて、右にヨレる人は、左に向かう意識をするはず。そんなもん。
トクサン
昔は、そういう考え方が浸透してなかったから苦労したね。
アニキ
俺らの時代でも、王貞治さんがダウンスイングの意識づけをしているって話が残ってて、意識ではなく、「正しい振り方はダウンスイング」となってしまったからね。「とにかく上から下に振れ!」と教えられた。
トクサン
矯正のための意識づけと、実際のスイングは違うのにね。それがなければ、アニキもバッターとして大成したかもしれない…。
アニキ
もうね、ムチャクチャな形になったからね。「刀を振ってるんかい!」というような。
トクサン
目で見える動きと選手の意識には差があるもので、僕たちはそんなところにも注目しているよね。だから、ネクストバッターズサークルを見ると、おもしろい。バットを振り下ろしている選手は、無意識にアッパー気味になるクセがあるから、ダウンに出す意識づけをしている可能性が高い。
アニキ
柳田選手の場合は、身体があれだけ反った状態でスイングするからね。ダウンスイングの意識でバットを入れると、ちょうど水平にバットが入るのかもしれない。そして、そこからカチ上げる。バットヘッドの軌道がVの字になって、Vスイングと本人が言う形になる。
トクサン
その意識づけと、あのスイングが柳田選手には、合っていたということ。他の人がマネできるかは、別の話だね。
“死ぬまでに1回は見ておくべき打者”
ライパチ
センターバックスクリーンの上の方をねらっている感じですもんね。どんな球でも、自分のスイングをする気満々。
トクサン
試合中などもベンチ裏で自分のスイングチェックをしているみたい。相手に合わせるよりも、自分のスイングをいかにするかに主眼を置いている。
アニキ
で、振り遅れたときにレフトフライみたいな打球が上がる。でも、それが入ってしまうという…。もう、怪物としか言いようがない。
トクサン
お客さんの歓声がおもしろいんですよね。レフトフライだと思って、みんな「ああ~」とため息まじりなんだけど、打球がぐんぐん伸びて「ええっ?」と驚く、そして、スタンドインしてしまって、「ウオオッ!」となる。
ライパチ
あれ、打ち損じですよね。
トクサン
センターバックスクリーンに打ち込む気持ちで振って、ちょっと差し込まれたらレフトポール際、逆に早かったらライトスタンドになる。
アニキ
真田幸村の十文字槍みたいなもん。左右にも刃が飛び出してるヤツ。もちろん、真ん中の刃でグッサァーッ、と刺す気なんやけど、逸れてもええのよ。横の刃でグッサリやるから。どっちにしても、やっつけられる。それも想定内。
ライパチ
じゃあ、われわれが柳田選手を評するキャッチフレーズを決めて締めたいんですが…。
アニキ
さっき話したように、“飛距離逆期待裏切り”でええやん。絶対入らないと思った打球が、ファンの予測を裏切って入ってしまう。
ライパチ
なんか、ムチャクチャな…。今、いちばん見ていて、おもしろい選手なのに。
トクサン
それでいいじゃん。今まであんな選手いなかったんだから、柳田選手を見られる僕たちはラッキーなんだよ。
アニキ
じゃあ、“死ぬまでに1回は見るべき打者”やな。
トクサン
うん、まとまったような気がするね。それほど、希少価値の高い選手だと思うよ。
取材・文=新宮 聡(企画室ノーチラス) 写真=松本祐亮
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