メンヘラと相性のいい職場があるって本当? /すべての女子はメンヘラである⑧

恋愛・結婚

更新日:2020/8/30

「もっと愛されたい」「周りから浮きたくない」…メンヘラとは、感情のコントロールがうまくできず暴走してしまう人。誰でも状況次第でなってしまう可能性があります。みんなが抱える「悩み」を上手に手放すためのヒントをわかりやすく紹介します。あなたの解決したいお悩みは? 『すべての女子はメンヘラである』(スイスイ/飛鳥新社)からの試し読み連載。メンヘラ女子にはなぜか常に彼氏がいる…その理由と、カップル間のトラブルの原因をズバリ解説!

すべての女子はメンヘラである
『すべての女子はメンヘラである』(スイスイ/飛鳥新社)

・・・さよならメンヘラ、こんにちはメンヘラ

 現在、メンヘラお祓い大作戦開始から13年経った。

 あの頃、私はメンヘラを「脱せる」ものだと思ってたし、ほとんど「脱せた」と本気で思ってた。だけどこの4年、エッセイを書き自分のメンヘラ気質と対たい峙じ し続けてきたからこそ改めて思う。

「メンヘラは完全に脱するものではなく、ある程度は一生付き合っていくもの」なのかも、と。

 それはB型の人が死ぬまでB型であることと同じく、完全には自分から切り離せないものだった。

 ただ、この「お祓い」で明らかに、獰猛で悩ましいメンヘラ気質を鎮めることができたからこそ、私はメンヘラ特有の「力」を操れるようになっていったのだった。

 それは社会人になって顕著に現れた。

・・・リクルートで学んだ「ラブ力」と「ストーカー力」

 メンヘラお祓いの後、私は新卒でリクルートに入った。
 そこで知らぬ間に有効活用していたメンヘラ力が二つある。

「ラブ力」と「ストーカー力」だ。

 いきなりだけど、リクルートとメンヘラは相性がいいと思う。
 同期に対する嫉妬心や、マーケットに対する壮大な使命感、チームに対する家族のような愛着を常に焚たき付けられるし、感情の爆発が推奨されている感じがある。うれしくても悔しくても、何年目でも、みんな本当によく泣く。

 感情的で仕方なかった私が、自分のことを「実は、わりとクールなのかもしれん」と思ったくらいに、動物園みたいに騒がしかった。

・・・クライアントへの思いが爆発!「ラブ力」

 そんなリクルートで最初に所属したのは、某フリーペーパーの「銀座チーム」だった。ここでできた人生初上司である先輩2人が、これでもかというほどの熱意を持って私を指導してくれた。

 新人である私のことを毎日根気強く本気で怒り、ほめ、見守り続けてくれる先輩たちに、いつしか私はすさまじい忠誠心を持ち、先輩たちと共に担当する銀座という街に対しても、その街のフリーペーパーの読者に対しても、「ラブ力」という形ですさまじいラブを爆発させるようになる。そう、それまで歴代の彼氏たちに(屈折しながらも)愛をぶつけてきたように。

 はじめ、一日20件もしなくてはならない飛び込み営業は苦痛でしかなかったのに、2ヵ月経った頃には、すべての営業先に入る前に「私があなたを幸せにします」というおまじない(呪いじゃない)を唱えてから入るようになっていた。

 そうすると不思議なことに「私がこの営業先を受注したほうが、この人たちは幸せになる! 読者も幸せになる!」という思いが素直に爆発して、毎日汗だくで走り回るようになっていた(夢中が過ぎて、自転車立ちこぎのまま標識にぶつかったこともあった)。

 好きな相手を思い駆け抜ける日々は幸せそのもので、いつの間にか飛び込みに対する苦痛なんて消えていた。1年目が終わる頃には、銀座チームのギネスを叩き出し、先輩2人と共に狂喜した。人前でうれしくて泣き崩れたのは、それが初めてだった。

 恋愛で培ったラブ力を、見事仕事に大放出した例だった。

・・・すさまじい愛を表現する「ストーカー力」

 ただ、やはり常にポジティブでウェイ!な性格に変身できるわけではなく、基本的に私はネガティブな挙動不審者だった。

 営業先がお稽古教室から美容室に変わった2年目。「東京の美容師さん(!)」と「初対面で(!)」「直接話すなんて(!)」と名古屋コンプレックスも相まって恐怖を感じていた頃。第二の力を召喚することとなる。これぞ、ストーカー力である。

 飛び込み先の美容師さんたちと対面で話すことを避けようとするあまり、私はメンヘラとして大得意の「長文メール」と「長文お手紙」を多用するようになった。

 相手に伝えたい情報や感情は全部手紙に書き綴る。
 それを、相手の行動を観察し待ち伏せして、手紙を読んでくれそうなタイミングを狙いポストにインする。同じ会社に一日5回突撃することもあったし、一度の手紙が10枚にわたることもあった。

 もともとメンヘラ時代に傷ついた量が半端なかった私は、あまり傷つくことが怖くなかったため、執念でメンヘラ的な営業をしまくることができた。

 お手紙をポストインできない美容院に関しては、店外からガラス越しに紙芝居風に模造紙をめくって言いたいことを伝えたりもした。通報されなくて良かった。

 そんなメンヘラ特有の、「ラブ力」と「ストーカー力」の合わせ技はまさか結果を出し、社内で何度か成果を表彰されたりもして、あっという間に過ぎ去った。

【次回に続く!】