披露宴に主賓として招待されたら…? 知っておきたい“年長者としての振る舞い”/知らないと恥をかく 50歳からのマナー⑤

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公開日:2020/9/23

若い頃は知らないことでも、大人になると知っていて当たり前!? 年齢を重ねたことで初めて遭遇する、マナーの本質から実践までをこの1冊に集約!「マナー界のカリスマ」が書いた、知っておきたいマナーをイラストとともに紹介します。

知らないと恥をかく 50歳からのマナー
『知らないと恥をかく 50歳からのマナー』(西出ひろ子/ワニブックス)

披露宴開始前のマナー/披露宴でのマナー

知らないと恥をかく 50歳からのマナー

 主賓として新郎新婦やその親族の方々に失礼のないよう、当日までにしっかりと準備をしましょう。そうすることで、披露宴本番に、余裕を持って臨めます。

 披露宴当日は、自分のスピーチのことばかりを気にして、肝心な祝福の気持ちを忘れてはいけません。「上手な祝辞を」「ウケるスピーチを」などの気持ちは、すべて自分に向いています。品のある素敵な大人は、意識を相手に向けるもの。新郎新婦を心から祝いましょう。

披露宴当日は、年長者としての振る舞いを

スピーチを見越して、45分前には会場入り

 一般の出席者は「披露宴開始時間の30分前に式場入り」といわれますが、主賓はもう少し早めのほうが、皆さんもご本人も安心です。多くの場合、主賓は祝辞を読み上げるため、会場のスタッフから説明を受ける時間が必要となります。目安は披露宴開始時間の45 分前。もちろん、1時間前に到着しても構いません。

 祝辞の読み上げの説明をしてくれる会場スタッフは、多くの場合、祝辞の本番でも誘導してくれます。事前の段取りの説明を受けるときに、上から目線的な威張った態度はとらないように。いざ本番となったとき、スタッフがあなたに好感を持っていなかったら、幸せを祝う心地良い空間になりません。年長者としての品格は、どのような相手に対しても謙虚に、敬意を表する姿勢から醸し出されます。

初対面の相手にも気さくに話しかける

 新郎新婦よりはるかに年上のあなたが、結婚披露宴に参加していれば、親族の方なども「どなたかしら?」と気になります。お相手のご親族と勘違いされる可能性もありますね。それだけにあなたから先手で挨拶をし、簡単な自己紹介などをして、コミュニケーションをとると素敵です。また、相手からも話しかけられやすいよう、常に微笑みを絶やさないこと。微笑みは、お祝いのおめでたい場所ですから、当然のことですね。これは控え室でも披露宴会場でも同じです。

 また、ソーシャルディスタンスにも配慮しましょう。

乾杯はにこやかに、そして威厳を持って

 主賓は「乾杯の音頭」を頼まれることもあります。会場スタッフなどの指示に従って前に出て、「僭越ですが……」などと謙虚な姿勢で臨みます。また、明るく笑顔で祝福の言葉を述べましょう。

知らないと恥をかく 50歳からのマナー

 祝福の言葉が終わったら、一転して厳粛な威厳ある声と姿勢で、乾杯の音頭を取ります。このときのセリフは、次のページで紹介します。

知らないと恥をかく 50歳からのマナー

 この言葉と同時に、目の高さにグラスを掲げます。それから新郎新婦と目を合わせ、周囲の出席者にもアイコンタクトをしてから、軽く口を付けます。

 グラス同士を軽くぶつけて音を出す乾杯のスタイルは、正式ではありません。グラスに傷をつけたり、割れたりする可能性があるからです。特にお祝いの席でこのようなことが起きては問題です。とはいえ、相手からそのようにされそうになったら、拒否することは失礼です。グラス同士がつくかつかないか程度に、軽く触れあわせるようにしましょう。

食事のペースはできるだけ周囲に合わせる

 食事が運ばれてきたら、「食べるペース」にも注意しましょう。周囲の人に合わせて食事を進めるのが大人のマナー。1人だけ早く食べ終わったり、逆にいつまでも食べ続けたりしないように。特に同じテーブルの方々とは、速度を合わせて食べましょう。

 食事中にビールなどを注ぎ合うと、さらに和んだ雰囲気になります。注がれるだけでなく、あなたからも注ぐよう、配慮を忘れずに。

飲み物を片手に、ご親族に挨拶にうかがう

 新婦のお色直しの時間などを利用して、新郎新婦のご親族に、ビールなどの飲み物を持ってご挨拶に行きましょう。主賓として招いていただいたことへのお礼と、お祝いの言葉を述べます。そして、「よろしければ、どうぞ」などと言い、飲み物を注ぎます。

 逆に親族が飲み物を持って、各テーブルを回り、あなたに挨拶にきて、ビールなどをすすめてくれることもあるでしょう。このようなときは「恐縮です」と言ってグラスを持ち上げ、飲み物を注いでもらいましょう。

 相手が注ぎ終わったら、「お父様もいかがですか」などと言って注ぎ返します。もちろん、無理強いは避けること。アルハラ(=アルコールハラスメント)と思われては本末転倒です。

披露宴会場における「名刺」の扱い

披露宴中の名刺交換は、実は失礼な行為?

 披露宴で初めて出会った相手から、名刺を差し出される場面もありますね。その名刺を受け取ることに、問題はありません。ただし、あなたから名刺を渡すことは、披露宴会場では控えましょう。

 披露宴はあくまでも、新郎新婦のお祝いの席。出席者が人脈を拡げるための場所ではありません。名刺交換をすることは、マナー違反といえるのです。

披露宴会場では、名刺を渡さなくてもOK

 名刺をいただいた場合、あなたの名刺を渡さないのはマナー違反と思いがちですが、披露宴会場の場合はそうではありません。披露宴会場はビジネスシーンではないからです。

 「申し訳ありません。本日は名刺を持ち合わせていなくて」と伝え、先方の名刺を有難く頂戴するのみで問題ありません。

 また、今は名刺交換もオンラインで行うことが推奨されている時代です。披露宴中に名刺を渡されたとき、連絡先を教えても良い相手だと思えば、後日相手のメールに自身の名刺を添付送信するとスマートです。余談ですが、イギリスやヨーロッパなどのアッパークラスの人々も、名刺をもらっても自分の名刺は渡しません。「この人とお付き合いをしても良い」と思う相手にだけ後日、Eメール添付で名刺を送るのです。

お取引先などの場合は、名刺交換もやむなし

 ただし、日本ではお取引先関係者などが出席している場合は、その限りとはいえない状況があるかもしれません。タイミングを見計らい、先手でご挨拶に伺ったり、先方が名刺を出してきたら、その場でお渡しすることもやむを得ない場合もあるでしょう。

 しかし、この場合も、後日名刺をメール添付で送信したり、目上の方であれば、現物を郵送するのが本来のマナーといえます。

 なお、あなたが名刺交換をしたい相手が会場にいる場合は、招待者である新郎新婦やそのご家族などに相談し、紹介してもらうのが品のある高貴な大人の対応です。

<第6回に続く>