学びの技術を家庭で意識的に伝えよう! 子どもが学び上手になる方法/自分で学べる子の親がやっている「見守る」子育て②

出産・子育て

公開日:2021/5/1

自分で学べる子の親がやっている「見守る」子育て』から厳選して全6回連載でお届けします。今回は第2回です。わが子を「見守る」子育て、待望の第2弾が登場! 子どもの「勉強」「遊び」「生活習慣」「人間関係」について具体的に事例を紹介しながら、子育てで知っておきたい“コツ”を紹介していきます。

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自分で学べる子の親がやっている「見守る」子育て
『自分で学べる子の親がやっている「見守る」子育て』(小川大介/KADOKAWA)

原則2「学びの技術」を得る

▼学びは「技術」である

 子どもが散歩の途中で草むらに虫を見つけて、「あ、カマキリ! でもなんだか色が違うな? いくつか種類があるのかな?」と思うことがあったとします。

 すると、インターネットや図鑑を見て、名前や特徴を調べることもあるでしょうね。調べた結果、自宅で飼ってみようと思うかもしれません。自宅で飼うには何が必要なのか調べて、飼育ケースを買いに行ったり、庭から土や草を取ってきてケースに入れたりするでしょう。エサを与えているうちに、「このエサはよく食べている」「このエサはあまり食べない」といったことにも気がつくかもしれません。

 すると、次に同じカマキリを見つけたときには「これはオオカマキリだよ。エサは生きてる虫で、肉食だから野菜は食べない。脱皮して大きくなるんだよ」などと説明してくれたりするようになります。

 関心を寄せたものを調べ、理解し、記憶に残すまでのこういった一連の流れが「学ぶ」ということです。

 ここで大事なのは、学びは「技術」であるということです。

 この例で言うと、カマキリに関心を持ったとき、どうしたらいいのか(近づく? 見る? 触る?)、もっと知りたいと思ったら、どうしたらいいのか(図鑑を見る? 人に聞く? インターネットで調べる?)、経験として取り入れるにはどうしたらいいのか(飼ってみる? 博物館に行く? 昆虫採集イベントに参加する?)、といったことです。

 気になることが出てきたときに、それを明らかにするやり方を知っていれば、学び上手になれます。これが「学びの技術」です。大人は経験からわかっていても、子どもはそうではありませんから、意識的に伝えてあげる必要があります。

 この技術は散歩の途中で見つけた虫や花の話だけでなく、机に向かってする勉強にももちろん活用できますから、学びの技術を体得している子は、学校や塾の学習も進めやすくなります。

▼生活の中で「技術」が身についた親世代と、それが難しい子ども世代

 具体的な技術については第3章で詳しくお話ししますが、「自分で学べる子に育つ3原則」のひとつに「学びの技術」を入れたことは、ここ数十年にわたる子育て環境の変化に理由があります。

 今の40代以上の方々が子どものころは、いい意味で子どもたちに時間がありました。今のように、習い事だ、塾だと忙しい子どもはあまりいませんでした。

 親きょうだい以外にも、近所のおじさんやおばさん、さまざまな年齢の子どもたちなど、幅広い世代の人との関わりがあったので、日々の生活を通して、暮らしのコツや裏技を学ぶことができたのです(たとえば「子どもがお肉屋さんに買い物に行くと、オマケして多めに包んでもらえることがある」とか、「自転車がパンクしたときは、チューブに石けん水をぬって、プクーとふくらんでくるところにガムテープを貼ると応急処置ができる」など)。

 小学校の先生も今ほどは忙しくありませんでしたから、授業も今よりずっと、ゆっくり丁寧に進めることができました。低学年のころ、担任の先生に、鉛筆の持ち方を見てもらった記憶のある親御さんもいらっしゃるかもしれません。

 漢字ひとつとっても、じっくり教わることができました。たとえば「利という漢字を見てみよう。稲などを表す『禾』を、刀の『刂』が刈り取るから『利益』の『利』なんだね」などと成り立ちや意味まで説明されることが、今よりも多かったのです。

 ただノートに書き取るよりも成り立ちから学ぶほうがずっと、「利」という漢字が記憶に残るはずです。私自身も、「木がへいで囲まれると困るよね」と教わったシーンが今でも思い出されます。

▼できる子の家庭では「学びの技術」が伝えられている

 このように、昔は普通に生活する中でさまざまな技術を自然と身につけてきたため、親世代は「生活の中で技術を教える」ということが意識されず、勝手にわかるようになると思い込んでいる部分があります。

 ところが、今は習い事などで子どもも忙しく過ごしています。学校の先生も忙しいので、「これとこれをやりましょう」という「メニュー」はたくさん与えられるのですが、「どのように学べばよいか」ということは誰も教えなくなっています。

 決して親や先生が悪いわけではなく、「みんな学びの技術を誰かに教わってきた」ということが意識されていないことが原因なのです。

「間違った問題はやり直す」「昨日勉強したことを今日おさらいして記憶に残す」といったことは、「言われなくても当然」だと思っている人が多いのですが、実はそうしたひとつひとつの知識は、誰かから学んできたものです。

 ですから、今この時代での子育てにおいては、学びの技術を家庭で意識的に伝えてあげたほうがいい、というのが私の考えです。

 実際、「できる子」の家庭では、普段の会話や遊びの中で学びの技術が伝えられていることが多いのです(それが当たり前になっているご家庭では、親御さんもほとんど意識していないのですが)。

 ここまで読んで、「これまで、うちの子に学びの技術なんて教えたことがなかったなあ」と思われた方、不安にならなくて大丈夫ですよ。

 このあとの章で具体的にお伝えしますので、お子さんの成長に合わせて段階的に教えてあげてください。そうすれば、お子さんは学び方を身につけて、学ぶことが好きになっていきます。

<第3回に続く>

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