興味に偏りがあっても心配無用! ひとつのことを深く掘り下げるのも素敵な力/自分で学べる子の親がやっている「見守る」子育て⑥

出産・子育て

公開日:2021/5/5

自分で学べる子の親がやっている「見守る」子育て』から厳選して全6回連載でお届けします。今回は第6回です。わが子を「見守る」子育て、待望の第2弾が登場! 子どもの「勉強」「遊び」「生活習慣」「人間関係」について具体的に事例を紹介しながら、子育てで知っておきたい“コツ”を紹介していきます。

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自分で学べる子の親がやっている「見守る」子育て
『自分で学べる子の親がやっている「見守る」子育て』(小川大介/KADOKAWA)

コツ3「興味の幅が狭い」のではなく「深められる」ととらえる

「好きな本しか読まない」「決まったおもちゃでしか遊ばない」「恐竜のことは大好きだけど、友だちのことはさっぱりわからなくて関心を示さない」。こういった悩み相談もよく受けます。

 結論から言うと「まったく心配無用!」です。

・興味の偏りが成長を偏らせるわけではない。
・広く・浅くから深める道もあれば、狭く・深くから広げる道もある。

 こういったことを頭の片隅に置いておくと、お子さんをゆったりとした気持ちで見守れるようになると思います。

「興味を持ったことしかやらない子」というのは、言い換えれば、「ひとつのことを深く掘り下げていける子」とも言えるわけです。これはとても素敵な力ですよね。

 お子さんが特定の遊びしかしないことで、それ以外の能力が伸びないのではないかと心配する親御さんもいらっしゃるようですが、大事なことは、「何で遊ぶか」ではなく、「どんな遊び方をしているか」です。

 たとえば「うちの子、ブロックでしか遊ばないんです」という相談を受けたとき、私は必ず「ちなみに、ブロックでどんな遊びをしていますか?」とお聞きします。なぜなら、ブロック遊びにも、バリエーションがたくさんあるからです。

 ブロックの数を数える遊びができます。平面に並べて形を作ることもできます。見たことがあるものを作り上げるという遊びもありますね。「くっつけて外す」という動きや感触を楽しむ遊び方もあります。実際には存在しない何かを自分で想像して作ることもできます。ブロックを使ってままごとを始める子だっています。

 同じおもちゃで遊んでいても、実際にはいろいろな遊び方をしているはずです。

 ですから見るべきことは、この章の冒頭で述べたように「どんな遊び方をしているか」「どんなときが楽しそうか」です。それを、「ブロックでしか遊ばない」ととらえてしまうと、その子を理解するための入り口が狭まってしまいます。

 それでも、別のことにも少し関心を向けてくれたら……と思う場合は、その子が持っている探究心は大事にしつつ、「たまには、違うことに目を向けるのも面白いよね」「もっと虫のことを知って、虫博士になるといいよ!(と、興味のあることをほめつつ)ちなみに、こんなものもあるけど、どう?」などと、その子の関心事以外の面白いことを一緒に探してあげるような気持ちで声かけするといいですね。

 そのときすぐに興味を示さなかったとしても、それはそれで構いません。また別の角度からアプローチしてみればいいだけです。あれもしなさい、これもしなさいと親のほうがあせってしまわないように気をつけたいですね。

▼興味が偏っていたって、人間性は偏らない

 興味関心が特定の分野に偏っているからといって、人間性が偏ったり、人付き合いの幅が狭まったりするようなこともありませんから、その点もご安心ください。

 ひとつのことに深い関心や好奇心を寄せる子はきっと、周囲の人にも、その人ならではの関心事があるということを理解できる子になるはずです。

「ぼくは恐竜のことが大好きで、詳しい。でも乗り物のことはあんまり興味ない。だけど、友だちの○○くんは、すごい乗り物好きで、めちゃめちゃ詳しいんだよ」。

 こんなふうに、お子さんの口から興味の対象がまったく異なる友だちの話が出てくれば、その子はしっかり周囲のことが見えています。「みんなが恐竜好きというわけではない」ということがわかっているからこそ、言えることです。

「あなたは恐竜が好きなんだよね」と自分のことを認められて育った子は、ほかの子が好きなことも「そうなんだ」と認める力が育ちます。多様性の根っこには「認め合い」があることを心に留めておきましょう。

コツ4「興味を示さない」のではなく「自分の世界がある」ととらえる

 よくあるご相談の中に「何を見せてもあまり反応しない」というものがあります。

 せっかく絵本を買ってきたのに興味を示さなかったり、わざわざ休日にイベントに連れて行ったのに反応が薄かったりしたら、親としては残念な気持ちになりますね。私も父親として、大いにわかります!

 ただ、こんなときに意識したい2つのポイントがあります。

 1つ目は「味わう時間もないくらいに、次々に物事を与えていないか?」という点です。

 子どもが体験を自分のものにするには、ボーっとする時間が必要です。ボーっとしている時間に「あのお話に出てきたこぶた、お父さんに似てたな」「ピアノとオルガンって、形が似てるのに音は違うんだ」などと考えをめぐらせながら、体験から得た知識や刺激を吸収し、血肉に変えています。

 ですから、考える時間もないくらい次から次に与えていると、ひとつひとつを味わうことができず、反応が薄くなってしまうのです。

 2つ目は「すでに自分の世界があって、そちらに心を奪われていないか?」という点です。

 本当は興味を示している事柄があるのに、親御さん側がそれに気づいていないだけというケースです。あれこれと「与えてあげなきゃ」とばかり思わず、「もしかして自分の世界があるのかも」という目でお子さんを観察してみるといいですよ。

▼子どもの「ううん」「わかんない」について、知っておきたいこと

 子どもの反応が薄いので「つまらないの?」と本人に尋ねても、返事は「ううん」。

「ううん」と言いながら特に楽しそうなわけでもなく、無表情だったりすると、「この子、何を考えているのだろう……?」と、心配になりますよね。

 知っておきたいのは、子どもなりに物事を理解したり、吸収しようとしたりしていて心と頭が忙しいと、こういう反応になる場合があるということです。

 タイミングを無視して聞き出そうとしてもうまくいきませんが、本人の中で何かしらの区切りがつくと、「あのときね……」と急に話してくれることもあります。

 こういう知識を持っておくと、親のほうで勝手に不安になって無理に聞き出そうとし、反応が薄くてさらにあせるという悪循環にはまらずに済みます。

「今日は何したの?」「学校どうだった?」などと尋ねたときに、「別に」「わかんない」と言う子がいますが、こちらも同じです。

 親の側は、話してくれないという「表面」だけを見て、「うちの子、何も話したがらないんです」と決めつけがちです。ですが、子どもは話したくないわけではなく、ただ「話すタイミングが来ていなかった」だけということが多いのです。

 こういうときは、「そっか」で済ませてしまいましょう。時間をおけば話してくれますよ。

 気をつけたいのは、「わかんない」などの言葉に対し、勝手に「親の私を拒絶した」という解釈をしないことです。

 子どもの言葉を額面通りに受け止めると、あとでせっかく子どもが話す気になってくれたときに「さっき、『別に』って言ったじゃない!」と責めてしまって、かえって親のほうが拒絶してしまうなんてことになりかねません。

 言葉で表現するのが苦手な子もいます。

 自分の気持ちをうまく言葉に置き換えられない子に寄り添うときは、同じ方向を向いて、ただ横に座っているだけで構いません。そうすると、「受け入れてもらえた」という安心感で、心の整理がついて、急に話し出すこともあります。

<続きは本書でお楽しみください>

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