客も事情も歌舞伎町クオリティー!日本一の歓楽街に構えるクリーニング店が舞台の異色すぎる人間ドラマ!/マンガPOP横丁(56)

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更新日:2021/4/27

歌舞伎町の洗濯屋さん
『歌舞伎町の洗濯屋さん』(駒魔子/新潮社)

 眠らない街、そして、どんな人でも受け入れてくれる街として有名な、新宿・歌舞伎町。入り口となる赤い電飾のゲートをくぐると、無数の看板とさまざまなお店が入った雑居ビルが目に飛び込んでくる。歩を進めていくと、某特撮怪獣が頭を出したシネコンのビルとその下にはライブハウスの数々。さらに奥へ行くと、煌びやかで華やかな夜の世界が広がっている。歌舞伎町は、単に夜の街というだけでなく、エンターテインメントとともに発展してきたエリアなのである。とはいえ、やはりいつの時代もカオスなスポットであるのは間違いない。

 ところで、実録系のドキュメント番組を見ると、歌舞伎町で生活する人たちの中には、ひとクセもふたクセも……どころか、みクセもよクセもある人が登場する。その人たちは一体どんな生活を送っているのか。身に付けている物や持っている物を見ればその人の生活や素顔がわかるが、衣服はその代表的なところだろう。ポケットの中、付いている汚れにその人の真実が隠れていることも。それを実際に第三者が目にする場所がある。クリーニング店だ。そんなクリーニング店で働く店員とお客さんの衣服から繰り広げられる人間ドラマ作品が誕生した。駒魔子先生の『歌舞伎町の洗濯屋さん』(新潮社)だ。

 歌舞伎町の片隅で営業する、ごく普通のクリーニングの店、『歌舞伎町クリーニング』。貧乏美大生のユリと韓国人留学生のミンジュンが店員として働いていた。

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 毎日たくさんの衣服を預かるが、ついやってしまう失敗がある。預かったときに行うポケットの中身のチェック忘れだ。今日もユリが預かったお客さんの衣服のポケットから定期券が見つかった。「みんなポケットの中に何でも入れスギ」とミンジュンが不満を言った上で、忘れられない驚きのエピソードを語った。

 それは男性客のコートを預かったときである。ミンジュンは、ちょっと重く感じたそのコートをお客さんがいる前でチェックしていると、「ゴトッ」と重たい音とともに何かが落ちた。油紙に包まれた三角形の塊で、それが何かわかった瞬間、ミンジュンは震えだした。実はその塊の正体は拳銃だった! チェック後、悟られないようにそれを男性客へ返して事無きを得たそうだ。今度は、大手企業に勤務するダンディな常連さんのスーツのポケットに何か入っているのをミンジュンが発見。取り出してみると、これまたトンデモないものが。常連さんの雰囲気から想像できない“それ”を丁寧に梱包して返却するが……。

 この他に、女性客から預かった衣服の付着物を巡る真相究明劇や、未引き取り品が招く悲しきドラマ、恋多き女性客の紳士的な男性への恋、そしてその男性客の真実など、どれも濃い人間ドラマが次々とこのクリーニング店で洗い出されるのであった。

 これぞどんな人も受け入れる、歌舞伎町ならではの珍事件と案件の数々。「ポケットの数だけその人の裏の顔がある。」そう作中で語られているが、この街の人は特にそうなのかもしれない。もちろん物語はフィクションではあるが、「歌舞伎町ならありそう」な展開がたっぷりでスリリング! さらに作者の駒魔子先生は、実際にクリーニング店勤務経験者ということで、もしかしたら作中に出てくる忘れ物の中にはリアルにあったものでは?と推測してみたり。楽しみ方はいろいろだ。

 ここでは訪れるお客さんについて注目したが、ここでは紹介していないユリやミンジュンの隠されたヤバいエピソードもあるので、こちらもお楽しみに。

 結局、登場するほぼ全員がワケあり“過ぎる”、まさに歌舞伎町クオリティーの展開にご期待ください!

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文・手書きPOP=はりまりょう