名案をうむ魔法なんてない! すべての仕事に役立つ“アイデアを出すノウハウ”とは?/100案思考「書けない」「思いつかない」「通らない」がなくなる①

ビジネス

公開日:2021/5/20

100案思考「書けない」「思いつかない」「通らない」がなくなる』から厳選して全6回連載でお届けします。今回は第1回です。才能、センス、道具なんていらない。どんな場合でも、いいアイデアを考えてくる人には共通点があります。それは「とにかくたくさん数を出すこと」。1案しか持ってこない人のアイデアが優れていたことは、ただの一度もありません。ここでは“考え方”のヒントを教えます。

100案思考 「書けない」「思いつかない」「通らない」がなくなる
『100案思考 「書けない」「思いつかない」「通らない」がなくなる』(橋口幸生/マガジンハウス)

はじめに
「アイデア」は才能ではない。ノウハウである

 数あるアイデア本/思考本の中から本書を手に取っていただき、ありがとうございます。

 僕は普段、広告会社で働くコピーライターです。広告づくりは「アイデアを出す仕事」だとよくいわれます。確かに商品を有名にしたり売ったりするコピーやCM、イベントなど、広告にはアイデアが欠かせないですよね。

 しかし、僕はこうも思います。広告にかぎらず、そもそもすべての仕事は「アイデアを出す仕事」なのではないかと。

 仮に、あなたが家電メーカーで働いていたとします。どんな機能が便利で消費者に求められているのか、アイデアを出すことが求められますよね。レストランで働いていたら、メニュー開発やお店のインテリアなど、やはりアイデアが必要です。ホテルで働いていたら、どのようにお客さまをもてなせば喜んでいただけるか、そのつどアイデアが求められます。

「いや、私の仕事はマニュアルどおりに接客することだ」

 そう思う人も、いるかもしれません。しかし、マニュアルじたいが、接客のアイデアをまとめたものです。お客さまへのあいさつの仕方、言葉づかいなど、すべて誰かの創意工夫の結果、生まれたものなのです。

 役所など、アイデアとは無縁の印象(スイマセン!)の職場もあります。行政手続きや税金のシステムなど、厳密な手続きにのっとって、淡々と処理するだけじゃないか……と思われるかもしれません。しかし、そのしくみは、どこからやってきたのか。自然にわいてきたものではありません。この社会を運営するためにつくられたアイデアと、とらえることもできます(ハンコのように、時代に合わなくなってきたものも増えました。そろそろ新しいアイデアが必要かもしれませんね)。

 僕の本業であるコピーライターも、広告の文章を書く仕事というより、「アイデアを文章として表現する仕事」だと思っています。

「商品Aは、価格よりスペックを前面に出したほうが売れる。そのためには、〇〇というキャッチフレーズが有効だ」

 すごく大ざっぱにまとめると、このような感じです。

 そう、あなたがどんな仕事をしていたとしても、そこには必ずアイデアがあるのです。アイデアを出す能力は、すべてのビジネスパーソンに欠かせません。ましてや今後はAIの普及で、単純な雑用や手続きはすべて自動化されていく……なんていわれています。アイデア出しだけが、あなたが自分のアタマでやる仕事になる可能性もあるのです。

 しかし、大きな問題があります。これほど重要であるにもかかわらず、アイデアを出すノウハウを学ぶ機会が、日本にはほとんど存在しないのです。

 僕の場合、たまたま広告会社に就職してコピーライターになったので、学ぶことができました。しかし、それ以前は、アイデアを少しも理解していなかったのです。

 アイデアのワークショップで講師をしていると、かつての僕のような人に大勢出会います。

 必死に考えているのに、なにも思い浮かばない。
 手元のポストイットは真っ白なまま。
 渾身の思いで出した1案も、全然おもしろくない。

 彼ら/彼女たちに能力がないわけではありません。それどころか、誰もが憧れる企業に勤めていたり、部署のエースだったりと、かつての僕よりずっと仕事ができる人ばかりです。これまでいいアイデアをひらめいたこともあったでしょう。それでも「アイデアを出せ」とあらためて言われると、みんななにもできなくなってしまうのです。

 仕事の現場でも、似たような悩みを抱えている人は大勢いると思います。

 会議で、自分の意見が通らない。
「業務の改善案を出してほしい」と言われたけれど、なにを取っかかりにすればいいかわからない。
 自社商品の売れ行きはイマイチなのに、似たような他社商品は売れている。

 ……などなど。しかし、ほとんどの場合、仕事がうまくいかない原因は、あなたの「能力」ではなく、「ノウハウを知らないこと」にあります。

 たまたま名案を思いつくのを待っていられない、忙しいあなたのために。本書では僕がこれまでにつちかった「アイデアを出すためのノウハウ」のすべてを、隠さず公開します。

 こう書くと、

「あー、うちは広告業界みたいなクリエイティブな職場じゃないから関係ない」
「かたくてまじめな仕事だから、そういうのは必要ない」

 と言う人も、いるかもしれません。

 しかし、先に書いたように、優れたアイデアを出す能力はすべてのビジネスパーソンに欠かせません。本書も、すべての仕事に役立つ内容にしたつもりです。

 アイデアを出すことは、自分の考えを整理し、わかりやすく伝えることにもつながります。本書のノウハウは、会議やプレゼンで自分の意見を伝えることにも応用できるはずです。

 最初に断っておくと、僕はコピーライターとしての才能に恵まれたほうではまったくありません。どのビジネス書の著者も似たようなことを書いているので、またか……と思われるかもしれませんが(笑)、謙遜ではなく事実です。「クリエイター」などというと別人種のように思われることもありますが、まったくの凡人です。就職活動では、今働いている会社以外、すべて落ちてしまいました(実話です……苦笑)。

 しかし、十数年以上にわたり現場で働くことができています。ヒット広告をつくったり、賞を獲ったりする企画もありました。才能があったわけではありません。ノウハウに気づいただけなのです。

「名案をうむ魔法」はあるか

 アイデア出しのノウハウなんて聞くと、

「これでスラスラと名案を出せるようになるのかな⁉」

 と、期待されるかもしれません。しかし……、スイマセン! そうはなりません。というより、僕は名案をスラスラと出せる人を、これまで1人も見たことがありません。

 過去には著名なクリエイターと仕事をする機会がたくさんありました。みなさんもテレビや街のどこかで見たことがあるような、超話題作を手がけた人たちばかりです。会議に颯爽と現れ、珠玉の1案をスッとテーブルに出し、みんなが「おお……」とざわめく――そんな仕事ぶりを想像されるかもしれません。

 でも、残念ながらそういう場面に出くわしたことは、ほぼありません。

 僕自身も、「このアイデアは、ひょっとしたらイケるかな、どうかな」……と手探りしながら仕事をしているのが、正直なところです。

 そう、ポンポンと名案が思い浮かぶようになる魔法は、どこにも存在しないのです。

 身も蓋もない話をしてしまいましたが、安心してください。逆に考えれば、それはアイデアに天性の才能はいらない証拠でもあるのです。天才なんて、どこにもいない。みんな努力して、あがいて、必死の思いでアイデアを出しています。

 それでは、アイデアを出すノウハウとは、どのようなものなのか。どうやれば妙案を考えられるのか?

 答えは簡単。「数多く出すこと」です。

 ……拍子抜けされたでしょうか。「数を出すだけだったら、誰だってできる」と反論されるかもしれません。そう、実際に誰でもできます。

 しかし、みんな、驚くほどこれをやらないのです。

「アイデアを持ってこい」と言われた人のほとんどは、なぜか「最高の1案」を提出することにこだわります。結果、最高の1案どころか、つまらないアイデアすら出せずに終わるのです。つまらないアイデアすら出せない人に、最高の1案を出せるわけがありません。最高の1案は、山ほどのつまらない案の中に、ひっそり埋もれているものなのです。

 新人コピーライターは全員、「最低100案は書くように」と指導されます。それ以外にいいコピーを書く方法などないからです。実際、活躍しているビジネスパーソンがすごいのは、アイデアの「質」ではなく「量」にあります。企画会議に辞書のような厚さの、大量のアイデアメモを持参してくる人も珍しくありません。

 広告業界にかぎらず、新商品開発や新規事業立ち上げなど、世に出た成功事例も同じこと。一見、完全無欠で華やかな印象を受けます。しかし、そのヒット事例は、大量のボツ案の中から生き残った1案なのです。僕の経験上、これは間違いありません。

「下手な鉄砲も数打ちゃ当たる」ということわざは、アイデア出しの本質をとらえています。とにかくバットを振りまくって、まぐれ当たりでもホームランを打てばいいのです。

 幸いなことにアイデア出しに三振はありません。いくら空振りしてもアウトにはならないので、安心してください。そして、慣れてくるうちに、1案1案のクオリティが高くなり、「打率」が上がります。

「天才じゃない。センスもない。それでも、アイデアで何事かを成し遂げたい」

 そんな、僕と同じ思いをあなたが抱えているのであれば、本書が大きな助けになると信じています。

「100案思考」は、こんなあなたに効きます

◉3日坊主で終わらないアイデア術や思考法を学びたい
◉机に向かうと、とたんに頭が真っ白になる
◉会議で意見を求められても言うことがない
◉アイデアの才能やセンスを伸ばしたい
◉新しい挑戦を、保守的な組織に阻まれている
◉メモ術に憧れているが、今まで挫折の連続
◉ズボラの自覚がある
◉世間で流行っているもののツボがイマイチわからない
◉自分のアイデアを会議で通したい
◉忙しいので手っ取り早い方法が知りたい

<第2回に続く>

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