会社は何のためにある? 事業目的の正しい定義は利益の追求ではなかった!/新訂 まんがと図解でわかるドラッカー②

ビジネス

公開日:2021/7/28

藤屋伸二:監修、nev:イラストの書籍『新訂 まんがと図解でわかるドラッカー』から厳選して全5回連載でお届けします。今回は第2回です。ベストセラームック『別冊宝島 まんがと図解でわかるドラッカー』の内容を書籍として大幅改訂! 経営の神様・ドラッカーの理論を事例と60のキーワードとともにひもといていきます。会社の目的は営利ではない!? ドラッカーが定義する、事業の目的とは――。

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新訂 まんがと図解でわかるドラッカー
『新訂 まんがと図解でわかるドラッカー』(藤屋伸二/宝島社)

会社は何のためにある?
会社の目的は「顧客を創造すること」

成果のあがる経営を考えるには、「会社とは何か?」を問う必要がある。簡単なようでむずかしい問題だ。まずはここから考えてみよう。

和訳 事業の目的の正しい定義はただ一つ、「顧客を創造すること」だ。

原典 There is only one valid definition of business purpose: to create a customer.
— Management: Tasks, Responsibilities, Practices —

会社の目的は利益の追求ではない

「会社とは何か」と聞かれたら、たいていの人が「利益を得るための組織」と答えるのではないだろうか。しかし、この答えは大間違いである、とドラッカーは言う。

 そもそも会社とは、政府や病院、学校などと同じ、社会を構成する組織の一種。これらの組織は社会や個人から必要とされるから存在している。

 つまり、組織は自分自身のために存在するのではなく、社会や個人のニーズに応えるために存在するといえる。決して、営利自身が目的ではない。

 いまでこそ多くの会社が「お客様のために」「社会のために」と、顧客や社会への貢献を企業活動の目的として掲げている。しかしいまだに、不当に高額な商品を高齢者に売りつけたり、原材料や産地、製造日を偽ったりと、利益の追求だけを目的とした悪しきビジネスはなくならない。そういった会社が、社会的あるいは法的な制裁を受けているのは、利益が会社のすべてではないからだ。

 ただ、もちろん利益はいらないというわけではなく、会社にとっては非常に重要。利益がなければ、会社は活動できない。

事業の目的は「顧客の創造」である

 当然、いくら優れた商品(製品やサービスを含む)があっても、消費者が買ってくれなければビジネスは成立しない。

 では、自社の商品を買ってくれる顧客をもち続けるにはどうしたらよいのか。

 ドラッカーは、すでにあるニーズを満足させるための商品、あるいはニーズそのものを生み出すような商品を提供することで、顧客に満足を与え続けることだ、と言う。これが「顧客の創造」である。

会社は「利益のため」にあるのではない

 社会を構成する一組織としての会社は、社会や個人のニーズを満たすために存在している。社会や個人のニーズを満たし続ける=顧客を創造することが、最も重要な存在意義なのだ。

Keyword 事業
売れる商品を生み出す活動。顧客の需要を満たすことを目的とする活動。「顧客は誰か」「顧客は一体、何を買っているのか」を本質的に問うことで、「自社の事業は何か」の定義は見つかる。

新訂 まんがと図解でわかるドラッカー

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ドラッカーのツボ
会社は社会の一員であり、「社会のニーズを満足させる」=「顧客を創造する」ためにある。

「顧客の創造」に必要な2つの要素
マーケティングとイノベーションが事業のカギ

会社の目的である「顧客の創造」に必要な活動は2つだけ、とドラッカーは言う。それがマーケティングとイノベーションである。

和訳 事業の目的は顧客を創造することであるため、企業に必要な機能は二つ── ただこの二つだけである。マーケティングとイノベーションだ。

原典 Because its purpose is to create a customer,the business enterprise has two—and only these two—basic functions: marketing and innovation.
— Management: Tasks, Responsibilities, Practices —

真のマーケティングとは顧客のニーズを満たすこと

 かつてモノが足りなかった時代、マーケティングとは、工場が生産したものを「販売すること」にすぎなかった。販売とは、まず商品があり、それが売れる市場を探すという発想だ。これに対して真のマーケティングは、「顧客は何が買いたいのか」を問うことからスタートする。

 まず、顧客の現状や価値観を理解し、潜在的なニーズを見極める。そして、そのニーズにぴったりな商品を提供することで、買いたいと思わせ、自然と売れるようにするのだ。マーケティングの理想は、販売(売り込み)を不要にすることにある。

イノベーションとは新たな満足を生み出すこと

 マーケティングによって、すでにあるニーズを満足させるだけでは、やがて飽きられ、時代遅れになる。そこで、必要なのが「イノベーション」だ。

 イノベーションとは、新しい価値を創造することで、顧客を創り出す活動である。その結果として、よりよい商品、より多くの便利さ、より大きな満足が、顧客にもたらされる。

 一般的に、イノベーションは技術面の革新による新たな価値の創造ととらえられがちだが、それだけではない。たとえば、既存商品の新しい用途を見つけることもイノベーションだ(148ページ)。

生産性の向上が企業の成果を左右する

 ただし、マーケティングとイノベーションを行っても、生産性が悪ければ利益が出せず、会社は存続できない。そこで生産性の向上が必要になる。

 つまり、最小の資源で大きな成果をあげる工夫だ。そのためには、ヒト、モノ、カネという資源を有効に活用しなければならない。

 同時に、知識や時間、生産手段や生産のしくみなど、成果に結びつく様々な要素を操る必要がある。

Keyword マーケティング
顧客や市場が求めていることをリサーチして、具体的に把握すること。マーケティングのねらいは、顧客をよく理解し、商品が顧客にぴったりと合って、ひとりでに売れてしまうようにすることにある。

顧客の創造に必要なこと

新訂 まんがと図解でわかるドラッカー

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ドラッカーのツボ
「顧客の創造」に必要なのは、生産性の向上を伴ったマーケティングとイノベーション。

<第3回に続く>

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