やりたいことを実現する方法。断られても諦めず、情熱を伝えることが大切/世界の「頭のいい人」がやっていること

ビジネス

公開日:2021/10/29

 世界で通用する「頭のいい人」がどんなことをやっているのか興味はありませんか?

優秀な頭脳を持つ人がやっているのは、「空気は読まない」「集中力を身につけない」など、周りを自分のペースに巻き込んでいく力を持っているから。東大、フランス国立研究所、MENSA(高知能者の交流を目的とする国際団体)などで世界のさまざまな「頭のいい人」を見てきた脳科学者・中野信子さんが、「世界で通用する、本当に賢い人達」が実践していることを1冊に集約。少し意識を変えるだけで、誰にでも今日からできるコツが満載です!

この作品は、2012年8月に刊行された『世界で活躍する脳科学者が教える! 世界で通用する人がいつもやっていること』を改題し、一部加筆・修正したものです。

※本作品は中野信子著の書籍『世界の「頭いい人」がやっていることを1冊にまとめてみた』から一部抜粋・編集しました

世界の「頭のいい人」がやっていることを1冊にまとめてみた
『世界の「頭のいい人」がやっていることを1冊にまとめてみた』(中野信子/アスコム)

断られたくらいであきらめない。
──情熱をとにかく、どんどんぶつけていく

タランティーノ監督がオファーを断られた

 前回連載分の「主張がはっきりしている」にも通じることですが、「主張」という点で、もう一つ、興味深いエピソードを持った人がいます。ここで、ご紹介したいと思います。

 自分が面白いと思ったことを、人にも面白く伝えられる──まさにその能力を極めたような、映画監督のクエンティン・タランティーノさんです。カンヌ国際映画祭・最高賞となるパルムドールや、アカデミー賞の監督賞を受賞しながらも、自身で脚本を書き、俳優として出演もこなします。実に精力的な仕事ぶりですよね。

 彼の代表作の一つが『キル・ビル』。この作品のvol.1に挿入されているアニメ部分は、日本のアニメ制作会社であるプロダクションI.Gが担当しています。プロダクションI.Gは、『攻殻機動隊S.A.C.』シリーズ、『戦国BASARA』シリーズなど質の高いアニメ作品で知られ、世界的にも高い評価を得ています。

 この会社に勤める私の友人が、タランティーノ監督のエピソードを話してくれました。

 実は、『キル・ビル』のオファーが最初にあったとき、プロダクションI.Gとしてはお断りしたのだそうです。押井守監督の新作映画『イノセンス』と、神山健治監督のテレビシリーズ『攻殻機動隊S.A.C.』という2作品の制作で、現場は手いっぱい。とても人をまわせる状況ではない、というのがその理由でした。

 そのとき、タランティーノ監督は、「わかった。では仕方がない……」と言って、あっさり引き下がったそうです。

「何としてでも!」という情熱が人の心を動かす

 しかしその直後、アメリカから、大量のFAXが。

 これは、タランティーノ監督の嫌がらせ……ではなく、「何としてもいい映画を作り上げたい!」という、彼の情熱によるものでした。「この映画にはプロダクションI.Gのアニメが絶対に必要なんだ。とにかく脚本を読んでくれ!」と迫ってきたのです。

 FAXで送られた脚本を読んでいた代表取締役社長の石川光久さんは、はたと膝を打ったそうです。

「プロダクションI.Gでは、リアルに細部を描写することや、ディテールにこだわることが第一だと思って、リアル志向でアクションを描く作品作りを、これまでずっとやってきた。けれども、タランティーノの脚本は、大胆で、アニメでしか実現しないものを求めている。『娯楽映画を作る』ということを、もう一度原点に返ってやってみるのも面白いんじゃないか」

 タランティーノ監督の情熱が、プロダクションI.Gの心を動かしたのです。

自分が面白いと思ったらそれを人にどんどん伝えよう

 結果的に、『キル・ビル』の興行収入は、vol.1とvol.2を合わせると、全世界で3億ドルを超え、非常に大きな成功を収めた作品となりました。これはまさしく、タランティーノ監督の「自分が面白いと思ったことを、人にも面白く伝えたい」という情熱の賜物なのではないでしょうか。そして、その情熱に、プロダクションI.Gも、誠実な仕事ぶりで応えた。そのことが、関わったすべての人に利益をもたらす、大きな成果を生んだのです。

 もちろん、プロダクションI.Gにオファーをしたときの、タランティーノ監督の空気を読まない行動が笑いを誘い、プロダクションI.Gのスタッフを和ませたという絶妙な効果もあったとは思いますが。

 タランティーノ監督のようなすごい人の真似はできないと、皆さんは思われるかもしれません。でも、少しずつでもいいから、「自分が心から面白いと思うことを見つけ、それを人にも面白く伝えること」を心がけてみてください。

 これに対して、スルーしたりバカにしたりする人も当然いるでしょう。でも、別に損をするほどのことではないと思います。ちょっと変な奴と言われて、軽く笑われるくらいで済むのではないでしょうか?

 その一方で、あなたのことを「面白い」と思って、あなたのペースに巻き込まれてくれる人が出てくるはずです。

 面白いと思ってもらえたら、その人はあなたの味方。一緒になって面白いことを思う存分やってくれるでしょう。一つでも面白いことが成し遂げられたら、あなたにも、あなたの味方にも、大きなプラスの結果が必ず待っていますよ。

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