死を受け入れた患者たちは、なぜ“本当の強さ”を得ることができるのか?/あなたの強さは、あなたの弱さから生まれる
更新日:2022/7/20
力のある人の意見に流されてしまったり、些細なことで落ち込んでしまう…。自分の“弱さ”が嫌になることは、誰にでもあると思います。
そんな方におすすめしたいのが、今回ご紹介する『あなたの強さは、あなたの弱さから生まれる』。ホスピス医として3,800人以上と向き合ってきた小澤竹俊さんが、自身の経験から得た“本当の強さ”を手に入れるためのヒントを紹介します。
競争や忙しい日常からでは気づけないあなただけの強さとは――。
『あなたの強さは、あなたの弱さから生まれる』は、”自分の人生に立ち向かう力”を掴むきっかけとなる一冊です。
死を前にして苦しみながらも、それを受け入れて「残された時間を自分らしく生きよう」と考えられる強さを手にする人々を多く見てきた小澤さん。その強さはどこから生まれてくるのでしょうか?
※本作品は小澤竹俊著の書籍『あなたの強さは、あなたの弱さから生まれる』から一部抜粋・編集しました


死という究極の苦しみの前で、人は本当の強さを手に入れる
人が人生最大の苦しみを抱え、もっとも弱くなるのは、間違いなく「死を前にしたとき」だと私は思っています。
死だけは、あらゆる人に平等に訪れ、人生の最後には、人は何も持たずにこの世を去っていきます。
その苦しみを解決することはできず、死から逃れることは誰にもできません。
お金を積み、権力を行使すれば、多少死期を遅らせることはできるかもしれませんが、最終的にはみな、この世を去ることになるのです。
医師から余命を宣告されたとき、徐々に体の自由がきかなくなり、自分の力では何もできなくなったとき、人は究極の苦しみを味わいます。
そんな苦しみの中でもがきながらも、やがて多くの人は心の穏やかさを手に入れ、前向きに生きるようになります。
最初のうちは「今の自分は弱く、何もできない」と思っていても、徐々に「残り時間が少なくとも、自分らしい人生を生きよう」という、たおやかな強さを手に入れるようになるのです。
では、なぜ人は死という究極の苦しみの中でも、強さを手に入れることができるのでしょうか。
人生の最終段階を迎えた人と関わる、ホスピス医という仕事
私は、大学院を卒業した後、救命救急センター、農村医療に従事し、1994年から横浜甦生病院ホスピス病棟で働き始めました。
これが、ホスピス医としての人生のスタートであり、2006年には神奈川県横浜市瀬谷区に、めぐみ在宅クリニックを開院しました。
「ホスピス」(hospis)という言葉は、ラテン語のHospitium(客を厚遇すること、暖かいもてなし)に由来しています。
ホスピスの原点は、中世の初めにヨーロッパ西部キリスト教の教会や修道院が休息や介護を提供したこと、巡礼や旅人に水や食物を与えた場所にあるようです。
そのせいか、日本では緩和ケアを行う施設のことを「ホスピス」と呼ぶことが多いのですが、そもそもは人生の最終段階を迎えた人をもてなし、穏やかにすごしていただくために行われる、痛みや苦しみを和らげる治療やケアのことを指します。
めぐみ在宅クリニックでは、24時間、365日の診療体制を整え、いのちの限られた患者さんや、高齢のため足腰の負担が増え通院が困難な患者さんが、住み慣れた自宅や介護施設で療養を続けることができるように、定期的な訪問を行ったり、緊急時には往診などを行ったりしています。
訪問範囲は、基本的には5km圏内で、常に300人以上の患者さんと関わっていますが、高齢者の方や、末期のがんなど重い病気を抱えている方が多く、毎月平均して約30人(そのうち在宅で亡くなる方は約25人)の方が亡くなっています。
私が担当し看取ってきた患者さんは、3800名以上にのぼります。
患者さんに対し、私が援助者として行っているのは、身体的な痛みを鎮痛剤などで和らげつつ、この世を去る瞬間までできるだけ穏やかにすごし、「生きてきて良かった」と思っていただけるためのお手伝いをすることです。