やるきげんきだいきさん(前編)/歌舞伎町モラトリアム③

エンタメ

公開日:2022/6/20

 自身もホストクラブに通いながらも、社会学として歌舞伎町を研究する佐々木チワワ。そんなチワワが歌舞伎町で活躍する様々な「エモい」ホストと対談し、現代のホストクラブについて語りつくす新連載、「歌舞伎町モラトリアム」。

やるきげんきだいき

 第2回は現在「FILIA(MIZUKI GROUP)」の代表を務めながら、YouTuber「ほすちる」としても活躍する月間3300万、年間1億4000万の売り上げを打ち立てたやるきげんきだいきさん。YouTuberとして、ホストとして、そしてお店の経営者としての様々な顔を取材しました。

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佐々木:FILIA(フィリア)は去年オープンしたお店なんですよね?

だいき:そうですね。もともとFinoという同じグループのホストクラブで働いていたんですが、21年の4月にフィリアをオープンしました。

佐々木:代表ってやっぱりプレーヤーとは違いますか?

だいき:基本はあまり変わらいです。でも、自分の売り上げよりも従業員の売り上げをあげさせることが大切という点は違いますね。オープン当初の3ケ月くらいは、その責任感で少し疲れていたんですけど、今はやっと慣れてきました。

佐々木:店内の照明、めちゃ明るいですよね。ラウンジっぽい。

だいき:前の店内は暗めだったんですよ。でも僕、暗いのがあまり好きじゃなくて。(暗いと)気持ちが落ち込むじゃないですか。毎日出勤するお店なのでキレイめで明るい店舗にしたかったんです。

佐々木:最近、明るいお店が増えていますけど、昔の深夜店時代じゃあり得ないのかもしれないですね。

だいき:昔は暗くて近くで顔見ないとわかんなかったですもん(笑)。

佐々木:最近は明るくてもみんなめちゃくちゃイケメンですもんね…。昔のホストは、明るいところで見たらヤバいみたいなイメージもありましたが。

だいき:今はキャストのレベル、上がってますよ!

佐々木:実は私、ほすちるさんのYouTubeは18年の初期くらいから見ていて。当時ホストでYouTubeをやる前例がなかったというのもあって、通ってる子たちから「お店に来てない女の子たちにサービスしないでよ」という声が上がっていた印象なんですが。

だいき:ありましたね。

佐々木:ここ数年で、ホストがYouTubeをやるのも当たり前になってきて。その変化をだいきさんの言葉で聞かせてほしいです!

だいき:最初は指名のお客様にもそれ以外のお客様にも『なんでお金にもならないのに外でキャーキャー言われてるの?』と言われることもありました。オーナーとか店の経営者側にも「ホストとしての仕事をしろ」って言われたりもしていました。でも売り上げは上げてたし、「勤務時間外に勝手に動いてるんだから関係ないだろ」って思ってました。僕、今だから言うわけじゃないですが、ホストがSNSでプロモーションをしていくようになることを見込んでいたんで。集客や宣伝になって、ホストとしての仕事にも繋がるって確信があったんです。だから、何を言われても気にしてませんでした。「YouTuber!(笑)」ってイジられたりバカにされることもあったけど、今に見てろよっていう気持ちでしたね。その後、TikTokに出たあたりから色々と変わった感じがありましたね。

佐々木:以前はホストってTwitterぐらいしかやってなかったですよね。

だいき:そうそう。インスタやってると「気取ってる」って言われて、結局Twitter。でもTikTokからホストが動画で顔を出すことに偏見がなくなったというか。ディスられなくなりましたね。

佐々木:ホストが動画やってるというか、動画やってる人が調べたらホストだった、みたいな逆転現象も増えてきましたよね。「カッコいいな」と思ったらたまたまアイドルとかじゃなくホストだった。「会えるんだ! じゃあ会いに行こう」みたいな。推し文化とうまくマッチしたなぁと思います。

だいき:確かに!

佐々木:私がfinoに行ったときに印象的だったのが、親子連れのお客様がいたことです。

だいき:全然いらっしゃいますよ。カップルで来てくだるお客様とかも。自分で言うのもなんですけど、本当にホストとよりは推しみたいな感じで。だから親御さんを連れてくることができる側面があるのかなと思っています。

佐々木:主観ですが、女の子の立場から見るとだいきさんみたいなアイドル・インフルエンサー枠のホストさんを指名すると月50~80万円くらい使う、いわゆるの中太客が一番キツいと思うんです。2~3万円で会えるアイドル感覚でもないし、200万円とか稼いでがっつり関係を築けるわけでもないけど、100万円まで頑張ったら今でもギリギリなのに痛くなってしまう…みたいな。キャパじゃ勝てないけど気持ち的にはガチ恋の中太が一番、個人的にはしんどいと思います。

だいき:普通の営業だとそれくらいのお客様たちが一番色々悩むのかもしれないですね。僕は逆に、いわゆるエース級の毎月200万円を超えるお客様がほとんどいないです。今で言うと、一番使ってくださるお客様が100万弱。50~100万円使ってくださる方が10人ぐらいという感じなんです。それで毎月1000万円ほど売り上げがあるんですけど、ホストとして店で全力で楽しませることを一番に考えているからできているのかなと。逆に僕がお客様をアフターに誘っても断られたりすることもあります(笑)。ラインも、「もっと返してよ」って言ってもあまり返信がなかったり。「別にお店で会えればいいから」って。

佐々木:ホストクラブという箱でのパフォーマンスにプロとしての値段がつけられている結果ですね。

だいき:そうだと嬉しいですね。ホストクラブでの純粋な接客だけなら一番楽しいんじゃないですかね。僕、そこに関しては結構自信あります(笑)。

佐々木:純粋な接客だけで1000万円の売り上げを作ることって、本当にすごいと思います。ホストって店の外で時間使って、高額な会計のケアをしたり、一緒にいて「今はプライベートだから」オフの部分を見せたりして特別感を出したりもする。もちろんそれも純粋なオフを見せるのではなく、ある程度作られたオフではあると思うんですけど。でもそのオンとオフのどちらも使って売り上げていることが多いじゃないですか。そのオフの部分がなくて、それだけの単価が上がるのは本当にすごいと思います!

だいき:ははは(笑)。多分、戦ってる部分が違うんですよね。

佐々木:オンモードだけで売り上げてるのはすごいと思います。でも逆に本営とかで一人の女の子の人生を背負うのは…。

だいき:苦手ですね。昔は「苦手分野を克服しろ」とか言われてきたんですけど。僕はそれより得意な部分を伸ばしていくほうがストレスがないし結果も出る気がします。ゲームとかも長所を伸ばした方が勝ちやすいじゃないですか。色恋とか、嘘で「好きだよ」って言うのができない。「いやこれ絶対相手は気づいてるだろ!」って勘ぐっちゃってい自分でもよくわからなくなってくる(笑)。だったら完全にそういう要素を捨てて、一緒にお酒を飲んで楽しむことに徹しようと。それで今のスタイルになったわけです。

佐々木:得意なことを伸ばした結果が、今の「やるきげんきだいき」というホスト像なんですね。

だいき:そうですね。本にも書いたんですけど「やるきげんきだいき」っていう名前も、色恋しそうにないじゃないですか(笑)。シュッとしたかっこいい名前だとそういうのが似合うけど、初回とかで「どうも! やるきげんきだいきです!」ってバーッて出てきたホストって色恋しそうにないですよね。その辺りも考えて、名前も変えたんです。

佐々木:そうなんですね…! 後半ではだいきさんの考えるホストの現状や今後の展望についていろいろ聞いていきたいと思います。(後編へ続く)

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佐々木チワワ(ささき・ちわわ)/2000年生まれ。慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)在学中。10代から歌舞伎町に出入りし、フィールドワークと自身のアクションリサーチをもとに「歌舞伎町の社会学」を研究する。歌舞伎町の文化とZ世代にフォーカスした記事を多数執筆。現在、初の書籍『「ぴえん」という病 SNS世代の消費と承認』(扶桑社)が好評発売中。
Twitter:@chiwawa_sasaki