少女マンガの原点“花の24年組”の再来! と話題沸騰のマンガとは?

マンガ

更新日:2013/3/25

 みなさんは、「花の24年組」をご存知だろうか? 萩尾望都や竹宮惠子、大島弓子らに代表される「花の24年組」は、それまでの少女マンガの常識を覆したマンガ家たちのこと。SFやファンタジーの要素を取り入れたり、主人公が少年の作品を描くなど、革新的な試みで今に続く少女マンガを確立させた。いわば、少女マンガの革命家たちなのだ。そんな「花の24年組」の流れを継ぎ、現代に登場したマンガ家がいる。それが、売野機子だ。

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 初の単行本だった『薔薇だって書けるよ―売野機子作品集』(白泉社)は大島弓子を彷彿とさせる内容だったが、3月9日に発売された初の長編作品『MAMA』(新潮社)では、萩尾望都や竹宮惠子らの影響が色濃く出ている。

 まず、この物語の舞台となるのは山奥にひっそりと建てられた寄宿学校(ギムナジウム)だ。そもそも、ギムナジウムものと呼ばれるジャンルが生まれたのも花の24年組から。萩尾望都の代表作とも言える『トーマの心臓』や『11月のギムナジウム』、『ポーの一族』(すべて小学館)に収録されている「小鳥の巣」や竹宮恵子の『風と木の詩』(白泉社)など、数多くの作品が登場している。そして、そんな閉鎖空間では独自のルールに支配され、外とは違った時間が流れるのだ。

 『MAMA』でも、神に選ばれた天使の歌声を持つ少年たちが、本当の天使を目指して歌い続ける。隔離された環境の中で、思春期の不安定な少年たちだけが暮らしているという状況には、どこか危うげな雰囲気が漂う。その耽美さが、女性の心を惹きつけるのだろう。

 また、主人公や主要キャラが美少年であるということも大きなポイントだ。花の24年組が登場するまで、少女マンガの主人公と言えば絶対に女の子だった。しかし、彼女たちが少年を主人公にしたり、同性愛を扱ったことで、少女マンガの幅をぐんと広げたのだ。もちろん、『MAMA』の主人公もサラサラの長い髪をなびかせ、抜群の歌唱力を誇る美少年・ガブリエル。おまけに、ギムナジウムには違うタイプの美少年たちが勢ぞろいしている。子どもらしい無邪気さや好奇心いっぱいの同期生・ラザロ。メガネをかけた真面目そうなシオンに無口な上級生・アベル。斜に構えた感じのルースと優等生で先生のお気に入りだけど、ちょっぴりミステリアスなイーノク。そんな彼らには、それぞれ人に言えない悩みや傷がある。ライバルとなるクラスメイトへの嫉妬。親や家族との確執。ルームメイトとの友情や恋。思春期の悩みを抱える女の子たちは彼らに共感できたし、少しだけ背伸びしてみたい女の子にとっては、それが憧れだったのだろう。それに、もしも女の子が主人公だったらもっとドロドロした話になりそうだが、少年を通して描いたからこそ内に秘めた哀しみや痛みがより際立っているのかも。

 さらに、少年たちのすぐそばに死を感じるのも特徴だ。『トーマの心臓』では、ギムナジウムのアイドルだったトーマが。『風と木の詩』でも、妖艶な美少年・ジルベールが死んでしまう。売野の『MAMA』に至っては、なんとギムナジウムで暮らす少年合唱団の「その声の美しさが頂点に達したとき命を失いほんとうの天使になる」というのだ。自分たちと同世代の友人が死んだのに、羨ましがられる。未知の恐怖である死が、すぐ目の前にある異様な状況。そんなミステリアスでおとぎ話のような世界も、読者を捉えて離さないのでは?

 花の24年組のファンだったみなさんは、その流れを。そうじゃない人も、今の少女マンガに続く原点を『MAMA』から感じてみてはいかが。