焼き麩カナッペにそうめんトマトシャーベットがけ!? 高尾山の精進料理がすごい!

食・料理

公開日:2013/10/20

 精進料理と聞くと、地味で薄味な粗食といったように、ヘルシーだけどどちらかというと「味気なさそう」「おいしくはなさそう」というイメージを抱く人が多いだろう。しかし、10月3日に発売された『高尾山の「精進」家庭料理』(講談社)では、そんなイメージを覆す料理がたくさん紹介されているのだ。高尾山薬王院料理長の坂本和已氏が作る意外な精進料理とは、どんなものなのだろう?

 まず、車麩を使った角煮。精進料理では、肉、魚、かつおぶし、卵、牛乳、乳製品などの動物性食材や、ねぎ、にら、にんにくなど人間の闘争心や煩悩を誘発するといわれる食材は禁物なんだそう。そこで、それらの代わりにさまざまな食材を使ってアレンジしているのだ。この車麩の角煮も同じで、水気をよく切った車麩をフライパンで焼き、甘辛いタレと絡めながら煮ていく。すると、沖縄料理のラフテーとそっくりなぷるぷるの食感に仕上がるんだとか。同じように、大和いもとおからを使って鶏唐揚げみたいな、おからの唐揚げ。玄米と大豆でミートボールだって作れちゃう。特に、この玄米と大豆のミートボールは、玄米と大豆、れんこんを炊飯器で炊いて作るというから驚き。味も食感の想像もまったくつかないが、1度試してみたくなる料理だ。

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 それに、精進料理にはおなじみの「うなぎ」もある。魚は食べられないのにうなぎはいいの? と思うかもしれないが、もちろんこれは本物のうなぎじゃない。のりに大和いものとろろをすりつけ、ヘラですじをつけたものを油で揚げるのだ。骨もないので、精進料理では子どもからお年寄りまで喜ばれる人気の「うなぎ」なのだそう。

 また、精進料理と聞くと和食をイメージすると思うが、ここでは洋風や中華風のメニューもたくさん紹介されている。たとえば、洋風ならパスタの代わりにそばをつかったそばゲッティ和ポリタンや豆乳を使ったマカロニグラタン。仙台麩という大きめの麩にトマトディップやごまディップ、豆腐ディップを塗ってトースターで焼いた焼き麩カナッペなどがある。バゲットよりも低カロリーなので、朝食やちょっと小腹がすいたときでも、軽くつまめていいかもしれない。コーンの缶詰と豆乳、塩麹を鍋に入れて火にかけるだけで即席コーンスープも作れるので、忙しい朝でも簡単に精進料理が作れる。中華風では、昆布と干ししいたけでとる精進だしを中華風にアレンジしたあんかけチャーハン。くずきりの中華くらげ風。餃子の皮を使ったアップルパイ。中華めんを細いうどんに代えて作ったみそ精進ラーメンなどが紹介されている。

 さらに、坂本和已氏ならではの精進料理も。トマトと精進だし、砂糖、しょうゆ、みりんを合わせて火にかけたものをミキサーで混ぜ、それを凍らせたものをかき氷機で削ってそうめんにのせたそうめんトマトシャーベットがけ。そばにかけるつゆをジュレ状にしてのせたジュレそば。精進料理と言って、グラスのような器にまるでパフェのような感じで盛り付けられたこの料理が出てきたら、かなりびっくりするだろう。他にも、お好み焼きを薄く焼いてくるくる巻いたお好みロール、デザートにバナナの甘酒など、少し変わったメニューが登場する。

 健康には気を遣いたいけど、見た目にも味にも妥協したくない。おいしいものをお腹いっぱい食べたい。そんな人には、この精進料理がピッタリかもしれない。

文=小里樹